ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~

楠富 つかさ

文字の大きさ
上 下
4 / 84

004 マリーの事情

しおりを挟む
「えっと、実は……さっきも言ったように私は駆け出しで、この森での討伐依頼に誘ってくれたパーティの人と一緒に来たんです。でも、そのパーティの人たち、私の身体目当てだったみたいで……あわや貞操の危機って時にゴブリンの群れが襲ってきて、男の人たちは戦い始めたんですけど、私は逃げ出しちゃいました」

 流石は異世界、なんていうか性と暴力が支配しているって感じだ。そこまで話したマリーが少しモジモジし始める。

「あの……その……今、助けてもらったお礼は身体で、でしょうか? その、経験はないですけど、精一杯ご奉仕しますから……」
「ち、違う!! 別に、そういうのを求めて助けたわけじゃないから」

 まさか異世界は女の子もガツガツ来る系なのか。そしたら俺、ろくに会話もできないぞ。マリーが初めてなら、それはそれでいいかもしれないし……女の子に迫られるなんてこれまで無縁だったし、この先だってあるか分からないけど……流石に十代の女の子と淫行はダメだ。こっちの世界じゃどうか分からないけど、俺の中の倫理観がダメだって言っている。

「あ、そうなんですね……。私、拒んでいるのに無理やりにとかぁ、強引に迫られてとか、嫌いじゃないっていうか、そういうのも悪くないかなって思ってますし、その……レックスさんは命の恩人なので……あの、貴方が望む時は、私を使ってください」
「使うって……ていうか、マリーは何歳? 成人って何歳から?」

 やっぱり異世界だし、地球と価値観が違うんだろうなぁ……。生きるか死ぬかの世界に身をおくと、生存本能が働いて性欲が増す、みたいなそういうことなんだろうか。

「私は十六歳でつい最近成人したばかりです。冒険者になれるのも十六歳からですよ」

 なるほど……じゃあ当然俺は冒険者になれるってわけか。

「それで、マリーはどうして冒険者に?」
「はい、もともとうちは商会だったんです。でも小さい商会だったので、他の商会に潰されちゃって……。ひょっとしたら奴隷になっていたかもしれません。でも、冒険者として登録を受けていれば奴隷にはなりません。だから、両親からあんたは冒険者になるために家出したから、この商会とは、う、無関係だ、って……だから、私……冒険者として、ん、成功して、頑張って、両親と……生まれ育った商会を、かいもどぢたいんです……」

 涙ながらに語る彼女に、俺はかける言葉を見つけられなかった。きっと色々あったのだろう。それに、彼女は多少大人っぽく見えるとはいえまだ十六歳だ。そんな子が親のためにと危険に身を投じているのだ。なんだか俺まで泣きそうになってしまう。この子は……俺と一緒だ。”家”を取り戻すために戦っている。そんな彼女に、俺は何をしてやれるだろうか。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎
ファンタジー
坂木 新はリサイクルショップの店員だ。 ある日、買い取りで査定に不満を持った客に恨みを持たれてしまう。 仕事帰りに襲われて、気が付くと見知らぬ世界のベッドの上だった。

スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった

Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。 *ちょっとネタばれ 水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!! *11月にHOTランキング一位獲得しました。 *なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。 *パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

異世界をスキルブックと共に生きていく

大森 万丈
ファンタジー
神様に頼まれてユニークスキル「スキルブック」と「神の幸運」を持ち異世界に転移したのだが転移した先は海辺だった。見渡しても海と森しかない。「最初からサバイバルなんて難易度高すぎだろ・・今着てる服以外何も持ってないし絶対幸運働いてないよこれ、これからどうしよう・・・」これは地球で平凡に暮らしていた佐藤 健吾が死後神様の依頼により異世界に転生し神より授かったユニークスキル「スキルブック」を駆使し、仲間を増やしながら気ままに異世界で暮らしていく話です。神様に貰った幸運は相変わらず仕事をしません。のんびり書いていきます。読んで頂けると幸いです。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

処理中です...