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翌日、外でお昼を食べていたものの、美月さんはやってこなかった。まぁ、約束していたわけじゃないから仕方ないけれど……どう過ごしていたのか気になってしまう。
「うーん……放課後聞いてみようかな」
「おやおや~星野さんじゃないですか」
食べ終わったお弁当を片付けながらぽつりと口にした呟きに反応したのは、同級生の渡辺乃愛ちゃんだった。同級生で寮も一緒からそれなりに話したことがある。
「悩みごとかな?」
渡辺さんは飄々とした雰囲気だけど、けっこう話をよく聞いてくれる人。すらっとした長身を折って私に目を合わせてくれる。
「わ、渡辺さんはもう新しいクラスに馴染んでる?」
「うーん、どうかな? 私、人とはある程度の距離は保ちたい方だからさ。で、星野さんは馴染んでないのかな?」
……見透かされている。まあ、そんな質問したら分かるよね。馴染んでいるか馴染んでいないかで言えば、まだ馴染めていない。仲谷さんと仁井谷さんはいい人だし、栗橋さん、砂塚さん、木佐貫さん、宇塚さん、まだちょっとしか話せてないけどみんないい人だ。それに……美月さん。
「わ、私……仲良くなりたい人がいるんです。でも……どうしていいか分からなくて」
「ふーん、じゃあ、その仲良くなりたい人ともう仲がいい人に質問してみたら? ヒントになるんじゃない」
「な、なるほど……。ありがとうございます。が、頑張ってみます!!」
私は渡辺さんにお礼を言って教室を目指した。美月さんがいたらベストだけど、まだ教室にはいなかった。でも……いた!
「た、田吹さん……」
「誰だ?」
私が声をかけたのは田吹乱歩さん。美月さんがブッキーの愛称で呼んでいるクラスメイトで、一見おとなしそうなんだけど髪に隠れた耳にピアスが光っているのを見てしまったことがある。たまに授業に出ない時もあるし、話しかけるのはけっこう勇気がいる。
「み、美月さんがどこにいるか聞きたくて」
「僕は知らない。もうじき昼休みも終わるし、帰ってくるんじゃない」
「そ、そうだよね……ありがと」
やっぱり自分から話しかけるって勇気がいるなあ。でも、ちゃんと答えてくれてよかった。無視されたらどうしようってけっこう不安だったし。
「星野さん」
仲谷さんに声をかけられて席に近づく。どうやら私と田吹さんが話しているのが意外だったらしく、気になったみたいだ。私はここ最近、美月さんと話す機会が増えてきてもっと仲良くなりたいという話を伝えた。
「そう、ちゃんと打ち解け始めているのね。良かったわ」
「……ありがとう仲谷さん。なんか、お姉さんみたい」
クラス委員だからってだけじゃないんだろうけど、この優しさというか気配りというか。いつかちゃんとお礼ができたらいいな。
「まぁ、友達は大切にするべきだもの。ねぇ、美夜」
「うん。志保ちゃんのこと、一生大切にするからね」
濃密なオーラを放つ二人から離れて自分の席に戻る。……そろそろ予鈴が鳴るけど、美月さん戻ってこないなあ。
「うーん……放課後聞いてみようかな」
「おやおや~星野さんじゃないですか」
食べ終わったお弁当を片付けながらぽつりと口にした呟きに反応したのは、同級生の渡辺乃愛ちゃんだった。同級生で寮も一緒からそれなりに話したことがある。
「悩みごとかな?」
渡辺さんは飄々とした雰囲気だけど、けっこう話をよく聞いてくれる人。すらっとした長身を折って私に目を合わせてくれる。
「わ、渡辺さんはもう新しいクラスに馴染んでる?」
「うーん、どうかな? 私、人とはある程度の距離は保ちたい方だからさ。で、星野さんは馴染んでないのかな?」
……見透かされている。まあ、そんな質問したら分かるよね。馴染んでいるか馴染んでいないかで言えば、まだ馴染めていない。仲谷さんと仁井谷さんはいい人だし、栗橋さん、砂塚さん、木佐貫さん、宇塚さん、まだちょっとしか話せてないけどみんないい人だ。それに……美月さん。
「わ、私……仲良くなりたい人がいるんです。でも……どうしていいか分からなくて」
「ふーん、じゃあ、その仲良くなりたい人ともう仲がいい人に質問してみたら? ヒントになるんじゃない」
「な、なるほど……。ありがとうございます。が、頑張ってみます!!」
私は渡辺さんにお礼を言って教室を目指した。美月さんがいたらベストだけど、まだ教室にはいなかった。でも……いた!
「た、田吹さん……」
「誰だ?」
私が声をかけたのは田吹乱歩さん。美月さんがブッキーの愛称で呼んでいるクラスメイトで、一見おとなしそうなんだけど髪に隠れた耳にピアスが光っているのを見てしまったことがある。たまに授業に出ない時もあるし、話しかけるのはけっこう勇気がいる。
「み、美月さんがどこにいるか聞きたくて」
「僕は知らない。もうじき昼休みも終わるし、帰ってくるんじゃない」
「そ、そうだよね……ありがと」
やっぱり自分から話しかけるって勇気がいるなあ。でも、ちゃんと答えてくれてよかった。無視されたらどうしようってけっこう不安だったし。
「星野さん」
仲谷さんに声をかけられて席に近づく。どうやら私と田吹さんが話しているのが意外だったらしく、気になったみたいだ。私はここ最近、美月さんと話す機会が増えてきてもっと仲良くなりたいという話を伝えた。
「そう、ちゃんと打ち解け始めているのね。良かったわ」
「……ありがとう仲谷さん。なんか、お姉さんみたい」
クラス委員だからってだけじゃないんだろうけど、この優しさというか気配りというか。いつかちゃんとお礼ができたらいいな。
「まぁ、友達は大切にするべきだもの。ねぇ、美夜」
「うん。志保ちゃんのこと、一生大切にするからね」
濃密なオーラを放つ二人から離れて自分の席に戻る。……そろそろ予鈴が鳴るけど、美月さん戻ってこないなあ。
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