ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~

楠富 つかさ

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042 サトン村に到着

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「これで終わりだ!!」

 振りぬいた剣がファンギーゾルを撃破する。昼休憩を挟んでそろそろ日が傾いてきた頃なのだが、倒せたクイックリザードは三匹だけ。ファンギーゾルは既に十五匹くらい倒しているのだが。あとは大き目のスーツケースくらいありそうなカブトムシ型の魔物、ブラウンホーンを4匹ほど撃破したり、大型のネズミ型の魔物、フォレストラットを撃破したりした。フォレストラットはちょっとカピバラっぽくて倒すのに躊躇してしまった。まぁ、大きさだけで顔つきとかは至って普通のネズミだったのだが。
 森を抜けて街道に戻り、そのまま歩いているとサトン村が見えてきた。ここで一つ相談しておかねばならないことがある。

「サトン村ではどうする? 普通の宿をとるか?」

 村のサイズ感だと俺たちがこっそりマイホームに移動するだけの物陰が無い場合も考えられる。それに、宿が一か所しかない場合、どこに泊まったのかで怪しまれかねないからな。

「そうね、素材の売却である程度はお金になるでしょうから、宿を取りましょう。部屋は……まぁ、一部屋でいいんじゃない? 節約が大事よ。マリーもいいでしょう?」
「はい。マイホームは便利ですけど、レックスさんが別部屋になってしまったのが寂しいので、今夜は村の宿にしましょう!」
「お、おう……わかった。じゃあ、まずは冒険者ギルドへ行こう」

 別部屋って言ってもすぐ隣なんだがな……。まぁ、いいか。
 そうして俺たちは、サトン村にやってきた。スタル村もそうだったが、村は別に入る時にお金がかからない。まぁ、冒険者だからそもそも税は取られないのだが。セフィリアが言うには、サトン村は人口五百人ほどの小さな村とのことだ。セフィリアは地理や歴史に詳しくってこういう時に助かる。
 ギルドもそれほど大きい建物ではなく、せいぜい公民館くらいだろうか。公民館って最近は言わずにまちづくりセンターとかいう言い方をするっけか。まぁ、どうでもいいけど。

「おう、らっしゃい」

 威勢のいい声で出迎えてくれたのは肝っ玉母さんって感じの女性。俺たちはフレッサから来た旨やら依頼の達成を報告したい旨やら素材の買い取りをお願いしたい旨を説明した。裏手に案内され、そこに向かうと大鉈を肩に担いだ白髪交じりのダンディが待ち構えていた。

「おう、解体からか。わぁった、出してみろ」

 マイホームの次元収納から討伐した魔物を取り出す。次元収納のスキルを持っている人はたまにいるらしいから、こういうシチュエーションは気にしなくていいらしい。

「ほう、収納持ちか。恵まれてるな」

 ダンディのリアクションからして、収納スキルは冒険者にとって助かるありがたいスキルということのようだ。
 クイックリザードはまだ依頼の達成前なので出さず、ファンギーゾル全部とブラウンホーン、ワイルドボア、スライムなど次々に出していく。

「おぉ、けっこう収納してたな。うちの若いのにもやらせるか。明日の昼には全部終わるだろうから、取りに来てくれ」
「わかりました。ありがとうございます」

 俺たちは挨拶をしてその場を後にした。

「さて、それじゃ今日は宿屋でゆっくりしようぜ」
「はい!」

 サトン村も宿は一軒らしい。しかも村長じきじきに経営しているらしく、一番大きな建物らしい。

「あれだな」

 すぐに見つかったのは良かった。どうやら金額は四人まで一律で大銅貨1枚とのこと。食事はオプションということらしいので、お断りしておく。スタル村の時のように、宿の部屋内でマイホームへ移動して食事をとればいい。

「今日はいっぱい戦ったから疲れたな」
「ですね……ふわぁ、すみません、あくびが」
「ふぅ、うつってしまったわ。マリー、お風呂行くわよ。レックス残念ね、ここの宿は男女別のお風呂よ」
「……べ、別に残念とか思ってないし」

 なにはともあれ風呂があるのは助かる。俺も行ってくるか。
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