ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~

楠富 つかさ

文字の大きさ
上 下
28 / 84

028 塩を売ろう

しおりを挟む
「商人ギルドの場所も分かりますよ。商家の娘でしたから」

 マリーの案内で商人ギルドへ向かう。冒険者ギルドよりは街の中央部にあるようで、十分くらい歩くと石造りの品のいい建物に行きついた。
 中に入ると雑然としていた冒険者ギルドとは異なり、整理整頓が行き届いていてとても綺麗だ。正面の壁には『フレッサ商人ギルド』と書かれた看板があり、左手にはカウンター、右手には掲示板がある。掲示板には依頼が張り出されているわけではなく、値上がり中の素材とか、危険な街道についてとか、周知しておきたいだろう情報が出ている。
 カウンターにいる職員は皆、きちんと制服を着て、清潔感があって好印象だ。冒険者ギルドのように荒くれ者はいないようだ。

「こんにちは。本日はどのようなご用件でしょうか」

 受付嬢に声を掛けられたのはマリーだ。

「こんにちは。えぇと、用があるのはこの人でして」
「どうも、登録の依頼と……これを売りたくて」

 そう言って銀貨1枚と塩を入れた小さい革袋を手渡す。
 受付嬢は登録に必要な書類を俺に渡しつつ、革袋の中を確認する。

「こ、これは……上の者に確認させます。必要事項を記入しつつお待ちくださいませ」

 受付嬢は慌てて奥へと引っ込んだ。室内のソファに腰を下ろし、ローテーブルに渡された用紙を置く。
 登録用紙には名前や商材、行商なのか店舗を持つのかなどと項目がある。取り敢えず名前と雑貨屋であること、行商をすることを記載し、待つことにした。しばらくすると、先程の受付嬢と一緒に一人の男がやってきた。

「やあやあ、初めまして。僕はこの商人ギルドのマスターのマルスだよ。よろしくね」

 白髪混じりの黒髪をオールバックにした細身の男は人好きのしそうな笑顔を浮かべている。年齢は50代後半といったところだろうか。

「レックスです。あ、これ……さっき書いた書類です」
「ふむふむ。行商の雑貨屋か。冒険者を掛け持ちする人によくある形態だね。……さて、この塩、すごく上質だね」
「えぇ、まぁ。入手ルートについては口外できません。そういう約束で少し分けてもらったものですから」
「うん、それは構わないよ。こんなに白くてサラサラとした塩なんて滅多に見られるものじゃないからね。隠したくなるものしょうがないさ。……それで買取価格なんだけれど。どうだろう、小金貨1枚なんて」
「き、金貨1枚!?」

 もとでに関しては言ってしまえばタダだ。せいぜい小銀貨5枚くらいになればいいと思っていたが、え、何倍だ? 二十倍か。言葉につまる俺に対して、強気に出たのはまさかのマリーだった。

「もう1枚出ませんか? これはこのレックスさんが実家から独立して探し出し、商人として一旗揚げるための……それこそ一世一代の大商いなんです」
「む、むぅ……大銀貨で3枚出そう」
「7枚です」
「分かった。5枚だ。これ以上は流石になぁ」
「ありがとうございます。小金貨1枚と大銀貨5枚で」

 ……これが商才の持ち主かぁ。俺はそう思った。マリーの交渉術に舌を巻きつつも、無事取引を終えた。

「いやはや、まいったな。君たちみたいな若い子がねぇ……。じゃあ、これがギルドカードになるから失くさないように。再発行にもお金がかかるからね。そうそう、商人ギルドで扱う商品の中でもお酒と錬金具については別途税金がかかるから要注意だよ」
「はい、肝に命じておきます」
「うむ。では良き商売を!」

 こうして俺たちは商人ギルドを後にした。

「お疲れ様。よくやったな、マリー」
「いえ、私なんてまだまだですよ。あの塩、まだ在庫あるんですよね?」
「もちろん。いつでも出せるぞ。まぁ、あまり大量に出すと市場を壊しかねないが。いやぁ、ほんとうにマリーのおかげだ」
「うむ。すごかったぞ」

 俺とセフィリアに褒められてマリーもご満悦だ。

「ふふっ、もっと褒めてください」

 マリーが嬉しそうだ。可愛い。

「さて、そろそろ暗くなってきたし、人目につかないところからマイホームに移動するとしよう」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
レックスたちの所持金
前:小銀貨1 大銅貨4 小銅貨4

支出:小銀貨1 大銅貨4枚
収入:小金貨1枚 大銀貨5枚 小銀貨1枚 大銅貨5枚 小銅貨2枚

後:小金貨1枚 大銀貨5枚 小銀貨1枚 大銅貨5枚 小銅貨6枚
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎
ファンタジー
坂木 新はリサイクルショップの店員だ。 ある日、買い取りで査定に不満を持った客に恨みを持たれてしまう。 仕事帰りに襲われて、気が付くと見知らぬ世界のベッドの上だった。

スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった

Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。 *ちょっとネタばれ 水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!! *11月にHOTランキング一位獲得しました。 *なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。 *パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

異世界をスキルブックと共に生きていく

大森 万丈
ファンタジー
神様に頼まれてユニークスキル「スキルブック」と「神の幸運」を持ち異世界に転移したのだが転移した先は海辺だった。見渡しても海と森しかない。「最初からサバイバルなんて難易度高すぎだろ・・今着てる服以外何も持ってないし絶対幸運働いてないよこれ、これからどうしよう・・・」これは地球で平凡に暮らしていた佐藤 健吾が死後神様の依頼により異世界に転生し神より授かったユニークスキル「スキルブック」を駆使し、仲間を増やしながら気ままに異世界で暮らしていく話です。神様に貰った幸運は相変わらず仕事をしません。のんびり書いていきます。読んで頂けると幸いです。

処理中です...