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光と闇のバトル 前編
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土曜日、余は海ヶ谷を越え汐見市にある実家まで帰ってきた。ウィッチ&サーバンツ、WSのデッキを取りに戻ってきたのだ。トレーディングカードゲームとして世に現われて既に四年、数千種類のカードが発売されている。ウィッチと呼ばれるプレーヤーの化身と、サーバンツと呼ばれる女の子たちを配して、さらにアクションやステージと呼ばれるサポートカードを駆使してお互いのプレーヤーが持つPPと呼ばれる五千あるポイントを削り合う。美麗なイラストと奥深いルールが人気のゲーム……一年以上カードを買い足していないから、仮に先輩が最新のカードでデッキを構築していたとしたら太刀打ちできないだろう。
デッキを持ち出してすぐ在来線の汐見駅前にあるデパートにあるカードショップに入った。女子中学生がそうそう出入りするお店ではないが、決闘を申し込まれた以上は負けられない。それに夢の中での敗北、その雪辱を果たすチャンスなのだ。
ウィッチやサーバントには地水火風光闇の六属性に加えて、部活や委員会など個性というものが割り振られている。WSは地球を含む様々な世界から門を通じてやってきたサーバントの少女達が、門を維持するために異能を用いて舞台となる学園で模擬戦をしながら互いを高め合うという背景ストーリーがある。
最新のブースターパックから余のデッキにも使える光属性で地球出身のサーバントをピックアップし、彼女をサポートできるカードも集めていく。最終的には単品購入もしつつ、デッキのアップデートは完了した。
「あの、対戦いいですか?」
完成したデッキを手癖でシャッフルしていると、女子高生風の客に声をかけられた。手にはウィッチのカードが。実戦感覚も取り戻したかった余は頷いた。
「わたし、桐花って言います」
「……世音」
WSが出来るのが嬉しいのか、やたらテンションが高い桐花。子供っぽい態度のわりに美人でスタイルもいい……少しムカつく。
WSは概ね次のような流れで進む。
1.ドローフェイズ(先攻一ターン目以外は二枚ドローし、ストックに一枚置く)
2.エクシードフェイズ(ウィッチが条件を満たしている時、ウィッチを進化させる)
3.メインフェイズ(サーバントの登場やアクションの発動を行う)
4.アタックフェイズ(ウィッチやサーバントで相手を攻撃する)
5.エンドフェイズ(ストックを裏に戻しターンの終了を宣言する)
この一年でルールは変わっていない。先攻になった余は手札五枚を引くとプレイマットに、サーバントの登場やアクションの発動に使うコストとなるストックを一枚セットする。メインデッキからカードを一枚引き、メインとは別のウィッチデッキからレベル2のウィッチをレベル1のそれに重ねる。大きめのカードが手に馴染む。
先攻から着実にダメージを与えていったが……。
「負けました」
負けたのは余の方だった。見知らぬカードを相手にプレイングミスが多々あったというのもあるが、カードパワーの違いを実感させられた。
「このカードが多分、君のデッキに相性いいと思うよ。よければ使って」
「……いいの?」
「今日遊んでくれたお礼。お姉さんだし、それくらいさせてよ」
高レアリティのカードを三枚、余に託して桐花は去って行った。翌年、ひょんなことから再会するのだがそれはまた別の話。
デッキを持ち出してすぐ在来線の汐見駅前にあるデパートにあるカードショップに入った。女子中学生がそうそう出入りするお店ではないが、決闘を申し込まれた以上は負けられない。それに夢の中での敗北、その雪辱を果たすチャンスなのだ。
ウィッチやサーバントには地水火風光闇の六属性に加えて、部活や委員会など個性というものが割り振られている。WSは地球を含む様々な世界から門を通じてやってきたサーバントの少女達が、門を維持するために異能を用いて舞台となる学園で模擬戦をしながら互いを高め合うという背景ストーリーがある。
最新のブースターパックから余のデッキにも使える光属性で地球出身のサーバントをピックアップし、彼女をサポートできるカードも集めていく。最終的には単品購入もしつつ、デッキのアップデートは完了した。
「あの、対戦いいですか?」
完成したデッキを手癖でシャッフルしていると、女子高生風の客に声をかけられた。手にはウィッチのカードが。実戦感覚も取り戻したかった余は頷いた。
「わたし、桐花って言います」
「……世音」
WSが出来るのが嬉しいのか、やたらテンションが高い桐花。子供っぽい態度のわりに美人でスタイルもいい……少しムカつく。
WSは概ね次のような流れで進む。
1.ドローフェイズ(先攻一ターン目以外は二枚ドローし、ストックに一枚置く)
2.エクシードフェイズ(ウィッチが条件を満たしている時、ウィッチを進化させる)
3.メインフェイズ(サーバントの登場やアクションの発動を行う)
4.アタックフェイズ(ウィッチやサーバントで相手を攻撃する)
5.エンドフェイズ(ストックを裏に戻しターンの終了を宣言する)
この一年でルールは変わっていない。先攻になった余は手札五枚を引くとプレイマットに、サーバントの登場やアクションの発動に使うコストとなるストックを一枚セットする。メインデッキからカードを一枚引き、メインとは別のウィッチデッキからレベル2のウィッチをレベル1のそれに重ねる。大きめのカードが手に馴染む。
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「今日遊んでくれたお礼。お姉さんだし、それくらいさせてよ」
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