ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~

楠富 つかさ

文字の大きさ
上 下
25 / 84

025 フレッサの街に到着

しおりを挟む
 フレッサの街を囲う外壁が見え始めた。異世界ものでよくあるような円形の街っぽい。まぁ。川が流れている関係もあって、完全に囲まれているわけじゃなさそうだが。

「ここがフレッサの街? ……なんか思っていたよりも大きいのね」

 セフィリアはどうやらフレッサの街に初めてきたらしい。まぁ、当然俺もなのだが。

「確かに。それに門番がいるな」
「あ、しまった……そうだった……」
「どうしたマリー?」

 街に入る人の列に並び始めた途端にマリーががっくりと項垂れ始めた。どうやら冒険者ギルドや商人ギルドに登録していない人、もしくはフレッサの街で生まれた人でない場合、街に入るのに通行税が取られるらしい。その額、大銅貨1枚。今の俺たちにはけっこう重い金額だ。挙句、冒険者の登録にも銅貨1枚が必要らしい。俺としては商人ギルドにも登録したいのだが……そっちはなんと小銀貨1枚かかるらしい。そんなことしたら我々の所持金はなくなってしまう。

「取り敢えず入ったら冒険者ギルドに登録して、今ある素材を売却するとしよう。それなりにお金になるといいのだが……」
「冒険者登録ねぇ……依頼を確か一か月やらないと抹消されるのよね」

 セフィリアが冒険者登録に対して渋い反応をする。

「ハーフエルフからすれば一か月なんてあっという間に過ぎてしまうから、十五年くらい前に登録していた頃、すぐに抹消されてしまったわ。正直、都度都度大銅貨1枚は手間なのよね」

 セフィリアのハーフエルフらしい感想に俺は笑うばかりだった。そんなことをしているうちに俺たちの順番になり、マリーはギルドカードを提示して、俺とセフィリアは大銅貨1枚を支払った。

「なにはともあれ、無事にフレッサの街に到着だ。ギルドはどこだ?」
「門をくぐってすぐ左です。普通は大型の魔物を討伐してそのまま持ってくることもあるので、門から近くにギルドはあるんです。緊急時に門を守りやすいですし」

 なるほど。この国では正規軍人以外に冒険者が魔物の襲撃に備えて控えているってわけか。ちゃんとした門こそあれど、堀とか塀はないし、防衛力はやはり人力なんだなぁ。

「さ、ギルドはここですよ」

 マリーに案内されてたどり着いた建物は、木の看板に『フレッサの冒険者ギルド』と書かれただけのシンプルなものだった。

「さっそく中に入りましょう!」
「おう!」
「ええ!」

 意気揚々と扉を開けるマリーの後に続く。建物の中は広く、テーブルがいくつか並んでいる。正面奥にあるカウンターは混雑しており、俺たちは素材買い取りの列に並ぶことにした。キョロキョロと周囲を見渡すが、なんというか想像通りの異世界の冒険者ギルドだ。依頼を貼ったボードがあったり、冒険者が昼から酒を飲み交わしていたり、なんというか本当に想像通り過ぎて笑ってしまいそうだった。まぁ、変に笑うとなんか輩に絡まれそうだから我慢したけど。
 しばらく並んで待っていると俺たちの番になった。受付嬢は二十歳そこそこの女性だった。

「こんにちは。本日はどのようなご用件でしょうか?」
「あぁ、素材の買い取りと冒険者としての登録が二人分、いいかな?」
「はい、承っております。まずこちらにお名前をお願いします」

 用紙に名前を書く。文字は読めるが、書くのは初めてだ。まぁ、なんとか書けたけど。言語の加護に感謝感謝だ。

「レックスさんは商家出身とのことでしたが、文字の読み書きができるのですね」
「あぁ、一応ね」

 俺とセフィリアが書いた紙を手渡すと、

「では登録のカードをおつくりします。少し時間がかかるので、その間に素材の検分をさせていただきます。この木札を持って奥の倉庫へどうぞ。戻りましたらまた受付に声をかけてください」

 どうやらちゃんと分業が出来ているらしい。俺たちは受け取った木札を手に、奥の倉庫へと進むことにした。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎
ファンタジー
坂木 新はリサイクルショップの店員だ。 ある日、買い取りで査定に不満を持った客に恨みを持たれてしまう。 仕事帰りに襲われて、気が付くと見知らぬ世界のベッドの上だった。

スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった

Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。 *ちょっとネタばれ 水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!! *11月にHOTランキング一位獲得しました。 *なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。 *パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

鋼なるドラーガ・ノート ~S級パーティーから超絶無能の烙印を押されて追放される賢者、今更やめてくれと言われてももう遅い~

月江堂
ファンタジー
― 後から俺の実力に気付いたところでもう遅い。絶対に辞めないからな ―  “賢者”ドラーガ・ノート。鋼の二つ名で知られる彼がSランク冒険者パーティー、メッツァトルに加入した時、誰もが彼の活躍を期待していた。  だが蓋を開けてみれば彼は無能の極致。強い魔法は使えず、運動神経は鈍くて小動物にすら勝てない。無能なだけならばまだしも味方の足を引っ張って仲間を危機に陥れる始末。  当然パーティーのリーダー“勇者”アルグスは彼に「無能」の烙印を押し、パーティーから追放する非情な決断をするのだが、しかしそこには彼を追い出すことのできない如何ともしがたい事情が存在するのだった。  ドラーガを追放できない理由とは一体何なのか!?  そしてこの賢者はなぜこんなにも無能なのに常に偉そうなのか!?  彼の秘められた実力とは一体何なのか? そもそもそんなもの実在するのか!?  力こそが全てであり、鋼の教えと闇を司る魔が支配する世界。ムカフ島と呼ばれる火山のダンジョンの攻略を通して彼らはやがて大きな陰謀に巻き込まれてゆく。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

処理中です...