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第二十三話 お風呂

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「つ、着いたよぉ……」

 森を抜けて歩くこと三日。ようやく聖都アリジャスに辿り着くことが出来た。危うく途中で食料が底をつくところだった。

「まずは、宿でゆっくりしたいです……」
「……ですね」
「だらしないなぁ。ったく。そう思わないか、ニーナ」
「流石に、私も辛いですよ……?」

 ステラ以外は満身創痍な体で宿屋を目指す。お風呂にも入りたいし……。

「宿は、こっちよ……」

 アリジャスに土地勘のない私たちは、ニーナの案内で宿屋へ辿り着くことが出来た。諸々の手続きを済ませ、二部屋取った私たちはすぐに浴場へ向かった。

「久々のお風呂……」

 桶で掬ったお湯をかけ、浴槽へ脚を伸ばす。やや熱いお湯が全身に染み渡る感覚……。あぁ、この世界にお風呂があってよかったぁ。

「取り敢えず、お風呂に浸かりながらでいいので、これからの計画を立てましょう」

 レリエの言うとおり、これからどうするかを決めないと。聖都っていうくらいだし、それに宿までの道を見ても、やはりこの町には教会が多い。

「シスターの多くは回復魔術を行使できますので、シスターを仲間に加えることを目的にしましょう」
「あとは、あれだな。洞窟の時も話があったが、前衛が出来るやつ」

 ステラが言うことももっともだ。このパーティはランサーの私、メイサーのクレア、短剣士のステラ、魔術師のレリエとニーナというパーティ……私の槍が未熟なので剣士とか戦士に加わって欲しい。でも回復要員も必要だろう。この先、何があるか分かったものじゃないし。でも前衛が出来る回復要員……というかシスターなんて見つかる確立は非常に低いだろう。つまり、二人加える必要があるのかぁ。

「大所帯になるねぇ」
「暢気だな、おい。二人加えて七人だぞ、生活費や武器のメンテ代……レリエ、大丈夫なのか?」
「資金は潤沢ですが……」
「金銭面は……私に任せて。魔物素材を売却したり、いくつか仕事をこなしたりすれば大丈夫だと思う」

 レリエは節約という点では大丈夫だけど、市場での相場を知らないこともあるので、クレアの存在はありがたい。

「私に出来るのは……やっぱりユールちゃんに炎魔法を教えることかしら?」

 豊満なバストの下で腕を組み、思案顔を浮かべるニーナ。思わずキスしちゃう。

「む、ちゅ……ん、ふぅ」

 丁度勇者の力も発揮され、身体の中が興奮とは別に熱くなる。火の力が強まっている、ということか。

「お姉ちゃん、私からも……受け取って……んじゅ、んちゅぅぅ……ん!」

 最近、回数が減っているからかレリエのキスがどんどん情熱的になっている。お風呂の中なのに、あれこれ我慢できなくなっちゃいそう。

「お前ら、いい加減にしとけ! 他の客が来たらどうすんだよ!」

 流石に過激すぎたのか、ステラにお湯をかけられ中断。他のお客さんが来たら……。

「見せ付けちゃう?」
「バカ!!」

 あぅぅ、ステラの手刀が脳天に直撃だよ……。

「反省したか?」

 手刀を構えながら言うステラに、ただただ頷く私であった。
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