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第7話

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「じゃあ、初めての依頼達成を祝して、かんぱ~い」

 その日の夜、ルーナ、ゴーシュ、ドロワは街の食堂で食事に舌鼓を打っていた。
「ゴーシュもドロワもとても強いんですね。驚きました」
「まぁ、ルーナのあの魔法には驚かされたけど」

 光の玉を生み出してそれを魔物にぶつけるフォトンという魔法は、教導会で習う魔法の中でも初級なのだが、ルーナの並外れた魔力量そしてそれを繊細にコントロールできないルーナの実力によって、常に暴発といっていいほどの威力をたたき出す。

「でも、あれだけの魔力があるから治癒術もすごいのよね?」
「それは……そうかもしれないですね」
「やたらめったらキスされるのは困るけど、まぁ……えっと、頼りにしてるわ」

 唇を奪われたドロワは少し複雑な表情を浮かべる。

「そういえば、ゴーシュとドロワはどうして冒険者に? なったばかりって言ってたよね」
「ん~、そうねぇ」

 ルーナの問いにドロワは腕を組んで考え込む。

「まぁ、ずっと二人でいるために、かな」
「それはあるかも。冒険者って危ないことも当然あるけど、それ以上に自由だものね」

 ゴーシュとドロワが互いを思いやるように視線を交わす。食事中の二人の所作を見ながら、ルーナはある確信を二人にぶつける。

「二人とも、実は貴族の娘だったりしない?」
「「っ!!」」

 ルーナの指摘に、ゴーシュとドロワは驚きの表情を浮かべる。その反応だけで、ルーナは二人の出自が貴族であることを確信した。

「どうしてそう思うの?」

 ドロワが探るように尋ねる。

「えっと……まず、ゴーシュの剣技ですけど、それは騎士の剣技です」
「騎士って……もし騎士の剣技だとしてもどうしてルーナに分かるのよ」
「教会の衛兵は騎士から剣技を教わります。衛兵の訓練を見る機会もありますし、何なら教導会でも希望すれば剣技を習うことができます。だから、少しだけですが騎士の剣技は見ればわかります。ドロワは少し我流が入ってそうですけど」

 ルーナの観察眼に二人とも黙る。剣技の腕だけで言えばゴーシュとドロワならゴーシュの方が勝っている。基本に忠実で真面目に練習してきたゴーシュと、練習を多少力を抜いていたドロワの差である。

「それに、食事の作法も綺麗です。その辺の町娘とは違いますね。あと――」
「まだあるの?」
「はい。そのたわわなおっぱいです」
「「……うーん」」

 ゴーシュとドロワは食事の手を止め、自分の胸元に視線を落とす。というか、脱力していた。

「なんだそれ」
「私たちが貴族だったことは否定しないけど、そんな理由で分かるものなのかなぁ」

 ゴーシュとドロワは確かに貴族の家に生まれたが、側室のしかも四女と五女だ。貴族として最低限のマナーや立ち居振る舞いを習ったが、それに剣技を習ったのも貴族令嬢としてというより、冒険者として独り立ちできるように習ったものだ。

「まぁ、家との縁は希薄だからさ。あんまり気にしないで」
「良かったです。貴族のお嬢様の唇を奪ったと知られたら、切り捨てられてもおかしくないですから」

 ルーナの笑顔は心からのものだと分かり、ゴーシュとドロワも相好を崩すのだった。
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