上 下
1 / 4

妹の秘密

しおりを挟む
「お風呂入り――っ!!」

 私、反町柚葉が妹である夕菜の部屋に顔を覗かせた次の瞬間、私は全力でその扉を閉めていた。ベッドの上で妹は私の下着を嗅ぎながら恍惚とした表情を浮かべていたのだ。それはもう、ドン引きである。驚きを声に出すことすら叶わなかった。すぐに自分の部屋へと逃げ込み、事実の認識に時間を費やした。私の妹は中学二年生。黒目がちな眸は二重で、目元と鼻筋のバランスも整っていて、唇は少し薄め。愛くるしい雰囲気を持ちつつ、年齢相応に成長を感じさせる自慢の妹だ。そんな妹が……。溜息を吐く私の耳に、扉が開閉される音と階段を降りる足音が聞えた。私に気付いていない訳はないと思うが、どうやら先にお風呂へ入るようだ。まさか……。脳裏をよぎった考えが当たっていないことを祈りながら私も洗面所へ向かう。取り敢えず、歯でも磨いて落ち着きたいという気持ちもあって。だが、僅かな祈りは浴室から聞えてくる妹の妙に甘ったるいくぐもった声によって砕け散ることとなった。

「ん。あ――お姉、ちゃん……い、うぅ……はぁ。はぁ……」

 ダメだ……夕菜は私をオカズにオナニーしてる……。それはもう、揺るぎない事実だろう。妹も思春期。分かってる。性だとか、自分の体に興味を持つ年頃だ。自分だって一人でシたことがないわけじゃない。とはいえ、割り切れない気持ちだってあるのは事実だ。夢であればどれだけいいことか。確かに、夕菜はシスコンで、未だに同じベッドで寝ようとしたり、お揃いの小物を欲しがったり、お下がりの服を妙に大切にしたり……。取り敢えず、部屋に戻ろう。そうしよう。


「お姉ちゃん、大事な話があるの」
 夕菜がお風呂から上がり、二階へやってくると、その足音は真っ直ぐに私の部屋まで訪れた。扉越しに聞えてきた妹の声には初めて聴く覚悟を伴う声だった。私が部屋に通して、椅子に座るよう促すと、妹は思いの丈を私に告げた。

「私、お姉ちゃんが性的な意味で大好きなの。お姉ちゃんに見られた後にスるの、すごく気持ちよかった。……私、お姉ちゃんとエッチしたい」
「夕菜が私のこと、凄く好きだってことは分かってた。ねぇ、なんで私なの?」
「お姉ちゃんは昔から優しくて、温かくて……私の憧れなの。それに、同じシャンプーを使っているはずなのに髪を綺麗で、肌もすべすべ。美人だけど可愛くて、おっぱいも大きくて……。お姉ちゃんは夕菜のこと、嫌い? 嫌いになっちゃった?」

 ベッドに腰掛ける私に、夕菜は近づいて跪くように、私に縋るように、祈るように、私の眸をじっと見つめる。……妹のことは、妹として大好きだ。だからこそ、夕菜のためになる最良の答えをださないと。

「夕菜」
「はい!」

 私が呼びかけるだけで、肩を跳ね上げる夕菜。緊張しているのだろうか。

「私は夕菜のこと、妹としか思っていないよ。それに、女同士……しかも姉妹で愛し合うなんて……異常だよ」
「どうして異常なの? だって、一番近くにいる一番大事な人なんだよ? 愛したっていいでしょう?」
「姉妹で愛し合うなんて、遺伝子的に変なのよ。それに、女同士じゃ子供もできない。本能的におかしいんだって」

 私は絶対、間違ったことなんて言っていない。確かに、妹に彼氏ができて、エッチして、結婚して、甥か姪ができて……私は素直に喜べるだろうか。待て、自分。今、エッチと結婚の順番が逆だったぞ。それも大事だけど、妹の将来の幸せを考えれば私の涙なんていくらでも流そう。だから、夕菜を正しい道に進ませないと。

「お姉ちゃん……遺伝子も本能も……意志より優先なんてされない。私の心は全部、私のものなの。だから……」

 そう言って夕菜は私の肩に手をかけ、そのまま力を込めて押し倒した。

「今は……これで我慢する。でも、私の心も気持ちも絶対に変わらないから」

 近づく夕菜の顔と、耳朶を打つ夕菜の宣言。そっと触れた唇は熱を持ち、ふわりと甘い香を残して去っていった。

「おやすみ、お姉ちゃん」
「……夕菜。おやすみ」

 人生で初めてのキスだった。でも、こみ上げるこの気持ちはなんだろう。100パーセントの嬉しさではない。でも、その辺の男子にされるよりかは良かったのかもしれない。好きな男子なんていない私には尚更、ファーストキスの相手が妹というのは妥当なのかもしれない。

「明日から……普段通りに接するなんて出来るのかなぁ……」
ただそれだけが、不安でしょうがなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

3年振りに帰ってきた地元で幼馴染が女の子とエッチしていた

ねんごろ
恋愛
3年ぶりに帰ってきた地元は、何かが違っていた。 俺が変わったのか…… 地元が変わったのか…… 主人公は倒錯した日常を過ごすことになる。 ※他Web小説サイトで連載していた作品です

普段は厳しい先輩が、忘年会で酔っちゃって後輩にお持ち帰りされる百合

風見 源一郎
恋愛
教育係の工藤春香にいつも怒られてばかりの姫嶋桜子。厳しく指導されて、それでも想いは隠しきれない。年の瀬を迎え、忘年会が開かれたその日。酔った春香を送ろうとしていた桜子は、不意打ち気味に抱きつかれた衝撃に耐えることができず、自宅へとお持ち帰りしてしまう。

私を振ったあの子をレズ風俗で指名してみた。

楠富 つかさ
恋愛
 女子大生、長谷部希は同級生の中原愛海に振られ、そのショックをサークルの先輩に打ち明けると、その先輩からレズ風俗に行くことを勧められる。  希は先輩に言われるがまま愛海の特徴を伝えると、先輩はこの嬢がいいのではと見せてきたその画面にいのは……中原愛海その人だった。  同級生二人がキャストとゲストとして過ごす時間……。

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

【R18】無口な百合は今日も放課後弄ばれる

Yuki
恋愛
※性的表現が苦手な方はお控えください。 金曜日の放課後――それは百合にとって試練の時間。 金曜日の放課後――それは末樹と未久にとって幸せの時間。 3人しかいない教室。 百合の細腕は頭部で捕まれバンザイの状態で固定される。 がら空きとなった腋を末樹の10本の指が蠢く。 無防備の耳を未久の暖かい吐息が這う。 百合は顔を歪ませ紅らめただ声を押し殺す……。 女子高生と女子高生が女子高生で遊ぶ悪戯ストーリー。

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

連続寸止めで、イキたくて泣かされちゃう女の子のお話

まゆら
恋愛
投稿を閲覧いただき、ありがとうございます(*ˊᵕˋ*)   「一日中、イかされちゃうのと、イケないままと、どっちが良い?」 久しぶりの恋人とのお休みに、食事中も映画を見ている時も、ずっと気持ち良くされちゃう女の子のお話です。

君の浮気にはエロいお仕置きで済ませてあげるよ

サドラ
恋愛
浮気された主人公。主人公の彼女は学校の先輩と浮気したのだ。許せない主人公は、彼女にお仕置きすることを思いつく。

処理中です...