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友達3人 薬屋に行ってみよう
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戦闘訓練のはずが盗賊の追い払いをした日から一夜明け、臨時収入を得た私たちは本格的な冒険の準備をすることにした。
これまで受けた依頼は街中でできる簡単なものや、けがの心配がないくらい弱くて対処法が分かり切っている魔物の討伐くらいだった。それには理由があって、回復役であるスギラがいなかったからだ。スギラは治癒魔法が使えるから、これから先、多少の被ダメージがあっても冒険を続行できる。
「ポーションを買おう!」
「そうですね」
回復アイテムと言えばポーション。駆け出し冒険者にとっては命の次に大事なものと言っても過言ではないだろう。この世界では錬金術があるということで、調合されたポーションは効果によって金額もピンキリ。流石に高級なポーションを買うつもりはないが、想定外のダメージを負った時に冷静に対処できるようポーションを持っておくのは大切だ。
それにスギラが治癒魔法を使えるからといって、スギラ自身がダメージを負った時に他の回復手段があると安心感も段違いだからね。
「で、ポーションってどこで買えるんですか?」
スギラの疑問はごもっとも。ポーションが売っているお店といえば……。
「それなら、薬屋さんですね」
朝食後の食堂での会話ということもあり、メリッサさんが教えてくれた。錬金術によってつくられた道具である以上、売買には専門の免許がいるということだ。またポーションを入れるガラス瓶がそもそも高級品ということもあり、使ったガラス瓶を再利用するためにも、買えるお店は限定されているらしい。異世界でリサイクルではないがリユースの概念があるなんて、環境にやさしいというかお財布に優しいね。下級といえど400マイラほどするらしい。半分がガラス瓶の価格ということで、持ち込めば200マイラで買えるらしいが。一人一本持とうとしたら、初期投資として結局昨日の臨時収入を全て吐き出してしまう。
「いざって時のためだからね、これは必要な出費だと考えよう」
「確かに。回復手段があると思えばこれまで以上に戦闘系の依頼も受けやすくなるし」
ということで、全会一致で臨時収入の使い道が決定し、私たちはメリッサさんに教えてもらった薬屋さんへ向かうことにした。
「って、なんだ。ギルドのすぐ近くじゃん」
まぁ、ポーションを最も必要とするのが冒険者であることを考えれば当然なのかもしれないが。
「こんにちは~」
ドアを開けるとカランコロンとドアベルが鳴る。店の中は意外と広く、棚が壁に陳列されている。そこにはさまざまな薬瓶があり、素人目では違いがよくわからない。
「いらっしゃい」
カウンターの奥から店主らしき女性が出てきた。店の制服だろうか? 白衣を着ている。
「ポーション買いに来ました」
「はい分かった。少し待っていてくれたまえ」
サファイアが言うと、店主の女性はにっこりと笑ってカウンターを出て店の裏に消えていった。
接客する人としての言葉遣いとしては首を傾げたくなるが、あまりに堂々としたその態度に、そういうものなのだろうかと思わされるものがった。きっと店主とはそういうものなのだろう。
三十秒ほどで、彼女は試験管のような細いガラス瓶を持って戻ってきた。店主はこれまた理科室にありそうな、試験管立てのような木工品にガラス瓶を四本立てる。
なみなみと注がれた液体の色は淡い緑。メロンソーダより薄い、ぼんやりとした緑色だ。
「これは下級ポーション。君たちみたいな冒険初心者には一本だけ無料で配布している代物だ」
「え、一本は無料なんですか?」
「そうさ。冒険者は大事なお客さんだ。死んでしまっては意味がない。それに、長生きしてより高価なポーションを買ってもらった方が最終的な利益は大きい」
なるほど、一本無料で配布して冒険者の生存率を上げつつ、かつ利益を最大化するのが狙いか。店主の言うことももっともだ。
「君たちは四人チームかい? なら、無料の一本と有料の三本で1500マイラだが、どうする?」
「か、買います」
コルクのような蓋がされたポーションの瓶をバッグに入れるふりをしながらストレージにしまう。このストレージに収納されたものはみんなにも共有されているから、いつでも使える。
「ありがとうございます」
「また来てくれたまえ」
愛想がいいのかそうでないのか分からない不思議な店主に見送られながら薬屋を後にした。
これまで受けた依頼は街中でできる簡単なものや、けがの心配がないくらい弱くて対処法が分かり切っている魔物の討伐くらいだった。それには理由があって、回復役であるスギラがいなかったからだ。スギラは治癒魔法が使えるから、これから先、多少の被ダメージがあっても冒険を続行できる。
「ポーションを買おう!」
「そうですね」
回復アイテムと言えばポーション。駆け出し冒険者にとっては命の次に大事なものと言っても過言ではないだろう。この世界では錬金術があるということで、調合されたポーションは効果によって金額もピンキリ。流石に高級なポーションを買うつもりはないが、想定外のダメージを負った時に冷静に対処できるようポーションを持っておくのは大切だ。
それにスギラが治癒魔法を使えるからといって、スギラ自身がダメージを負った時に他の回復手段があると安心感も段違いだからね。
「で、ポーションってどこで買えるんですか?」
スギラの疑問はごもっとも。ポーションが売っているお店といえば……。
「それなら、薬屋さんですね」
朝食後の食堂での会話ということもあり、メリッサさんが教えてくれた。錬金術によってつくられた道具である以上、売買には専門の免許がいるということだ。またポーションを入れるガラス瓶がそもそも高級品ということもあり、使ったガラス瓶を再利用するためにも、買えるお店は限定されているらしい。異世界でリサイクルではないがリユースの概念があるなんて、環境にやさしいというかお財布に優しいね。下級といえど400マイラほどするらしい。半分がガラス瓶の価格ということで、持ち込めば200マイラで買えるらしいが。一人一本持とうとしたら、初期投資として結局昨日の臨時収入を全て吐き出してしまう。
「いざって時のためだからね、これは必要な出費だと考えよう」
「確かに。回復手段があると思えばこれまで以上に戦闘系の依頼も受けやすくなるし」
ということで、全会一致で臨時収入の使い道が決定し、私たちはメリッサさんに教えてもらった薬屋さんへ向かうことにした。
「って、なんだ。ギルドのすぐ近くじゃん」
まぁ、ポーションを最も必要とするのが冒険者であることを考えれば当然なのかもしれないが。
「こんにちは~」
ドアを開けるとカランコロンとドアベルが鳴る。店の中は意外と広く、棚が壁に陳列されている。そこにはさまざまな薬瓶があり、素人目では違いがよくわからない。
「いらっしゃい」
カウンターの奥から店主らしき女性が出てきた。店の制服だろうか? 白衣を着ている。
「ポーション買いに来ました」
「はい分かった。少し待っていてくれたまえ」
サファイアが言うと、店主の女性はにっこりと笑ってカウンターを出て店の裏に消えていった。
接客する人としての言葉遣いとしては首を傾げたくなるが、あまりに堂々としたその態度に、そういうものなのだろうかと思わされるものがった。きっと店主とはそういうものなのだろう。
三十秒ほどで、彼女は試験管のような細いガラス瓶を持って戻ってきた。店主はこれまた理科室にありそうな、試験管立てのような木工品にガラス瓶を四本立てる。
なみなみと注がれた液体の色は淡い緑。メロンソーダより薄い、ぼんやりとした緑色だ。
「これは下級ポーション。君たちみたいな冒険初心者には一本だけ無料で配布している代物だ」
「え、一本は無料なんですか?」
「そうさ。冒険者は大事なお客さんだ。死んでしまっては意味がない。それに、長生きしてより高価なポーションを買ってもらった方が最終的な利益は大きい」
なるほど、一本無料で配布して冒険者の生存率を上げつつ、かつ利益を最大化するのが狙いか。店主の言うことももっともだ。
「君たちは四人チームかい? なら、無料の一本と有料の三本で1500マイラだが、どうする?」
「か、買います」
コルクのような蓋がされたポーションの瓶をバッグに入れるふりをしながらストレージにしまう。このストレージに収納されたものはみんなにも共有されているから、いつでも使える。
「ありがとうございます」
「また来てくれたまえ」
愛想がいいのかそうでないのか分からない不思議な店主に見送られながら薬屋を後にした。
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