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049 夕焼けナランハ亭
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「いらっしゃい、夕焼けナランハ亭へようこそ。食事代別で四人までなら大銅貨1枚だよ」
宿で出迎えてくれたのは恰幅のいいおばちゃん。料金はサトン村と一緒だ。というわけで先払いで大銅貨1枚を渡す。ここでも木製の鍵を渡された。
「もし夕食を食べるなら食堂は一階のあの大部屋だからね。大風呂は反対側のそっち、楽な恰好したいならこれを着るといいよ。大きさは……これでいいでしょう」
そう言って手渡されたのはバスローブのような簡単な服。冒険者には金属鎧で着込んだ人もいるだろうから、宿の中ではこういう楽な恰好ができたら嬉しいのだろう。風呂から出たらこれに着替えるのもいいだろう。ちょっと声は大きいが説明も親切でいい女将さんだ。
「分からないことがあったら何でも聞いてちょうだい。……ところであんたが噂の冒険者さんかい?」
「はい?」
「次元収納持ちでたくさんの魔物を解体依頼した黒髪の冒険者が現れたって、さっき帰ってきたうちの息子が言ってたよ。まったく、うちの息子なんか、六級になったばかりなのに魔物一匹倒すのに苦労しているっていうのにねえ。あんた何級なんだい?」
「あー、どうなんでしょう……俺たちも六級なんで」
「謙遜するんじゃないよ。いいねぇ若い子は。私も若い頃はブイブイ言わせてたもんさ。旦那に惚れてなけりゃ二級冒険者くらいにはなってたかもね。はっはっは」
「そ、そうですか」
なんだかマシンガントークが始まった。マリーもセフィリアの話に呑まれてしまっている。これまでの武勇伝を語る女将さんを鑑定してみると、確かにレベルは高かった。実戦から遠のいたせいかステータスそのものはレベルのわりに控えめに感じるが、スキルとして話術(大)、料理(大)、運搬効率上昇(中)、目利き(中)など女将としても能力は高いのだろう。
「それにしてもあんた、ずいぶんと可愛い子を連れてるね。しかも二人も。いいねぇ、よ! 色男」
おばさんが、そういうところがおばさんなんだよって絡みをし始める。セフィリアは涼しい顔だがマリーが慌てふためく。そういうところもまた可愛いのだが、取り敢えずここは躱していこう。
「あ、いえ、彼女たちはその、普通の仲間なので」
「そうかい、そうかい。いつかは特別になるってもんよ。しっかりやんな!」
カウンター越しにバシバシ肩を叩かれる。けっこう痛い。これがレベルの差なのだろうか。なにはともあれ女将との会話を切り上げ、客室へと向かう。宿は三階建てで、今回借りられたお部屋は三階の東端から三番目の部屋だ。異世界でこれだけの建築をするのに、どれくらいの手間暇がかかるのだろう。少しだけ気になる。あてがわれた部屋は八畳くらいだろうか。寝るための部屋って感じで、シンプルなベッドが四つと防具掛けとちょっとした荷物置きがあるくらいだ。
「取り敢えず防具外すか」
革製といえどそれなりに重いし締め付けも感じる。次元収納に仕舞ってもいいが、せっかく防具掛けがあるのでそれを使わせてもらう。
「風呂、行くだろ? 鍵、俺が持っててもいいか? どうせ先に出るだろうし」
「いいですよ。どうぞ」
鍵が一つしかないのは少しだけ不便だが、ちゃんと声を掛け合えばどうということはない。三人そろって部屋を出てきちんと鍵をかける。他の冒険者たちもけっこう泊っているようだ。風呂に向かう客もいる。脱衣所はちゃんと男女別になっていて安心。スタル村は脱衣所すら男女ごっちゃだったからなぁ……。
「――うん、そうか。そういうパターンもあるか」
脱衣所だけ男女別で竹っぽい素材で出来た引き戸を開けると混浴の大浴場が広がっていた。
「あ、レックスさん待ってくれていたんですね」
入ってすぐのあたりで呆けていたらマリーが駆け寄ってきた。当然全裸だ。……精神を鍛えるんだ、俺。
宿で出迎えてくれたのは恰幅のいいおばちゃん。料金はサトン村と一緒だ。というわけで先払いで大銅貨1枚を渡す。ここでも木製の鍵を渡された。
「もし夕食を食べるなら食堂は一階のあの大部屋だからね。大風呂は反対側のそっち、楽な恰好したいならこれを着るといいよ。大きさは……これでいいでしょう」
そう言って手渡されたのはバスローブのような簡単な服。冒険者には金属鎧で着込んだ人もいるだろうから、宿の中ではこういう楽な恰好ができたら嬉しいのだろう。風呂から出たらこれに着替えるのもいいだろう。ちょっと声は大きいが説明も親切でいい女将さんだ。
「分からないことがあったら何でも聞いてちょうだい。……ところであんたが噂の冒険者さんかい?」
「はい?」
「次元収納持ちでたくさんの魔物を解体依頼した黒髪の冒険者が現れたって、さっき帰ってきたうちの息子が言ってたよ。まったく、うちの息子なんか、六級になったばかりなのに魔物一匹倒すのに苦労しているっていうのにねえ。あんた何級なんだい?」
「あー、どうなんでしょう……俺たちも六級なんで」
「謙遜するんじゃないよ。いいねぇ若い子は。私も若い頃はブイブイ言わせてたもんさ。旦那に惚れてなけりゃ二級冒険者くらいにはなってたかもね。はっはっは」
「そ、そうですか」
なんだかマシンガントークが始まった。マリーもセフィリアの話に呑まれてしまっている。これまでの武勇伝を語る女将さんを鑑定してみると、確かにレベルは高かった。実戦から遠のいたせいかステータスそのものはレベルのわりに控えめに感じるが、スキルとして話術(大)、料理(大)、運搬効率上昇(中)、目利き(中)など女将としても能力は高いのだろう。
「それにしてもあんた、ずいぶんと可愛い子を連れてるね。しかも二人も。いいねぇ、よ! 色男」
おばさんが、そういうところがおばさんなんだよって絡みをし始める。セフィリアは涼しい顔だがマリーが慌てふためく。そういうところもまた可愛いのだが、取り敢えずここは躱していこう。
「あ、いえ、彼女たちはその、普通の仲間なので」
「そうかい、そうかい。いつかは特別になるってもんよ。しっかりやんな!」
カウンター越しにバシバシ肩を叩かれる。けっこう痛い。これがレベルの差なのだろうか。なにはともあれ女将との会話を切り上げ、客室へと向かう。宿は三階建てで、今回借りられたお部屋は三階の東端から三番目の部屋だ。異世界でこれだけの建築をするのに、どれくらいの手間暇がかかるのだろう。少しだけ気になる。あてがわれた部屋は八畳くらいだろうか。寝るための部屋って感じで、シンプルなベッドが四つと防具掛けとちょっとした荷物置きがあるくらいだ。
「取り敢えず防具外すか」
革製といえどそれなりに重いし締め付けも感じる。次元収納に仕舞ってもいいが、せっかく防具掛けがあるのでそれを使わせてもらう。
「風呂、行くだろ? 鍵、俺が持っててもいいか? どうせ先に出るだろうし」
「いいですよ。どうぞ」
鍵が一つしかないのは少しだけ不便だが、ちゃんと声を掛け合えばどうということはない。三人そろって部屋を出てきちんと鍵をかける。他の冒険者たちもけっこう泊っているようだ。風呂に向かう客もいる。脱衣所はちゃんと男女別になっていて安心。スタル村は脱衣所すら男女ごっちゃだったからなぁ……。
「――うん、そうか。そういうパターンもあるか」
脱衣所だけ男女別で竹っぽい素材で出来た引き戸を開けると混浴の大浴場が広がっていた。
「あ、レックスさん待ってくれていたんですね」
入ってすぐのあたりで呆けていたらマリーが駆け寄ってきた。当然全裸だ。……精神を鍛えるんだ、俺。
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