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動乱への跳躍
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舞斗は、空間を漂う魔力の流れを感知する力を持っている。彼は今、全属性を操る橙色の魔力を視ていた。自身と同じ、あらゆる魔法を顕現させる波動を……。
「こちらに移動するものと、体育館へ移動したものか……」
彼がそう呟くと、屋上に続く扉が軋みを上げた。
「あ、えと……来ましたが」
長い黒髪を一つに結った少女――渡瀬綾音……極めて珍しい魔力特性を持つ人物。あまりの魔力に本人は気付いているのか。
「魔法の……練習をするんですよね?」
「あぁ。まずはその杖だが、扱えているか?」
綾音の持つ杖は錫杖と呼ばれるこの国の独自の形だ。先頭についた環が鳴らす音は、魔を祓い退けるとされている。実際のところはどうなのだろうか。今はそんなことより、魔法の基礎からだな。舞斗はそんなことを感じながら、目の前の少女が纏う力を観察する。
「魔力の流れは感じますが……杖って関係ありますか?」
綾音は、質問に質問を返してきた。それには気にせず、舞斗は行う訓練の内容を考えていた。
「……魔力を読むセンスはあるのか。自身の魔力を杖の先端部に動かせ」
綾音が杖を垂直に立てると、ほのかな橙色の光が巡るのが見てとれた。あらゆる属性の魔法を扱える証が橙色の魔力だ。
「見えた気がする……。これは、文章?」
魔力を構築し、術を発動する前に脳裏をよぎる文章……詠唱文と呼ばれるそれの意味を理解し解釈することで、初めて魔術は完成する。
「さて、どんな解釈になるやら」
彼が僅かに笑みを浮かべた直後、
「光の粒子よ魔を祓え、フォトン!!」
杖の先端部に集まっていた魔力は術者である綾音を包み、その色を白へと変えていった。光属性となった魔力が無数の粒となって一つの魔術となる。炸裂する光の粒子、舞斗の評価としては、難なくこなしている。といったところか。
「初めてにしては上出来だ」
彼が一言放った直後だった。体育館の方向から爆音が生じたのは。大型の魔物に侵入されたのが見てとれた。
「校舎内にしか結界を張らなかったせいか。かってに移動したのは誰だ……。って、橙のもう一人か。あとは……二人か。応戦できなくもない面子……否、厳しいか」
個人の持つ魔力の微妙な差異から、体育館にいるのが理紗と千夏と花音であることを瞬時に把握した彼は後方へ問いかける。
「渡瀬、体育館へ向かう。お前はどうする?」
「い、行きます!」
即答した彼女の姿勢は評価しつつも、若干の不安を感じた舞斗だったが、本人の意志を尊重することとした。そして、
「えっ……あ、何をするつもりですか? 下ろしてください!」
「暴れるなって。跳べないだろうが!」
綾音を小脇に抱える舞斗。そのまま一気に跳躍。
「舌を噛むなよ」
体育館で何が起きているのか、どこか楽しみにしているような彼の顔を綾音が困った顔で見ていた。
「こちらに移動するものと、体育館へ移動したものか……」
彼がそう呟くと、屋上に続く扉が軋みを上げた。
「あ、えと……来ましたが」
長い黒髪を一つに結った少女――渡瀬綾音……極めて珍しい魔力特性を持つ人物。あまりの魔力に本人は気付いているのか。
「魔法の……練習をするんですよね?」
「あぁ。まずはその杖だが、扱えているか?」
綾音の持つ杖は錫杖と呼ばれるこの国の独自の形だ。先頭についた環が鳴らす音は、魔を祓い退けるとされている。実際のところはどうなのだろうか。今はそんなことより、魔法の基礎からだな。舞斗はそんなことを感じながら、目の前の少女が纏う力を観察する。
「魔力の流れは感じますが……杖って関係ありますか?」
綾音は、質問に質問を返してきた。それには気にせず、舞斗は行う訓練の内容を考えていた。
「……魔力を読むセンスはあるのか。自身の魔力を杖の先端部に動かせ」
綾音が杖を垂直に立てると、ほのかな橙色の光が巡るのが見てとれた。あらゆる属性の魔法を扱える証が橙色の魔力だ。
「見えた気がする……。これは、文章?」
魔力を構築し、術を発動する前に脳裏をよぎる文章……詠唱文と呼ばれるそれの意味を理解し解釈することで、初めて魔術は完成する。
「さて、どんな解釈になるやら」
彼が僅かに笑みを浮かべた直後、
「光の粒子よ魔を祓え、フォトン!!」
杖の先端部に集まっていた魔力は術者である綾音を包み、その色を白へと変えていった。光属性となった魔力が無数の粒となって一つの魔術となる。炸裂する光の粒子、舞斗の評価としては、難なくこなしている。といったところか。
「初めてにしては上出来だ」
彼が一言放った直後だった。体育館の方向から爆音が生じたのは。大型の魔物に侵入されたのが見てとれた。
「校舎内にしか結界を張らなかったせいか。かってに移動したのは誰だ……。って、橙のもう一人か。あとは……二人か。応戦できなくもない面子……否、厳しいか」
個人の持つ魔力の微妙な差異から、体育館にいるのが理紗と千夏と花音であることを瞬時に把握した彼は後方へ問いかける。
「渡瀬、体育館へ向かう。お前はどうする?」
「い、行きます!」
即答した彼女の姿勢は評価しつつも、若干の不安を感じた舞斗だったが、本人の意志を尊重することとした。そして、
「えっ……あ、何をするつもりですか? 下ろしてください!」
「暴れるなって。跳べないだろうが!」
綾音を小脇に抱える舞斗。そのまま一気に跳躍。
「舌を噛むなよ」
体育館で何が起きているのか、どこか楽しみにしているような彼の顔を綾音が困った顔で見ていた。
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