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9話
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週末が明けて月曜日。家庭科室で私と円香ちゃんだけの空間。
「円香ちゃん、決めたよ。私、魔法少女になる」
「ありがとう、譜織。そして……ごめん」
すっと俯く円香ちゃんに、気にしないでと告げて、自分が何をすればいいか、問いかける。
「そうね、魔法少女になるためには……メイガス、おいで」
円香ちゃんがケータイを空中にかざすと、青紫色の光とともに初めて非日常を体験したときに話した小さな魔女が姿を現した。
『お久しぶりね。いや、そうでもないかしら』
「譜織、ケータイをだして。守りたい存在を思い浮かべながらキーを反時計回りに押してみて」
円香ちゃんに言われた通りに、【SP‐07D】を開いて通話ボタンから順にキーを押す。すると、桃色の光が私の視界を覆い、それが収束するとそこには……
『貴女が私のパートナーね。ふむふむ』
「君が、私のパートナー?」
そこに現れたのは花をあしらったドレスに身を包んだお姫様のような女の子。
『わたくしの名前はスピカ。貴女は……そう、牧名譜織ね』
『おやおや、スピカ様を呼び起こすとは、見た目以上の素質の持ち主だったのね、譜織さん』
『あらあらメイガス。久しぶりね』
スピカと名乗った彼女はどうやらメイガスと知り合いらしい。それよりも、メイガスが言った言葉の意味が気になる。
『譜織、わたくしが貴女のパートナーとなったからには安心なさい。わたくしは、魔導の国の姫なのよ。強く、美しく、優雅な魔法を貴女に教えてさしあげますわ』
「譜織、貴女の素質はやはり素晴らしいわ。貴女が味方であることを、心から嬉しく思う」
メイガスがいる世界。このケータイの向こうに広がる世界―魔導の国―そこのお姫様がスピカ。これって実はすごいこと!?
「パートナーは魔法少女の持つ魔力総量で決まる。譜織、貴女は無敵の魔法少女になれるわ。さぁ、練習を始めましょう」
……私でも、戦える。誰かの力になれる。それだけでも、すごく嬉しい!
『さてと、変身のプロセスを教えるわ。変身はわたくしたち本職の魔女の力をその身に引き出す行為。契約と同等の意味を持つわ。数字ボタンを交差するように押しなさい』
スピカに言われるままに、4,5,6と2,5,8のボタンを押す。再び光に包まれた私は、自らの内から力が湧き上がる感覚に酔いしれていた。それと同時に、魔力というものを直感的に把握し、それが自らの身を包み込んでいることを把握した。そして、光は収束する。
「これが……私」
家庭科室にある姿見で今の自身の姿を確認する。背中までの長さだった髪は腰まで伸び、色もスピカと同様の桃色になっている。瞳も同様の色で光り、いつもの自分とは遠い存在に見えた。身にまとう衣装も、スピカのそれと似通った淡い桃色のワンピースドレスで、あちこちに星があしらわれている。少し体を捻ると見える腰に付いた大きなリボンが目に付いた。スカート部分はさほど短くなく、レースとリボンで飾り付けられていた。これが、私の魔法少女としてのコスチューム。
『……姫殿下の趣味はお変わりないようで』
『気付くのが遅くてよ、メイガス。ふふ、流石はわたくしのパートナー。可愛いわよ』
肩に腰掛けているスピカの声は、かなり弾んでいた。魔法少女の衣装というのは、パートナーの意向が大きく反映されるのだろうか。
『そうそう、変身後はケータイが武器になるのよ。左手をふってごらんなさい』
左手を真横へと振ると、先端に大きな星が輝く長い杖が現れた。これが、魔法の杖になるんだ。この杖と私のケータイは同じ存在。母の温もりが感じられたような気がして、少し心強い思いを抱いた。
「それじゃあ、練習を始めましょうか」
既に変身を済ませた円香ちゃんが、アメジストのような瞳で私を見据える。二人だけの、秘密の部活が始まった。
「円香ちゃん、決めたよ。私、魔法少女になる」
「ありがとう、譜織。そして……ごめん」
すっと俯く円香ちゃんに、気にしないでと告げて、自分が何をすればいいか、問いかける。
「そうね、魔法少女になるためには……メイガス、おいで」
円香ちゃんがケータイを空中にかざすと、青紫色の光とともに初めて非日常を体験したときに話した小さな魔女が姿を現した。
『お久しぶりね。いや、そうでもないかしら』
「譜織、ケータイをだして。守りたい存在を思い浮かべながらキーを反時計回りに押してみて」
円香ちゃんに言われた通りに、【SP‐07D】を開いて通話ボタンから順にキーを押す。すると、桃色の光が私の視界を覆い、それが収束するとそこには……
『貴女が私のパートナーね。ふむふむ』
「君が、私のパートナー?」
そこに現れたのは花をあしらったドレスに身を包んだお姫様のような女の子。
『わたくしの名前はスピカ。貴女は……そう、牧名譜織ね』
『おやおや、スピカ様を呼び起こすとは、見た目以上の素質の持ち主だったのね、譜織さん』
『あらあらメイガス。久しぶりね』
スピカと名乗った彼女はどうやらメイガスと知り合いらしい。それよりも、メイガスが言った言葉の意味が気になる。
『譜織、わたくしが貴女のパートナーとなったからには安心なさい。わたくしは、魔導の国の姫なのよ。強く、美しく、優雅な魔法を貴女に教えてさしあげますわ』
「譜織、貴女の素質はやはり素晴らしいわ。貴女が味方であることを、心から嬉しく思う」
メイガスがいる世界。このケータイの向こうに広がる世界―魔導の国―そこのお姫様がスピカ。これって実はすごいこと!?
「パートナーは魔法少女の持つ魔力総量で決まる。譜織、貴女は無敵の魔法少女になれるわ。さぁ、練習を始めましょう」
……私でも、戦える。誰かの力になれる。それだけでも、すごく嬉しい!
『さてと、変身のプロセスを教えるわ。変身はわたくしたち本職の魔女の力をその身に引き出す行為。契約と同等の意味を持つわ。数字ボタンを交差するように押しなさい』
スピカに言われるままに、4,5,6と2,5,8のボタンを押す。再び光に包まれた私は、自らの内から力が湧き上がる感覚に酔いしれていた。それと同時に、魔力というものを直感的に把握し、それが自らの身を包み込んでいることを把握した。そして、光は収束する。
「これが……私」
家庭科室にある姿見で今の自身の姿を確認する。背中までの長さだった髪は腰まで伸び、色もスピカと同様の桃色になっている。瞳も同様の色で光り、いつもの自分とは遠い存在に見えた。身にまとう衣装も、スピカのそれと似通った淡い桃色のワンピースドレスで、あちこちに星があしらわれている。少し体を捻ると見える腰に付いた大きなリボンが目に付いた。スカート部分はさほど短くなく、レースとリボンで飾り付けられていた。これが、私の魔法少女としてのコスチューム。
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『気付くのが遅くてよ、メイガス。ふふ、流石はわたくしのパートナー。可愛いわよ』
肩に腰掛けているスピカの声は、かなり弾んでいた。魔法少女の衣装というのは、パートナーの意向が大きく反映されるのだろうか。
『そうそう、変身後はケータイが武器になるのよ。左手をふってごらんなさい』
左手を真横へと振ると、先端に大きな星が輝く長い杖が現れた。これが、魔法の杖になるんだ。この杖と私のケータイは同じ存在。母の温もりが感じられたような気がして、少し心強い思いを抱いた。
「それじゃあ、練習を始めましょうか」
既に変身を済ませた円香ちゃんが、アメジストのような瞳で私を見据える。二人だけの、秘密の部活が始まった。
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