ガラケー魔法少女ふおり☆スピカ

楠富 つかさ

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4話

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 翌朝からは普通の授業が始まった。といっても、まだ導入の部分で難しい部分は少ない。給食の時間は円香ちゃんがいろいろなことを話してくれた。両親の都合でこっちに引っ越してきたとか、料理をするのが得意とか。料理の話題には私も参加できて、もっと円香ちゃんと仲良くなれた気がした。部活はどうするのかと聞いたら、私と同じ家庭科部に参加してくれると言ってくれた。

「今週はまだ活動しないんだ。新入生を集めて再来週くらいから活動かな」
「そうなんだぁ。分かった。他の家庭科部員は?」
「あはは……二年生は私だけなんだ。先輩も二人しかいなくって……頑張って勧誘しようね!」
「そ、そうね」


 あれから二週間。

「結局、新しい部員、来てくれなかったね」
「そうね……三年生の先輩に申し訳ないわ」

 夕日が差し込む家庭科室。私も円香ちゃんも先輩も、一生懸命に勧誘したけれど、新しい部員は家庭科部に入ってくれなかった。

「でも、譜織と二人きりというのも、悪くないわ」
「え!? え!?」
「うふふ、冗談よ」

 クールな瞳と微笑の組み合わせで言われる冗談は、ちょっと分かりにくい。

「ねえ円香ちゃん。最近の失踪事件のこと、知ってる?」
「ニュースで話題ね。現場にはいなくなった人のスマホだけが壊された状態で残されているっていう事件」

 最近になって増えているニュース、連続失踪事件として警察は動いているらしい。なんでも、失踪した人のスマホだけが現場にあって、周りの防犯カメラからも、忽然と消えたように映っているらしい。

「色んな世代の人が犠牲になっているから、気をつけないとね」
「そうね。気をつけて損はないわね」

 ちょっと思案顔にある円香ちゃん。思案顔というより、不安そうにも見える。

「ねえ円香ちゃん。一緒に帰ろう? 途中まででいいからさ」
「え、えぇ。でも、元宮さんだっけ? 彼女は?」
「今日は部活で一緒に帰れないって朝に聞いたから」
「じゃあ一緒に帰りましょうか」

 そう言って二人で家庭科室を出て昇降口へと向かう。

「あ、あーちゃんだ。部活頑張って!」

 部活の休憩時間で校舎に戻ってきたのだろうか、あーちゃんが走るための靴に履き替えている。

「おう、ふーじゃないか。気をつけて帰れよ。えっと、瀬戸だっけ? ふーのこと頼むよ」
「え、えぇ。大丈夫です」

 ちょっと噛み合わなかったあーちゃんと円香ちゃんのやり取りが終わると、あーちゃんは颯爽とグラウンドへと走っていった。2組の靴箱から移動して6組の靴箱で外履きに履き替える。

「もうすぐゴールデンウィークだね。円香ちゃんは何か用事ある?」
「……ないかな。今のところ」
「そっかぁ。一緒に出掛けられたらいいね」
「うん。そしたら、わたしも嬉しい」


 空は綺麗な夕焼け色、伸びた影だけが黒を見せる。そんな道での何気ない一歩が、私を……非日常へと誘った。

「ごめん、譜織。あなたの日常を崩してしまった……」
「どういうことなの、円香ちゃん!?」

 私たちの目の前には蠢く黒い何か。不意に、何かが割れる音がした。それはきっと、私の平穏なんだと思う。
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