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去年も同じクラスだった女の子たちと話しながら、始業式までの時間を過ごしていた。始業式は放送で行われ、生徒は全員席に着いて聞く。クラスを見渡してみると、一つだけ空席があった。私の席から右に二つのところだ。須藤さんと多井中君の間……。思い当たる苗字がない。誰だろう。そんなことを考えていたら、あっという間に始業式は終わっていった。もとから話が短いのが特徴な校長先生だから、式はいつも短く済まされる。放送による始業式が終わり、雑巾とか書類といった提出物の提出が済まされて、ほっと一息ついたタイミングで担任の先生が、静かにするよう指示を出し、クラスの引き戸を開けた。どこからか、まさかという声が聞えた。
「転校生を紹介する」
先生の一声でクラスが沸いた。転校生の性別を尋ねるお調子者の男子に、先生が女子だと答えたらクラス中の男子がソワソワし始めた。転入生の女子は美少女だと、どこかに鉄則があるのだろうか。でも、教室に入ってきた少女は、本当に息を呑むような美少女だった。大人びてクールな印象を与える切れ長の瞳には、堅い意志のようなものが見える。とはいえ、私たちと同級生の彼女、大人びた雰囲気こそ持つものの、背は私と大差ない小柄で肌は雪のように白い。黒板に自分の名前を書くためにチョークを持ったその手も、白くて小さい。
「自己紹介を頼むよ」
彼女が黒板に名前を書き終えたのを見て担任が投げやりに任せると、彼女が形のいい唇から凛とした声を響かせた。
「……瀬戸、瀬戸円香です。よろしくお願いします」
瀬戸円香と名乗った彼女は、クラスに残った空席を埋めた。確かに、出席番号順になっている。
「取り敢えず転入生も紹介したし、今日は解散!」
気だるげな担任の解散宣言によって、クラスの注目は一気に転入生へと向けられた。それでも私は、あーちゃんに会いたい心からすぐに荷物をまとめて帰ろうとしたのだが、
「ねぇ、瀬戸さんはどんなスマホ持ってるの?」
「いえ、私はガラケーユーザーなんです」
という会話に、少しだけ帰ろうという気持ちが揺らいだ。
「あ、ガラケーユーザーなんだ。ねぇねぇ牧名さん。お仲間だよ!」
「えっと、その、牧名譜織です。あの、機種名は?」
須藤さんに手招きされて会話の渦へと飛び込む。名乗るだけ名乗って、取り敢えず機種名を尋ねた。
「私のケータイは【MG‐06E】です。【MGシリーズ】の最後から二番目の機種ですね」
「そうなんですか!? 私は【SP‐07D】を使っているんです」
「へぇ、最後のガラケーの一種ですね。機能性に優れていると聞きます」
「いえいえ、でも【MG‐06E】って小さな手にもフィットするラウンドタイプでしたよね?」
「えぇそうなんです。持ちやすく落としにくいのが特徴なんです」
ガラケーの話題で盛り上がっていると、少しだけ周りから人が減っていった。話題のとっかかりを失って去っていくのだろうか。でも、ちょっとクールっぽい彼女がガラケー一つで、ここまで印象が変わるなんて。
「おーい、ふー!」
「あ、ごめんね。友達を待たせちゃってるの。また明日ね、瀬戸さん」
「うぅん。私のことは円香でいいよ。私も譜織って呼ぶから」
「ありがと! バイバイ、円香ちゃん!!」
円香ちゃんに手を振ってあーちゃんのもとへ向かうと、円香ちゃんも白くて小さな手を振り返してくれた。
「なんだか見覚えのない娘と仲良くなったね、ふーってば」
「あのね、転入生の瀬戸円香ちゃん。ガラケーユーザーなんだよ? クールっぽい感じもするけど、とっても話しやすかったんだぁ」
「……そっか。良かったじゃん。さぁ、帰ろう!」
「うん♪」
「転校生を紹介する」
先生の一声でクラスが沸いた。転校生の性別を尋ねるお調子者の男子に、先生が女子だと答えたらクラス中の男子がソワソワし始めた。転入生の女子は美少女だと、どこかに鉄則があるのだろうか。でも、教室に入ってきた少女は、本当に息を呑むような美少女だった。大人びてクールな印象を与える切れ長の瞳には、堅い意志のようなものが見える。とはいえ、私たちと同級生の彼女、大人びた雰囲気こそ持つものの、背は私と大差ない小柄で肌は雪のように白い。黒板に自分の名前を書くためにチョークを持ったその手も、白くて小さい。
「自己紹介を頼むよ」
彼女が黒板に名前を書き終えたのを見て担任が投げやりに任せると、彼女が形のいい唇から凛とした声を響かせた。
「……瀬戸、瀬戸円香です。よろしくお願いします」
瀬戸円香と名乗った彼女は、クラスに残った空席を埋めた。確かに、出席番号順になっている。
「取り敢えず転入生も紹介したし、今日は解散!」
気だるげな担任の解散宣言によって、クラスの注目は一気に転入生へと向けられた。それでも私は、あーちゃんに会いたい心からすぐに荷物をまとめて帰ろうとしたのだが、
「ねぇ、瀬戸さんはどんなスマホ持ってるの?」
「いえ、私はガラケーユーザーなんです」
という会話に、少しだけ帰ろうという気持ちが揺らいだ。
「あ、ガラケーユーザーなんだ。ねぇねぇ牧名さん。お仲間だよ!」
「えっと、その、牧名譜織です。あの、機種名は?」
須藤さんに手招きされて会話の渦へと飛び込む。名乗るだけ名乗って、取り敢えず機種名を尋ねた。
「私のケータイは【MG‐06E】です。【MGシリーズ】の最後から二番目の機種ですね」
「そうなんですか!? 私は【SP‐07D】を使っているんです」
「へぇ、最後のガラケーの一種ですね。機能性に優れていると聞きます」
「いえいえ、でも【MG‐06E】って小さな手にもフィットするラウンドタイプでしたよね?」
「えぇそうなんです。持ちやすく落としにくいのが特徴なんです」
ガラケーの話題で盛り上がっていると、少しだけ周りから人が減っていった。話題のとっかかりを失って去っていくのだろうか。でも、ちょっとクールっぽい彼女がガラケー一つで、ここまで印象が変わるなんて。
「おーい、ふー!」
「あ、ごめんね。友達を待たせちゃってるの。また明日ね、瀬戸さん」
「うぅん。私のことは円香でいいよ。私も譜織って呼ぶから」
「ありがと! バイバイ、円香ちゃん!!」
円香ちゃんに手を振ってあーちゃんのもとへ向かうと、円香ちゃんも白くて小さな手を振り返してくれた。
「なんだか見覚えのない娘と仲良くなったね、ふーってば」
「あのね、転入生の瀬戸円香ちゃん。ガラケーユーザーなんだよ? クールっぽい感じもするけど、とっても話しやすかったんだぁ」
「……そっか。良かったじゃん。さぁ、帰ろう!」
「うん♪」
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