その口づけに魔法をかけて

楠富 つかさ

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#11 前哨戦

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 気付けばあっという間に時間は過ぎていって、新人戦の開幕直前の金曜日となった。今日はコンビでの戦闘に慣れるための実践授業になった。新人戦のペアを決められなかったコンビは、学校からランダムに指名されてコンビを組むらしい。まぁ、即席のコンビで連携ができる方がコミュニケーション能力も含めて、できた方がよいのかもしれないけれど。

「相手は同じ四組だけど少しは格上、油断せずにやろう」
「そうだね。確か大宮君と相澤さんのコンビだっけ。男女ペアだけど即席じゃなくて正式に結成されたコンビらしいよ」
「……うーん、結成の経緯はどうでもいいかな。男女の仲かもしれないとか、そういう話はもっといらない。どんな戦い方かは……流石にデータないわよね」

 大宮隆信と相澤秀……序列で言えば大宮は七十八位で相澤は八十位だ。私たちが九十九と百なんだから、どれだけの実力差があるのか量る指標になりえるだろう。

「戦術のデータならすこーしだけあるよ。大宮君が氷属性の魔術を駆使した近接戦特化で、相澤さんが水属性の魔術で遠距離から攻撃してくるって」
「なるほど。データあるのね。……うーん、炎や風の魔術を主軸に戦うのがいいかもしれないわね」

 作戦会議をしつつも私の寿奈は手のひらと手のひらを重ね合わせている。流石に人前でキスやら粘膜接触をするわけにもいかず、考えて考えた結果、手のひらを重ねることで落ち着いた。手先には毛細血管が多く走っていることから、魔力のパスとして成り立つのではないかという仮定のもと、一昨日くらいから試した結果、粘膜接触には劣るが魔力の受け渡しが成り立つと分かった。

「さて……やるか」
「お手柔らかにね」
「まぁ、胸を借りるつもりでやらせてもらおうかしら」
「えっと、よろしくお願いします!」

 寿奈から聞いていた通り、大宮が前衛、相澤が後衛といった配置につく。逆に私たちは寿奈が前衛で私が後衛といった配置だ。
 魔術で発生させた氷が光を反射するものだから、より後衛から発射される水の弾丸が視認しづらい。このコンビネーションを組んで数日で形にするとは、流石に四組の中では実力者ってところだろう。風の魔術を防御に使いながら、炎の魔術で反撃していく。寿奈からもらった魔力のおかげで、簡単な術ならいくらでも続けて出せそうな感覚になっている。研ぎ澄まされていく感覚の中で、相手が放つ水の弾丸に自らが放つ火球をぶつけていく。次第に水蒸気が霧のように立ち込める中、寿奈がしかける。

「せりゃあ!!!」

 放った魔術自体は簡単な土魔術。相手の足元に突起を出現させて転倒させるくらいのもの。しかし、そこに寿奈の柔術が加わると、よろけた相手の懐に入って担ぐくらいは造作もない。あっという間に大宮が投げ飛ばされる。名前に反してさほど大男といった体格ではないからこその、寿奈による豪快な一本背負いだ。

「炎よ! 収束!!」

 すかさず私が火球を相澤目掛けて放つ。大宮という壁がなくなり隙だらけな彼女を狙うのはたやすく、模擬戦は私と寿奈のコンビが勝利した。

「やったね!」
「ふふ、そうね」

 大技もほどほどに温存しての勝利だ。新人戦、どこまで勝ち上がれるか少しだけ期待感が高まる私と寿奈だった。
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