剣の閃く天命の物語

楠富 つかさ

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刃が繋げる絆

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「龍牙の実力を測ってみたものの……まだまだかといったところか……。磨けば光る逸材なのだが、研磨に時間は惜しめないということか」

 舞斗が屋上の金網にもたれ考えをまとめていると、ドアが乱雑に開け放たれた。現れたのは祐也と瑛太だった。
 二人は龍牙が倒れているのを見るや否や叫んだ。

「おいっ! 龍牙に何しやがった!?」

 叫び声に全く動じることなく舞斗は二人を分析する。

「吉崎祐也は双剣士か、センスはある。ただし魔術は不可だな。加藤瑛太は、鎌士で魔術要素が最低限といったとこか」

 ふんふんと、一人で頷く舞斗に瑛太が驚いたように質問する。

「何を言っていたかは分からん。だが、どうして俺の名前だの武器の種類だの、知っているんだ!? お前は全員の前で自己紹介したが、こっちは違う。答えろ!」

 祐也は舞斗が武器や力の説明をしている時点で武器を生み出していた。だが、瑛太は違う。祐也が教室を離れる時に追いかけ、武器のことを話して、それから紫色の魔力から鎌を生み出したのだ。それを舞斗が知っているのはおかしい。現状、瑛太の武器を知っているのは本人を除けば祐也しかいないだから。瑛太が知りたいのは、つまりはそういうことである。

「俺を常人と一緒に考えられても困る。ゲームで例えよう。俺にはお前らのステータス画面が見える。だから名前も使用武器も分かる。そう思ってくれないか」
「落ち着けよ、瑛太。そんなことはどうでもいいだろう。自己紹介の手間が省けて楽なくらいだ。今は、龍牙に何をしたか聞かせてもらおうか?」

 瑛太を宥め、本来訊きたかった内容を祐也が尋ねた。

「龍牙には実力を測る意味を含めて実戦練習をした。それだけだ。なぁに、この武器で人を傷つけられないことは説明してあるじゃないか。さぁ、二人の力も見せてみろ!」

 舞斗は槍を構え二人との間合いをとる。

「くっ、行くぜ! 瑛太!」
「やってやろう、祐也!!」

 二人が一斉に駆け出す……。だが、ただの突進は舞斗にとっては単なる隙でしかない。

「空転槍!」

 舞斗はタイミングを見計い、跳躍と同時に勢いよく槍と共に縦回転する。祐也の背面に攻撃しつつ移動する。そして、次の攻撃の動作を始める。

「斬牙槍!!」

 舞斗が放ったのは、槍で一薙ぎした相手を踏み込んで突く技だ。突きによって祐也が後退するが、

「やられたままで……いられるか!! くらえっ」
「続くぜ、祐也!」

 再び駆け出す祐也の双剣が迫り来るのを避けると、瑛太の鎌の刃が間近に迫る。長い友情を感じる連携に、舞斗も流石に全てを避けるのは困難だと判断し、鎌の刃を槍の柄で受けながら毒づく。さらに、瑛太の背後で祐也は何かを閃いた様子だ。

「分かった! 喰らえっ双破斬!」

 今までの攻撃とは異なる力の籠った攻撃、祐也は遂に技の習得に成功したのだ。とはいえ、精度はまだまだ低いのか、舞斗は一撃で弾く。その刹那、

「やっと目が醒めたぜ。こういうことか、爪竜斬!」

 龍牙が振るった一撃が舞斗の背中を掠める。

「なっ……龍牙の気絶時間がここまで短いだと……。背後をとられるとは、俺もまだまだか。さすがに龍牙から一撃を受けるとは思ってもみなかたったな。回避できたのも幸運によるものが大きい。今回ばかりは俺の負けだな」

 舞斗が祐也、龍牙、瑛太の三人と話していると、舞斗が魔力の揺らぎを感じとった。

「おい龍牙、柵の向こう……どうなっている?」

 舞斗に尋ねられ、龍牙が柵の向こう――校庭のさらに奥に目を向ける。

「ありゃ何だ!? 魔物の大群か!?」

 学校の前にある大型の幹線道路、そこを我が物顔で歩く魔物の数々。学校に襲い掛かってくるのも時間の問題だろう。

「三人とも、少し待て。教室の連中がどう動くか、確かめさせてもらうぞ」
「おい、それって――」
「よせよ、瑛太。宗平や砦人、当真や正人がいるだろう? 対処できるさ」

 舞斗の発言の真意を問おうとする瑛太を、祐也が諌める。魔物の接近は、もう少し先になる。
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