ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~

楠富 つかさ

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024 それぞれの目的

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 翌朝、目が覚めるといつも通りキッチンで顔を洗う。マイホームスキルで取り寄せた歯ブラシを使って歯を磨く。なんというか、消耗品生成がネットスーパーみたいになってしまっているな。便利過ぎて怖いぜ。正直、フレッサの街ではスキルを使って取り寄せた塩を売却してある程度まとまったお金を得るつもりだし。

「さーて、今日の朝飯はなんだろな」
「……レックス、あなたのスキルなのに、何が出てくるか分からないの?」
「あはは、まあそうだな」

 俺は笑いながらキッチン上の収納をゴソゴソする。出てきたのは……コーンフレークやないかい。
 まぁ、ちゃんと牛乳も一緒にある。捨てられずに洗って保存しているカップ麺の容器にコーンフレークと牛乳を入れて朝食にする。

「そういえばさ、セフィリアはなんであの森にいたんだ?」
「あぁ、話してなかたっわね。純血ではないとはいえエルフよ。あの森には調査に行っていたの」
「へぇ、調査って何を?」
「魔物の発生源を突き止めたり、異常がないかどうか見回りしたり、後は薬草なんかの自生地を調べたりするのも仕事の内ね。エルフは他種族より長命ってこともあって、研究職に就く人が多いのよ」

 なるほど。人間だと何代もかけて行うような研究をエルフなら一人でできるってことか。

「ちなみに私はあの森に生えているルエネ草を取りに来ていたの。エッグベアーに遭遇したせいで全部放り捨てちゃったけど」
「そういうことなのか」

 そんな会話をしながら、残った牛乳をあおる。コーンフレークを食べるのもかなり久々だが、最後に残った甘い牛乳はなかなか美味い。

「レックス、あなたには感謝してるの」
「急にどうした?」

 真剣な表情のセフィリアに俺もついつい居住まいを正す。

「だって、エッグベアーに遭遇して生き残れたのよ? 私が。郷の友達に言ってもきっと信じてくれないわよ」
「わ、私も! レックスさんには感謝してます。……あれ? レックスさんはどうしてあの森にいたんですか?」
「あら、マリーも森でレックスに助けてもらったのね?」

 マリーがセフィリアに俺との出会いを語るが、ちょっと美化されている気がして居心地が悪い。魔物から逃げる彼女をマイホームに連れ込んだだけだし。……それを言うとセフィリアの時もまったく同じなのだが。

「で、なんで森にいたの?」

 二人から聞かれて答えをはぐらかすのは難しいが……だからと言って異世界からこっちに来たらあの森だったなんて言えるわけもない。困ったなぁ……。

「あー、まぁ、なんとなくだ。俺は……えっと、なんだ。商家の次男坊でな、家業は継げないから適当に旅して歩いてる」

 でたらめだ。どこまで信じてもらえるか分からないが、押し切るよりほかないだろう。

「そうなの? その割にはかなり剣の腕があるようだけれど……」
「別に、大した腕前じゃないさ。我流だし、短剣使ったり剣使ったり、その辺も適当だからな」
「そうなのね。ふぅん」

 納得したのかしていないのか、よく分からない反応だな。一方のマリーはというと。

「レックスさんも商家の出なんですね。えへへ、私と一緒です」

 なんか嬉しそうなので俺も嬉しくなってしまう。

「レックスさんのレアスキルならどこでも、どこまでも、お商売ができますね!」
「あぁ、そうかもな。つっても、俺にはマリーみたいな商才はないけど」

 マリーの頭を撫でながら考える。取り敢えず、フレッサの街では塩とかワイルドラビットの毛皮とかそういったものを売却するつもりだが、そこから先はどうしたもんか。

「ところで、マリーはフレッサの街に行ったことはあるのかい?」
「はい! そもそも私はフレッサの街で生まれ育ちましたから」

 そうだったのか。ってことは、マリーの両親はフレッサの街で奴隷として売られているのか。そういえばマリーが冒険者をやっている理由をセフィリアに伝えていないな。

「マリーの目的ってセフィリアにも教えていいのか?」
「あ、言ってませんでしたね。私から言いますよ。セフィリアさん、実は……うちの両親、今は奴隷になっちゃって……二人を買い戻すために冒険者になったんです」
「まぁ……マリー。苦労してるのね。どれくらいのお金が必要なの?」
「……分からない。一人小金貨3枚が相場らしいけど、頑張れは二人で小金貨5枚でなんとかなるかも。でもそれは奴隷を買う金額で、自由の身にするのは倍は必要かもしれない」
「……じゃあ、大金貨1枚ね」

 セフィリアの呟く声は低く、重かった。セフィリア曰く、大金貨1枚あれば平民なら十年は楽に暮らせるそうだ。仮に小銅貨を100円程度と考えたら一千万円だ。うーん、とんでもない金額だな。もっとも、小銅貨=100円が俺の適当な換算なのだが。いや……剣が1.2万円で盾が7,000円、服が6,000円。的外れってわけでもなさそうか。

「分かった。俺たちも協力するよ。なあセフィリア」
「そうね。出来得る限りの協力は惜しまないわ」
「ありがとうございます! 私もいっぱい働きますね!」

 マリーは元気良く返事をするが、あまり無理をして欲しくないんだよな。せっかく両親と再会できた時に彼女らしさを損ねていたら悲しいからな。

「さて、そろそろ出発しようか。フレッサの街までもう少しだ」
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