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7話
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今日が金曜日でよかった。ふとそう思った。明日も学校だったら、スマホの闇に怯えて普段通りには過ごせなかったと思う。
『~~~♪』
「あ、お父さんからだ」
メールを受信したケータイを開き、メールの内容を見る。買わなきゃいけないものの確認だろうか。
「……え、そんなぁ」
前言撤回。メールには、今日は突然の仕事が立て続けで入ったから帰れない、という内容が記されていた。じゃあ、今日は私……一人なんだ。そう思ったら急に寂しくなった。恐くもなった。普段なら大丈夫なのに……今日は耐えられない。開いたままのケータイを持って下がったままの手に力を入れて、ケータイの画面を視界に持ってくる。迷い無く操作して電話をかける。相手は……
「もしもし。どうした、ふー?」
あーちゃんだ。どうしても、あーちゃんの声が聞きたかった。
「あーちゃん、今日ね……家にお父さんが帰ってこないの。泊っていかない?」
「おぉ、そうしようかな。お泊りセットあるよね? 家には連絡しておく。すぐ行くね、今下校中だから。それじゃ」
大丈夫、いつも通りな感じだった。きっと声に寂しさは篭ってないはず。でも、できれば電話はあーちゃんが家に来るまで続けたかった。スマホの闇にいつ襲われるか分からない。今日は大丈夫かもしれない。でも、大丈夫じゃないかもしれない。不安だよ……早く、早く来てよ。あーちゃん……。
「譜織!!」
「あーちゃん!」
「あ、ちょっ、待った! うおわ!!」
不安のせいか知らず知らずのうちに玄関へ来ていた私に、扉を開けて駆け込んできたあーちゃんが、勢い余ってぶつかる。そのまま玄関先で押し倒された私をあーちゃんが抱きしめる。
「大丈夫? 譜織」
「えっと……あーちゃん?」
この状態でぎゅっと抱き締められると、身長差のせいであーちゃんの胸に顔が埋もれてしまう。あーちゃん本来の石鹸っぽいにおいと汗のにおいが混じって、妙にクラクラしてしまう。
「電話での譜織の声、すごく不安そうだった。何があったの?」
「ね、ねぇ、あーちゃん」
「どうしたの?」
あーちゃんが腕を伸ばして四つん這いの体勢になると、不安の色に満ちた瞳と目が合う。
「取り敢えず、お風呂入らない? もう沸いているから」
きっと電話に出た場所から全速力で来てくれたんだろう。そんな親友にまずは感謝がしたい。
「ありがとうね、朱実ちゃん」
彼女がそうするように、真面目な話の時には、ちゃんと名前で呼ぶ。一瞬だけ驚いたあーちゃんは、すぐに笑顔になった。
「行こうか、ふー」
「うん」
やっぱり、あーちゃんがいるだけで心強い。あーちゃんになら、打ち明けてもいいと思えた。
『~~~♪』
「あ、お父さんからだ」
メールを受信したケータイを開き、メールの内容を見る。買わなきゃいけないものの確認だろうか。
「……え、そんなぁ」
前言撤回。メールには、今日は突然の仕事が立て続けで入ったから帰れない、という内容が記されていた。じゃあ、今日は私……一人なんだ。そう思ったら急に寂しくなった。恐くもなった。普段なら大丈夫なのに……今日は耐えられない。開いたままのケータイを持って下がったままの手に力を入れて、ケータイの画面を視界に持ってくる。迷い無く操作して電話をかける。相手は……
「もしもし。どうした、ふー?」
あーちゃんだ。どうしても、あーちゃんの声が聞きたかった。
「あーちゃん、今日ね……家にお父さんが帰ってこないの。泊っていかない?」
「おぉ、そうしようかな。お泊りセットあるよね? 家には連絡しておく。すぐ行くね、今下校中だから。それじゃ」
大丈夫、いつも通りな感じだった。きっと声に寂しさは篭ってないはず。でも、できれば電話はあーちゃんが家に来るまで続けたかった。スマホの闇にいつ襲われるか分からない。今日は大丈夫かもしれない。でも、大丈夫じゃないかもしれない。不安だよ……早く、早く来てよ。あーちゃん……。
「譜織!!」
「あーちゃん!」
「あ、ちょっ、待った! うおわ!!」
不安のせいか知らず知らずのうちに玄関へ来ていた私に、扉を開けて駆け込んできたあーちゃんが、勢い余ってぶつかる。そのまま玄関先で押し倒された私をあーちゃんが抱きしめる。
「大丈夫? 譜織」
「えっと……あーちゃん?」
この状態でぎゅっと抱き締められると、身長差のせいであーちゃんの胸に顔が埋もれてしまう。あーちゃん本来の石鹸っぽいにおいと汗のにおいが混じって、妙にクラクラしてしまう。
「電話での譜織の声、すごく不安そうだった。何があったの?」
「ね、ねぇ、あーちゃん」
「どうしたの?」
あーちゃんが腕を伸ばして四つん這いの体勢になると、不安の色に満ちた瞳と目が合う。
「取り敢えず、お風呂入らない? もう沸いているから」
きっと電話に出た場所から全速力で来てくれたんだろう。そんな親友にまずは感謝がしたい。
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