その口づけに魔法をかけて

楠富 つかさ

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#8 インプット・アウトプット

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「あの~綾乃ちゃん?」
「なにかしら?」

 二人でシャワーを浴び、拭くだけ拭いて何も着ずにベッドに入る。寿奈に覆いかぶさるようにしながら、唇をむさぼる。

「キスするのはいいんだけど……どうしておっぱいを揉むのかな?」

 キスは魔力の受け取りっていう名目があるけれど、寿奈の胸を揉んでしまっているのは完全に……。

「ちょうどいい場所にあるから、かな。ひょっとして、えっちな気分になっちゃう?」
「うーん……どっちかって言うと、実家にいた猫を思い出す、かも。私が仰向けで寝てると、よく踏みに来るんです」

 このシチュエーションでネコと言えば、貴女なのだけれど……なんて考えが脳裏をよぎったけど、ややこしいだけだから黙っておく。取り敢えず嫌がっているわけでも恥ずかしがっているわけでもないようなので、揉みながら再びキスを交わす。

「綾乃ちゃん、熱い……」

 魔力の高まりを身体の発熱とともに感じ、一度上体を起こす。寿奈に跨る体勢になると、より淫らな感じがしてしまうが、そんな雑念をなんとか振り払って、指先から風を起こす。火や水の魔法と違って、屋内で使っても安全なのが風なのだが……。

「おぉ……すごい」
「扇風機より強いね」

 普段の少ない魔力なら指先一本からしか出せない風が、より強い風量で両手の指全てから出ている。しかも少し力をいれて念じれば、一つずつ風量や風向を変えられるし、飛ばすことだってできる。

「これ、今は十個出してるけど一個にまとめたら結構強い風だと思う。……それこそ、戦闘にも耐えうるくらいに」
「なんだか綾乃ちゃん当たり前のように指全部から魔法出してるけど……それ、できる人どれくらいいる技術なの?」
「うーん……私はもとから魔力量がないから、精度を高めるように練習をしてきただけで、こんなことする必要ある人の方が少ないし、あんまりいないんじゃないかな」

 両手で違う魔法を行使する人は多々いるし、私は同じ魔法を十等分しているだけにすぎない。そこまで高度な技術ではないのだ……。それに、寿奈の魔力量だったら私が十個同じ魔法を使うよりさらに強力な魔法を使えるはずなのだ。

「この先、学校の訓練場とかが使えるようになったら、寿奈も魔法をどんどん使えるように頑張ってもらうわよ。ただし、とっておきみたいなものだし、それなりに事前準備が必要になるだろうから……それこそ新人戦は言い方悪いけど私の魔力タンクになってもらうわよ」
「う、うん。私にできることなら、なんだってするから」

 そんな寿奈の言葉を聴きながら指先に火を灯す。魔力を込めて火の温度そして寿奈の体温を上げていく。

「あ、綾乃ちゃん? ひょっとして……」
「うん。次は汗をもらおうかなって」
「あうぅ……恥ずかしいよぉ」

 恥じらいもあいまってか、首筋に汗が滲み始める。

「もう、喉ならさないでよ……」

 無意識に生唾を飲んでいたようだ。キスより首筋を舐める方がえっちに思えてきて……感覚の狂いを実感しつつも、欲望にあらがえないのだった。
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