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5話

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 黒い何かと対峙する円香ちゃんが取り出したのは携帯電話。【MG‐06E】である。

「メイガス、出てきて」

 円香ちゃんがケータイを開くと、魔女の姿をした小さな女の子が現れて円香ちゃんの肩に着地した。

『お仕事だね?』

 円香ちゃんはその声には答えず、ケータイのボタンを何回か押した。その時、青紫の光が生まれて、黒い何かは動きを止めた。

「ここから先は魔法少女の領域よ」

 光が収束するとそこには、さっきの光と同じ色の衣装に身を包んだ円香ちゃんがいた。

「え……なんなの?」

 状況がまったく呑めない。訳のわからない黒い何かと変身したクラスメイトが対峙している状況を、理解できるはずがない。

「メイガス、説明は任せたわ」
『そっちは一人で問題――』

 メイガスと呼ばれていた女の子が言い終える前に、

「問題なくて当然よ」

 凛と答える円香ちゃんの声が響いた。

『じゃあ、観戦しながら説明をしようかしら。私の名前はメイガス。円香のケータイに仮住まいする魔女よ』

 魔女という単語に疑問符を浮かべながらメイガスに対面して自己紹介しようとする。

『自己紹介はいらないわ。貴女のことを知っているわ、牧名譜織さん』
「えっと、じゃあ……あの黒いのは何なの?」
『あれはね……スマホの闇よ』

 青紫色の衣装を身に纏った円香ちゃんは衣装と同じ色の宝石が嵌め込まれた杖で闇を叩いている。形があるようには見えない闇を叩いて何の効果があるのだろうか。たまに青紫の光が瞬いている。

『スマホの闇というのは、スマートフォンを媒介に増幅された人間の負の感情が、そのスマホを核に現出したものです』

 ……スマートフォンにそんな力があるなんて。ん、光が一瞬だけ強まった。

「それを殲滅して平和を保つのが魔法少女たるわたしの役目よ」

 さっきの一際強い光でスマホの闇を祓ったのか、変身を解いて中学のセーラー服姿で円香ちゃんが言う。

「それでもね、スマホの闇の悪影響を受けない人がいるの。わたしや貴女、二つ折りケータイを持っている少女達よ」

 円香ちゃんのその語りに一つだけ疑問を抱いた。

「待って、たとえガラケーユーザーでも女の子じゃなかったら悪影響を受けるの?」

 その疑問にはメイガスが答えた。

『えぇ、スマホによる闇はユーザーだけでなく、悪意を向けられた人物や純粋に周囲にいる人にも悪影響を及ぼすわ。だから――』

 メイガスの言わんとすることが分かった。

「私や円香ちゃんみたいに、悪影響を受けない人物は珍しい……ていうことでしょ?」

 私の言葉に、メイガスは確かに頷いた。

『そう。だから貴女にも魔法少女になって欲しいの』
「ここから先はわたしから話すよ。戻って、メイガス」
【MG‐06E】が少しだけ光を増すとメイガスは姿を消した。
「魔法少女になるための資格は、この二つ折りケータイ。これで魔女との契約を結ぶの。譜織、わたしに手をかして。貴女の力が必要なの」
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