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「どうして私なの?」
「貴女にはガラケーにこだわる意味を持っているでしょ? それはきっと強さに直結するはずだから」
……なんでそこまで分かるんだろう? なんて、思うだけ無駄だよね。きっと何でもお見通しなんだと思う。でも、
「恐い……。恐いよ」
「わたしもいる。精一杯の努力はする。でもね……わたしだけで全てに対処できる訳ないの。分かって……」
「うん……。確かに、円香ちゃんだけに戦わせるのもよくない。いつ友達が……スマホの闇になっちゃうかも分からない。ねぇ、さっき居なくなった闇はどうなったの?」
そっと目を伏せる円香ちゃん。その奥に、一つのスマートフォンが落ちているのが見えた。……見えてしまった。この光景と教室で話したニュースが重なる。
「そうよ、連続失踪事件の真実がこれよ」
感情を押し殺したように言う円香ちゃん。
「でもどうして!? あのニュースだって最近になって増えたけど! 前は……こんなニュースなかったでしょ!?」
破壊されたスマホだけが遺された失踪事件は昔からあった。でも、本当にまばらで滅多にニュースにはならなかった。しかも、そんな失踪が続くなんて有り得なかった。円香ちゃんが来る少し前くらいから、急に失踪者は増えた。一体、なんなの……。
「スマホの闇はどんどん強くなってるの。昔なら、闇を消せばスマホも消えた。なのに、今は残ってしまうの。だから壊している。今も昔も……魔法少女は戦っていたのよ」
スマホごと消えれば、ただの失踪事件。国内で年間、かなりの人が失踪しているのも事実。細かく取りざたされることはない、そういうことなのね。
「スマホの闇に取り込まれた人は、もう戻ってこられない。だったら、どうして私たちが戦わなきゃいけないの!?」
「スマホの闇が……肉体を持ち人々に危害を加えるのを阻止するためよ。生まれたばかりの闇は肉体を持たない。でも、いずれ人を襲うようになる。それだけは……防がないといけないの。分かって、譜織。いつか、貴女の周りにいる人にも危害が及ぶかもしれないのよ!」
戦う意義も資格もある。無いのは……私自身の覚悟だけ。
「少し……考えさせて。お願い」
「えぇ、急かしはしないわ。でも、いつまでも待てるとは思わないで。今日はここでお別れにしましょう。また明日ね、譜織」
決めなきゃいけない。自分で、自分の意志で。戦うのかどうかを。息を吐きながら見上げた空は、少しだけ茜色に染まっていた。
「……ただいま」
いつも通りに家に帰ってこれた。もし、円香ちゃんと一緒に帰らなければ、こんなことにならなかったかもしれない。でも同時に、あのスマホの闇に襲われていたかもしれない。そう思うと、やっぱり恐くなった。自分の身を守る力だけは必要なのかもしれない。でも、もしあーちゃんが被害を受けたら……。そんなの耐えられない……。
「お母さん……私、どうしたらいいのかな?」
答える声はないけれど、誰かに相談してみようと思えた。取り敢えず、今は普段通りのことをしよう。朝の内に掃除したお風呂を沸かしながら、そう決めた。
「貴女にはガラケーにこだわる意味を持っているでしょ? それはきっと強さに直結するはずだから」
……なんでそこまで分かるんだろう? なんて、思うだけ無駄だよね。きっと何でもお見通しなんだと思う。でも、
「恐い……。恐いよ」
「わたしもいる。精一杯の努力はする。でもね……わたしだけで全てに対処できる訳ないの。分かって……」
「うん……。確かに、円香ちゃんだけに戦わせるのもよくない。いつ友達が……スマホの闇になっちゃうかも分からない。ねぇ、さっき居なくなった闇はどうなったの?」
そっと目を伏せる円香ちゃん。その奥に、一つのスマートフォンが落ちているのが見えた。……見えてしまった。この光景と教室で話したニュースが重なる。
「そうよ、連続失踪事件の真実がこれよ」
感情を押し殺したように言う円香ちゃん。
「でもどうして!? あのニュースだって最近になって増えたけど! 前は……こんなニュースなかったでしょ!?」
破壊されたスマホだけが遺された失踪事件は昔からあった。でも、本当にまばらで滅多にニュースにはならなかった。しかも、そんな失踪が続くなんて有り得なかった。円香ちゃんが来る少し前くらいから、急に失踪者は増えた。一体、なんなの……。
「スマホの闇はどんどん強くなってるの。昔なら、闇を消せばスマホも消えた。なのに、今は残ってしまうの。だから壊している。今も昔も……魔法少女は戦っていたのよ」
スマホごと消えれば、ただの失踪事件。国内で年間、かなりの人が失踪しているのも事実。細かく取りざたされることはない、そういうことなのね。
「スマホの闇に取り込まれた人は、もう戻ってこられない。だったら、どうして私たちが戦わなきゃいけないの!?」
「スマホの闇が……肉体を持ち人々に危害を加えるのを阻止するためよ。生まれたばかりの闇は肉体を持たない。でも、いずれ人を襲うようになる。それだけは……防がないといけないの。分かって、譜織。いつか、貴女の周りにいる人にも危害が及ぶかもしれないのよ!」
戦う意義も資格もある。無いのは……私自身の覚悟だけ。
「少し……考えさせて。お願い」
「えぇ、急かしはしないわ。でも、いつまでも待てるとは思わないで。今日はここでお別れにしましょう。また明日ね、譜織」
決めなきゃいけない。自分で、自分の意志で。戦うのかどうかを。息を吐きながら見上げた空は、少しだけ茜色に染まっていた。
「……ただいま」
いつも通りに家に帰ってこれた。もし、円香ちゃんと一緒に帰らなければ、こんなことにならなかったかもしれない。でも同時に、あのスマホの闇に襲われていたかもしれない。そう思うと、やっぱり恐くなった。自分の身を守る力だけは必要なのかもしれない。でも、もしあーちゃんが被害を受けたら……。そんなの耐えられない……。
「お母さん……私、どうしたらいいのかな?」
答える声はないけれど、誰かに相談してみようと思えた。取り敢えず、今は普段通りのことをしよう。朝の内に掃除したお風呂を沸かしながら、そう決めた。
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