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027 ギルマスとの邂逅
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素材の売却を済ませて受付に声をかけると、俺だけギルドマスターの部屋に来るように言われた。何事かと思いつつ、ギルドの建物二階にあるギルマスの部屋を訪ねた。
「やぁ、来てくれたかい」
部屋の主は思ったよりも若々しい男性……いや、エルフか。ここは鑑定を――
「ふふ、鑑定なら効かないよ」
「な!?」
心を読まれたかのような言葉に、思わず硬直する。どうやら上位の冒険者は鑑定阻害とか鑑定偽装とか、そういうスキルを持っているらしい。……どうしたら習得できるか謎だな。
「申し遅れたね。ここフレッサでギルマスをしているヘンドリクセンという。歳は……えっと……375歳だったかなぁ。ははは、長生きだろう」
「……見た感じは人間でいうところの30代半ばくらいに見えますけどね」
しかもとびきりのイケメンの。そんなギルマスは俺に座るよう促すと、いきなり核心に触れる話題に切り込んだ。
「キミ、異世界人だね。分かるよ、これまで何人かの異世界人に会ったことがあるからね」
「……そう、ですか。どうして、異世界人だってわかるんですか?」
「称号だよ、称号。転移者または転生者なんて異世界から来た人間にしか得られないから」
俺の持つ称号、転移者。鑑定スキルのランクを上げても未だに全容は分からない。けれど、この人に聞けばわかるのかもしれない。そんな希望を持って、尋ねる。
「あの……転移者っていう称号にはどんな効果が? 例えば、異性から好かれる、みたいなことはないんですか?」
「ふふ、何を聞くかと思えば。転移者にはそんな効果はないよ。そうだねぇ。スキルを会得しやすくなるとか、ステータスが伸びやすくなるとか、老けにくくなるとか、そんな効果だよ。まぁ、異性というか人に好かれるカリスマ性みたいなものを帯びる場合はあるけれど」
……なるほど。マリーの好意は別に称号に起因するものではないってことか。カリスマ性……ねぇ。俺にはわりと縁遠い概念だけど。
「ところで……他の転移者や転生者ってどんな人なんですか?」
「一人は転移者の男性で剣を召喚する特異なスキルの持ち主だったよ。両手に剣を持ちながら浮遊する剣をも操る、【天剣】の二つ名を持った特一級冒険者だったが……もう百年くらい前に死んだよ。人の寿命は短いね。それでも長生きした方だけど。もう一人は転生者の……たぶん女性。いつ見ても幼い容姿をしていたが、魔術師として最強に君臨していたよ。彼女も特一級冒険者で、ひょっとしたら今でも活動しているかもしれないね」
たぶん女性という言い回しにちょっとひっかかるが、その人は【神出鬼没】という異名を持っているらしい。そんな異世界からの来訪者二人を知るギルマスから、俺のスキルについて尋ねられたけど……はてさて、なんといえばいいものか。実際に見せた方が楽かもしれない。
「マイホーム!」
突然現れた光のゲートに困惑するギルマスだが、俺が顔を突っ込んでみせてから、同じように見てみるよう促してみると、
「なるほど、家ですか。拠点を召喚するスキルなのですね」
「うーん、召喚かなぁ。ちょっと、まだ全容がつかめてないんですよ。この家は俺が成長することで、広さや機能が成長する仕組みになっているんです」
「それは興味深いですね。……そうだ、タツヤさん――ではなく、レックスさんと呼んだ方がいいですね。これをどうぞ」
そう言ってギルマスから手渡されたのは金のバングルだった。ちょっと高級感あるそれを鑑定してみると、
「こ、これ……もらっていいんですか?」
「はい。天剣が仲間の錬金術師に作らせ、配り歩いていたものです。あなたにも必要でしょう?」
【隠蔽の腕輪】
防御力+5 効果:装備者の称号とユニークスキルを鑑定されないよう阻害する。
ありがたく受け取って装備する。鑑定スキルは異世界人の標準スペックだが、こちらの世界にも少なからず鑑定スキル持ちがいるらしい。そういった人の鑑定によって異世界人だと看破される危険がなくなるのは嬉しいことだ。
「では、私からの話は以上です。冒険者としての登録はあとクラス登録だけですね」
促されるままにギルマスの部屋を後にし、マリーとセフィリアに合流する。どんな話があったのか気にしている様子だったけど、変わったスキルを持っているから見せてきたと言って話を切ってしまった。バングルについてはスキルを見せたお礼としてもらったことにした。
「では、こちらにどうぞ」
ギルドの受付嬢に促されて宝石のような結晶が安置された部屋に行く。ここでクラス登録をするらしい。
「私は当然、風術士ね」
セフィリアが登録を済ませ続いて俺。剣士でいいだろう。別に変更するときに料金がかかるわけでもないし。
「さて、これで冒険者ギルドでの用事は全部終わったな」
素材を買い取ってもらい冒険者としての登録を済ませ、さらに異世界人についての情報も聞き、けっこう時間がかかってしまった。
今日から一か月間のうちに依頼を何かしら達成しないと登録が消除されてしまうというわけだ。どのみち、お金をまだまだ稼がねばならない以上、頑張って働くけどさ。
意気込みも新たに、商人ギルドへ向かうことにした。……さて、場所はどこだ?
「やぁ、来てくれたかい」
部屋の主は思ったよりも若々しい男性……いや、エルフか。ここは鑑定を――
「ふふ、鑑定なら効かないよ」
「な!?」
心を読まれたかのような言葉に、思わず硬直する。どうやら上位の冒険者は鑑定阻害とか鑑定偽装とか、そういうスキルを持っているらしい。……どうしたら習得できるか謎だな。
「申し遅れたね。ここフレッサでギルマスをしているヘンドリクセンという。歳は……えっと……375歳だったかなぁ。ははは、長生きだろう」
「……見た感じは人間でいうところの30代半ばくらいに見えますけどね」
しかもとびきりのイケメンの。そんなギルマスは俺に座るよう促すと、いきなり核心に触れる話題に切り込んだ。
「キミ、異世界人だね。分かるよ、これまで何人かの異世界人に会ったことがあるからね」
「……そう、ですか。どうして、異世界人だってわかるんですか?」
「称号だよ、称号。転移者または転生者なんて異世界から来た人間にしか得られないから」
俺の持つ称号、転移者。鑑定スキルのランクを上げても未だに全容は分からない。けれど、この人に聞けばわかるのかもしれない。そんな希望を持って、尋ねる。
「あの……転移者っていう称号にはどんな効果が? 例えば、異性から好かれる、みたいなことはないんですか?」
「ふふ、何を聞くかと思えば。転移者にはそんな効果はないよ。そうだねぇ。スキルを会得しやすくなるとか、ステータスが伸びやすくなるとか、老けにくくなるとか、そんな効果だよ。まぁ、異性というか人に好かれるカリスマ性みたいなものを帯びる場合はあるけれど」
……なるほど。マリーの好意は別に称号に起因するものではないってことか。カリスマ性……ねぇ。俺にはわりと縁遠い概念だけど。
「ところで……他の転移者や転生者ってどんな人なんですか?」
「一人は転移者の男性で剣を召喚する特異なスキルの持ち主だったよ。両手に剣を持ちながら浮遊する剣をも操る、【天剣】の二つ名を持った特一級冒険者だったが……もう百年くらい前に死んだよ。人の寿命は短いね。それでも長生きした方だけど。もう一人は転生者の……たぶん女性。いつ見ても幼い容姿をしていたが、魔術師として最強に君臨していたよ。彼女も特一級冒険者で、ひょっとしたら今でも活動しているかもしれないね」
たぶん女性という言い回しにちょっとひっかかるが、その人は【神出鬼没】という異名を持っているらしい。そんな異世界からの来訪者二人を知るギルマスから、俺のスキルについて尋ねられたけど……はてさて、なんといえばいいものか。実際に見せた方が楽かもしれない。
「マイホーム!」
突然現れた光のゲートに困惑するギルマスだが、俺が顔を突っ込んでみせてから、同じように見てみるよう促してみると、
「なるほど、家ですか。拠点を召喚するスキルなのですね」
「うーん、召喚かなぁ。ちょっと、まだ全容がつかめてないんですよ。この家は俺が成長することで、広さや機能が成長する仕組みになっているんです」
「それは興味深いですね。……そうだ、タツヤさん――ではなく、レックスさんと呼んだ方がいいですね。これをどうぞ」
そう言ってギルマスから手渡されたのは金のバングルだった。ちょっと高級感あるそれを鑑定してみると、
「こ、これ……もらっていいんですか?」
「はい。天剣が仲間の錬金術師に作らせ、配り歩いていたものです。あなたにも必要でしょう?」
【隠蔽の腕輪】
防御力+5 効果:装備者の称号とユニークスキルを鑑定されないよう阻害する。
ありがたく受け取って装備する。鑑定スキルは異世界人の標準スペックだが、こちらの世界にも少なからず鑑定スキル持ちがいるらしい。そういった人の鑑定によって異世界人だと看破される危険がなくなるのは嬉しいことだ。
「では、私からの話は以上です。冒険者としての登録はあとクラス登録だけですね」
促されるままにギルマスの部屋を後にし、マリーとセフィリアに合流する。どんな話があったのか気にしている様子だったけど、変わったスキルを持っているから見せてきたと言って話を切ってしまった。バングルについてはスキルを見せたお礼としてもらったことにした。
「では、こちらにどうぞ」
ギルドの受付嬢に促されて宝石のような結晶が安置された部屋に行く。ここでクラス登録をするらしい。
「私は当然、風術士ね」
セフィリアが登録を済ませ続いて俺。剣士でいいだろう。別に変更するときに料金がかかるわけでもないし。
「さて、これで冒険者ギルドでの用事は全部終わったな」
素材を買い取ってもらい冒険者としての登録を済ませ、さらに異世界人についての情報も聞き、けっこう時間がかかってしまった。
今日から一か月間のうちに依頼を何かしら達成しないと登録が消除されてしまうというわけだ。どのみち、お金をまだまだ稼がねばならない以上、頑張って働くけどさ。
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