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045 VSビッグホーンブル

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 昼食も済ませてからサトン村を出発する。陣形は俺を戦闘に右後方にマリー、左後方にセフィリア。俺とマリーは既に剣を抜いているが、今のところ魔物からの襲撃はない。

「ナランハ村までの距離ってどれくらいなんだ?」
「うーん、普通の冒険者はサトン村からナランハ村まで二日くらいで移動しますね。今向かっているのは北の沼地なので、そこからは少し南東ですね」

 街道から外れて草地を進んでいると、ドタドタと足音が聞こえてきた。

「ビッグホーンブルね。六匹……群れの先頭に――当たれ!」

 足音の正体は茶褐色の毛に覆われた牛だった。その角は遠目に見ても太いことが分かるほどで、あれに突かれたらと思うと悪寒が襲ってくる。地球上の草食動物である牛とはまったく異なる荒々しい雰囲気に、思わず身構えてしまう。
 セフィリアの一射目で勢いが少し削がれこそするが、それでもビッグホーンブル達の集団は止まりはしない。
 俺は突進してきた一頭目を盾で受け流しながら横っ腹を斬りつけた。そのまま返す刃でもう一頭の首をめがけて剣を振り下ろす。が、絶命には至らず二頭とも怯む程度。残る四頭が左右に散開し、マリーへ突っ込んで行く。マリーはロングソードを振るい、一匹ずつ着実にダメージを与えていく。
 マリーから引き剥がすようにビッグホーンブルに斬りかかりつつも、詠唱を開始したセフィリアのもとへも行かせない。

「烈風の刃よ集い狂い切り裂きたまえ――ゲイルスラスト!!」
「マリー下がれ!!」

 セフィリアが水平に構えた杖を振り上げたのを合図に、俺とマリーが後退する。そして杖が振り下ろされた瞬間、翠緑の刃が無数現れビッグホーンブルを襲う。
 二体倒れずに踏ん張ったビッグホーンブルがいたが、そこは俺とマリーがきっちりとどめを刺す。

「相変わらずセフィリアが魔術を使うと血しぶきがすげぇな……」
「……そうね。でも仕方ないのよ。人々が風に対して重ねてきたイメージが刃と斬撃なのだから」

 セフィリアの放った風属性の中級魔術【ゲイルスラスト】で、ビッグホーンブルの死骸が辺り一面に飛び散っていた。

「まぁ血抜きにちょうどいいか。マリー、解体を頼めるか?」
「え? や、やってみます!」

 初めて見るビッグホーンブルの解体に緊張しながらも、ナイフを取り出して皮を剥ぎ始めるマリー。切り傷だらけだが牛革だし、きっと何らかの利用価値はあるだろう。なお討伐証明部位は当然のごとく角だ。
 ビッグホーンブルの肉は前にセフィリアが説明してくれたが、固いしちょっと臭いが食べられるっていう話だ。血抜きしたり筋を叩いたりすることで、多少はマシになるだろう。流れ出た血は水魔法で生み出した水で洗い流していく。

「それなりに出るようにはなったか……とはいえって感じだが」

 魔法と魔術なのだが、魔力を行使して事象を具現化させることが魔法で、その中でもとりわけ戦闘用に体系化した分野が魔術らしい。体系化させるためにイメージを収束させる必要があったらしく、結果として風属性は斬撃と結び付けられることが多いとはセフィリア先生の魔術講座での説明。ウィンドカッターとかゲイルスラストが具体例だ。
 いまのところマリーは火魔法、俺は水魔法を練習中だが、二人ともまだ魔術として行使できる水準には達していない。反復練習あるのみだな……。

「マリーすまない、一頭分でいい。あとは次元収納に放り込んでしまおう」

 あまり血の臭いを漂わせては魔物が集まってきてしまう。フォークバードならまだしも、ストームイーグルに襲われようものなら一巻の終わりだ。そそくさとビッグホーンブルを次元収納に入れていく。幸い、四頭分はゲイルスラストで肉塊になっている。てきぱきと収納する。
 さらにセフィリアが魔法で臭いを散らす。

「クイックリザードもビッグホーンブルも五級魔物なんだよな。通用するってのはけっこう嬉しいもんだな。てなわけで、頑張ってクイックリザードをあと二体探そうぜ」

 前回三体倒した沼地に再び到着。受託してからけっこう時間がかかってしまった。今日こそ達成しないとな!
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