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019 森を脱出
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森の中でクマに出会ったなんて書けば童謡のようではあるが、実際に遭遇してしまうと大ピンチだ。
「……まぁ、何はともあれ食事だな」
「はい! 確かに、お腹すきましたからね」
マリーの元気さに救われる。お腹が空いて落ち込んでいたら、切り抜けられるピンチも切り抜けられなくなってしまう。とはいえ、さっき倒したばかりのハンマーボアはまだ解体が済んでいないから、取り敢えずはマイホームが配給してくれる食事で済ませるのだが。
「おぉ……食パンか。でもインスタントのコンポタが付いてきた」
ホームポイントを少し使うが、消耗品作成で紙皿と紙コップを用意した。幸いどちらも15個入りが出てきたから、何度かは使えそうだ。
食パンも六枚切りだったので三人でちょうど割り切れる。
「……見慣れない器ね。パンも随分と柔らかそうだし。これもレックスのスキル?」
「まぁ、そうなるかな。味は保証するからさ」
「美味しそうな匂いのするスープですね!」
マリーはさっそく食パンをコンポタにつけてモグモグ食べているが、セフィリアは警戒しているのか恐る恐るという感じだ。そりゃ、知らない人が出した食べ物を食べろって言われても躊躇うだろう。こちらの世界のパンは黒っぽくて固いらしいし。
「美味しい……こんなに柔らかいパンがあるのね。この黄色いスープは……穀物っぽいけれど、甘くて美味しいわ」
俺も紙コップに入れたコンポタをずずっと飲む。こういう時に飲む温かい飲み物は随分と心を癒してくれる。食事を済ませて少し気が楽になった俺は、言おうか言うまいか悩んでいたことを言う決意がついた。
「セフィリア、その……ベッドのシーツを剥いでいいから、羽織ったらどうだ?」
鑑定にもあった通り、セフィリアの服は破損していてけっこうきわどいところまで見えてしまいそうになっている。
セフィリアはエルフの血筋をひいていることもあって美人だ。体系はスレンダーで、創作上のエルフとしてはなかなかクラシカルな感じだ。弓使いである以上、胸は大きくない方がいいのだろう。とまぁ、そんなモデル体型なハーフエルフ美女がダメージ服で同じ部屋にいるのだ。多少は意識もしてしまう。
「……そうね、気遣い感謝するわ。でも、もう少し早く言ってくれてもよかったんじゃない?」
「マリーが何も言わないから」
「え、私ですか!? えっと、セフィリアさんが堂々としてらしたから、気にしてないものと」
「気にしてなかったけれど……命の危機だったし。でも言われると気になるものなのよ」
取り敢えずなにかと落ち着いたので、俺は玄関から顔を出して外の様子を窺うことにした。体感的には一時間ほど経過している。
「エッグベアーはいますか?」
部屋からマリーが聞いてくる。俺はきょろきょろと周囲を見やるが、エッグベアーの姿はなかった。マリーの投げた剣は刀身が折れた状態で地面に落ちていた。ひょっとしたら剣先だけはまだエッグベアーに刺さっているかもしれない。
「大丈夫そうだぞー」
俺の声に安心して出てきた二人は、周囲を確認して頷きあう。
「さて、これからどうするかだけど」
「そうね。一つ案があるわ。私の風魔術で音や匂いを遮断して村まで撤退」
セフィリアの案に俺は賛成した。今は安全に村まで帰るのが最優先だ。一先ず、初期装備のククリと木の丸盾を装備する。久々のククリは随分と軽くて物足りなさを感じる。剣はマリーに持たせてしんがりをお願いした。
「風の加護よ、我らに静寂を与えよ――サイレント!」
セフィリアが唱えた風魔術は周囲に風のベールを展開するもので、これで音や匂いが外に漏れにくくなるらしい。
「では、行きましょうか」
「あぁ」
「はい!」
エッグベアーには遭遇することなく、鼻が利くというフォレストウルフにも遭遇せず、なんとか戦闘を回避して森を抜けることができた。
「ふぅ、やっと抜けたな」
「そうですね、無事で何よりです」
「本当に助かったわ。あなたたちのおかげで、こうして生きて森を出ることが出来た」
セフィリアは改めて俺たちに感謝の言葉を口にする。それはこっちのセリフでもあるんだけどな。とはいえ……。
「村に着くまで油断は禁物だ。陽も傾いてきたし、マイホームで夜を明かして明日スタル村まで帰ろう」
「それがいいと思います。体力的にもけっこう消耗してますし」
「えぇ、そうね。草原の魔物だって油断ならないもの」
マリーもセフィリアもそう言っているし、俺たちはマイホームで一晩寝ることにした。
消耗している時にちゃんと休めるって、やっぱり俺のマイホームは旅に向いていて助かるぜ。
「……まぁ、何はともあれ食事だな」
「はい! 確かに、お腹すきましたからね」
マリーの元気さに救われる。お腹が空いて落ち込んでいたら、切り抜けられるピンチも切り抜けられなくなってしまう。とはいえ、さっき倒したばかりのハンマーボアはまだ解体が済んでいないから、取り敢えずはマイホームが配給してくれる食事で済ませるのだが。
「おぉ……食パンか。でもインスタントのコンポタが付いてきた」
ホームポイントを少し使うが、消耗品作成で紙皿と紙コップを用意した。幸いどちらも15個入りが出てきたから、何度かは使えそうだ。
食パンも六枚切りだったので三人でちょうど割り切れる。
「……見慣れない器ね。パンも随分と柔らかそうだし。これもレックスのスキル?」
「まぁ、そうなるかな。味は保証するからさ」
「美味しそうな匂いのするスープですね!」
マリーはさっそく食パンをコンポタにつけてモグモグ食べているが、セフィリアは警戒しているのか恐る恐るという感じだ。そりゃ、知らない人が出した食べ物を食べろって言われても躊躇うだろう。こちらの世界のパンは黒っぽくて固いらしいし。
「美味しい……こんなに柔らかいパンがあるのね。この黄色いスープは……穀物っぽいけれど、甘くて美味しいわ」
俺も紙コップに入れたコンポタをずずっと飲む。こういう時に飲む温かい飲み物は随分と心を癒してくれる。食事を済ませて少し気が楽になった俺は、言おうか言うまいか悩んでいたことを言う決意がついた。
「セフィリア、その……ベッドのシーツを剥いでいいから、羽織ったらどうだ?」
鑑定にもあった通り、セフィリアの服は破損していてけっこうきわどいところまで見えてしまいそうになっている。
セフィリアはエルフの血筋をひいていることもあって美人だ。体系はスレンダーで、創作上のエルフとしてはなかなかクラシカルな感じだ。弓使いである以上、胸は大きくない方がいいのだろう。とまぁ、そんなモデル体型なハーフエルフ美女がダメージ服で同じ部屋にいるのだ。多少は意識もしてしまう。
「……そうね、気遣い感謝するわ。でも、もう少し早く言ってくれてもよかったんじゃない?」
「マリーが何も言わないから」
「え、私ですか!? えっと、セフィリアさんが堂々としてらしたから、気にしてないものと」
「気にしてなかったけれど……命の危機だったし。でも言われると気になるものなのよ」
取り敢えずなにかと落ち着いたので、俺は玄関から顔を出して外の様子を窺うことにした。体感的には一時間ほど経過している。
「エッグベアーはいますか?」
部屋からマリーが聞いてくる。俺はきょろきょろと周囲を見やるが、エッグベアーの姿はなかった。マリーの投げた剣は刀身が折れた状態で地面に落ちていた。ひょっとしたら剣先だけはまだエッグベアーに刺さっているかもしれない。
「大丈夫そうだぞー」
俺の声に安心して出てきた二人は、周囲を確認して頷きあう。
「さて、これからどうするかだけど」
「そうね。一つ案があるわ。私の風魔術で音や匂いを遮断して村まで撤退」
セフィリアの案に俺は賛成した。今は安全に村まで帰るのが最優先だ。一先ず、初期装備のククリと木の丸盾を装備する。久々のククリは随分と軽くて物足りなさを感じる。剣はマリーに持たせてしんがりをお願いした。
「風の加護よ、我らに静寂を与えよ――サイレント!」
セフィリアが唱えた風魔術は周囲に風のベールを展開するもので、これで音や匂いが外に漏れにくくなるらしい。
「では、行きましょうか」
「あぁ」
「はい!」
エッグベアーには遭遇することなく、鼻が利くというフォレストウルフにも遭遇せず、なんとか戦闘を回避して森を抜けることができた。
「ふぅ、やっと抜けたな」
「そうですね、無事で何よりです」
「本当に助かったわ。あなたたちのおかげで、こうして生きて森を出ることが出来た」
セフィリアは改めて俺たちに感謝の言葉を口にする。それはこっちのセリフでもあるんだけどな。とはいえ……。
「村に着くまで油断は禁物だ。陽も傾いてきたし、マイホームで夜を明かして明日スタル村まで帰ろう」
「それがいいと思います。体力的にもけっこう消耗してますし」
「えぇ、そうね。草原の魔物だって油断ならないもの」
マリーもセフィリアもそう言っているし、俺たちはマイホームで一晩寝ることにした。
消耗している時にちゃんと休めるって、やっぱり俺のマイホームは旅に向いていて助かるぜ。
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