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028 塩を売ろう
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「商人ギルドの場所も分かりますよ。商家の娘でしたから」
マリーの案内で商人ギルドへ向かう。冒険者ギルドよりは街の中央部にあるようで、十分くらい歩くと石造りの品のいい建物に行きついた。
中に入ると雑然としていた冒険者ギルドとは異なり、整理整頓が行き届いていてとても綺麗だ。正面の壁には『フレッサ商人ギルド』と書かれた看板があり、左手にはカウンター、右手には掲示板がある。掲示板には依頼が張り出されているわけではなく、値上がり中の素材とか、危険な街道についてとか、周知しておきたいだろう情報が出ている。
カウンターにいる職員は皆、きちんと制服を着て、清潔感があって好印象だ。冒険者ギルドのように荒くれ者はいないようだ。
「こんにちは。本日はどのようなご用件でしょうか」
受付嬢に声を掛けられたのはマリーだ。
「こんにちは。えぇと、用があるのはこの人でして」
「どうも、登録の依頼と……これを売りたくて」
そう言って銀貨1枚と塩を入れた小さい革袋を手渡す。
受付嬢は登録に必要な書類を俺に渡しつつ、革袋の中を確認する。
「こ、これは……上の者に確認させます。必要事項を記入しつつお待ちくださいませ」
受付嬢は慌てて奥へと引っ込んだ。室内のソファに腰を下ろし、ローテーブルに渡された用紙を置く。
登録用紙には名前や商材、行商なのか店舗を持つのかなどと項目がある。取り敢えず名前と雑貨屋であること、行商をすることを記載し、待つことにした。しばらくすると、先程の受付嬢と一緒に一人の男がやってきた。
「やあやあ、初めまして。僕はこの商人ギルドのマスターのマルスだよ。よろしくね」
白髪混じりの黒髪をオールバックにした細身の男は人好きのしそうな笑顔を浮かべている。年齢は50代後半といったところだろうか。
「レックスです。あ、これ……さっき書いた書類です」
「ふむふむ。行商の雑貨屋か。冒険者を掛け持ちする人によくある形態だね。……さて、この塩、すごく上質だね」
「えぇ、まぁ。入手ルートについては口外できません。そういう約束で少し分けてもらったものですから」
「うん、それは構わないよ。こんなに白くてサラサラとした塩なんて滅多に見られるものじゃないからね。隠したくなるものしょうがないさ。……それで買取価格なんだけれど。どうだろう、小金貨1枚なんて」
「き、金貨1枚!?」
もとでに関しては言ってしまえばタダだ。せいぜい小銀貨5枚くらいになればいいと思っていたが、え、何倍だ? 二十倍か。言葉につまる俺に対して、強気に出たのはまさかのマリーだった。
「もう1枚出ませんか? これはこのレックスさんが実家から独立して探し出し、商人として一旗揚げるための……それこそ一世一代の大商いなんです」
「む、むぅ……大銀貨で3枚出そう」
「7枚です」
「分かった。5枚だ。これ以上は流石になぁ」
「ありがとうございます。小金貨1枚と大銀貨5枚で」
……これが商才の持ち主かぁ。俺はそう思った。マリーの交渉術に舌を巻きつつも、無事取引を終えた。
「いやはや、まいったな。君たちみたいな若い子がねぇ……。じゃあ、これがギルドカードになるから失くさないように。再発行にもお金がかかるからね。そうそう、商人ギルドで扱う商品の中でもお酒と錬金具については別途税金がかかるから要注意だよ」
「はい、肝に命じておきます」
「うむ。では良き商売を!」
こうして俺たちは商人ギルドを後にした。
「お疲れ様。よくやったな、マリー」
「いえ、私なんてまだまだですよ。あの塩、まだ在庫あるんですよね?」
「もちろん。いつでも出せるぞ。まぁ、あまり大量に出すと市場を壊しかねないが。いやぁ、ほんとうにマリーのおかげだ」
「うむ。すごかったぞ」
俺とセフィリアに褒められてマリーもご満悦だ。
「ふふっ、もっと褒めてください」
マリーが嬉しそうだ。可愛い。
「さて、そろそろ暗くなってきたし、人目につかないところからマイホームに移動するとしよう」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
レックスたちの所持金
前:小銀貨1 大銅貨4 小銅貨4
支出:小銀貨1 大銅貨4枚
収入:小金貨1枚 大銀貨5枚 小銀貨1枚 大銅貨5枚 小銅貨2枚
後:小金貨1枚 大銀貨5枚 小銀貨1枚 大銅貨5枚 小銅貨6枚
マリーの案内で商人ギルドへ向かう。冒険者ギルドよりは街の中央部にあるようで、十分くらい歩くと石造りの品のいい建物に行きついた。
中に入ると雑然としていた冒険者ギルドとは異なり、整理整頓が行き届いていてとても綺麗だ。正面の壁には『フレッサ商人ギルド』と書かれた看板があり、左手にはカウンター、右手には掲示板がある。掲示板には依頼が張り出されているわけではなく、値上がり中の素材とか、危険な街道についてとか、周知しておきたいだろう情報が出ている。
カウンターにいる職員は皆、きちんと制服を着て、清潔感があって好印象だ。冒険者ギルドのように荒くれ者はいないようだ。
「こんにちは。本日はどのようなご用件でしょうか」
受付嬢に声を掛けられたのはマリーだ。
「こんにちは。えぇと、用があるのはこの人でして」
「どうも、登録の依頼と……これを売りたくて」
そう言って銀貨1枚と塩を入れた小さい革袋を手渡す。
受付嬢は登録に必要な書類を俺に渡しつつ、革袋の中を確認する。
「こ、これは……上の者に確認させます。必要事項を記入しつつお待ちくださいませ」
受付嬢は慌てて奥へと引っ込んだ。室内のソファに腰を下ろし、ローテーブルに渡された用紙を置く。
登録用紙には名前や商材、行商なのか店舗を持つのかなどと項目がある。取り敢えず名前と雑貨屋であること、行商をすることを記載し、待つことにした。しばらくすると、先程の受付嬢と一緒に一人の男がやってきた。
「やあやあ、初めまして。僕はこの商人ギルドのマスターのマルスだよ。よろしくね」
白髪混じりの黒髪をオールバックにした細身の男は人好きのしそうな笑顔を浮かべている。年齢は50代後半といったところだろうか。
「レックスです。あ、これ……さっき書いた書類です」
「ふむふむ。行商の雑貨屋か。冒険者を掛け持ちする人によくある形態だね。……さて、この塩、すごく上質だね」
「えぇ、まぁ。入手ルートについては口外できません。そういう約束で少し分けてもらったものですから」
「うん、それは構わないよ。こんなに白くてサラサラとした塩なんて滅多に見られるものじゃないからね。隠したくなるものしょうがないさ。……それで買取価格なんだけれど。どうだろう、小金貨1枚なんて」
「き、金貨1枚!?」
もとでに関しては言ってしまえばタダだ。せいぜい小銀貨5枚くらいになればいいと思っていたが、え、何倍だ? 二十倍か。言葉につまる俺に対して、強気に出たのはまさかのマリーだった。
「もう1枚出ませんか? これはこのレックスさんが実家から独立して探し出し、商人として一旗揚げるための……それこそ一世一代の大商いなんです」
「む、むぅ……大銀貨で3枚出そう」
「7枚です」
「分かった。5枚だ。これ以上は流石になぁ」
「ありがとうございます。小金貨1枚と大銀貨5枚で」
……これが商才の持ち主かぁ。俺はそう思った。マリーの交渉術に舌を巻きつつも、無事取引を終えた。
「いやはや、まいったな。君たちみたいな若い子がねぇ……。じゃあ、これがギルドカードになるから失くさないように。再発行にもお金がかかるからね。そうそう、商人ギルドで扱う商品の中でもお酒と錬金具については別途税金がかかるから要注意だよ」
「はい、肝に命じておきます」
「うむ。では良き商売を!」
こうして俺たちは商人ギルドを後にした。
「お疲れ様。よくやったな、マリー」
「いえ、私なんてまだまだですよ。あの塩、まだ在庫あるんですよね?」
「もちろん。いつでも出せるぞ。まぁ、あまり大量に出すと市場を壊しかねないが。いやぁ、ほんとうにマリーのおかげだ」
「うむ。すごかったぞ」
俺とセフィリアに褒められてマリーもご満悦だ。
「ふふっ、もっと褒めてください」
マリーが嬉しそうだ。可愛い。
「さて、そろそろ暗くなってきたし、人目につかないところからマイホームに移動するとしよう」
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レックスたちの所持金
前:小銀貨1 大銅貨4 小銅貨4
支出:小銀貨1 大銅貨4枚
収入:小金貨1枚 大銀貨5枚 小銀貨1枚 大銅貨5枚 小銅貨2枚
後:小金貨1枚 大銀貨5枚 小銀貨1枚 大銅貨5枚 小銅貨6枚
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