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#7 お引っ越し

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 ほどなくして、寿奈が荷物をまとめて私の部屋に引っ越してきた。もともとこのマンションは家具家電つきだから大きな荷物は必要ないし、3LDKの間取りなため収納にも困らない。……ん?

「そういえばさ、寿奈はどうしてこのマンションにしたの? それなりの家賃じゃない?」

 しかも学園にほど近いというわけでもないし、挙げ句に一人暮らしだ。私が言えた義理じゃないが、部屋数だって不必要な規模だし、家賃とモノレールの定期代を考慮したら、学費が安いからと国立魔導高校を選んだ寿奈なら選ばなさそうな気はするのだが。

「防犯設備の良さ……かな。ほら、私おっちょこちょいだし、ずぼらだし……隙だらけだから。それなのにろくに魔法も使えなくて、強盗とかストーカーとか下着泥棒とか、怖いじゃん? だから、セキュリティがちゃんとしている物件にしなさいってお母さんが。お母さんもけっこう苦労したらしいから」

 寿奈の容姿が仮に母親譲りだとしたら、お母さんもかなりの美人なのだろう。だとすると、容姿故に困ることを体験として知っていてもおかしくはない。なるほど、娘を思う気持ち……か。

「あと、お母さんがこういう時に備えて蓄えていたお金とか、お父さんが置いていったらしいお金とか、そういうので工面してるらしいよ? まぁ、綾乃ちゃんとルームシェアするってなったから、家賃用に蓄えていたお金、お母さん自身のために使って欲しいなって思ってる。そうだ! ちゃんとルームシェアの相手が女の子だって知らせなきゃだから、ツーショット撮っていい?」

 それで寿奈のお母さんが納得してくれるなら、その方が良いだろうと私は寿奈と並んでカメラに収まった。

「えへへ、ついでにこれ待ち受けにしちゃおっかな」
「え~それはちょっと恥ずかしいかな」

 学校でもまだ周囲としっかり打ち解けたわけじゃないから、誰に見られるわけでもない……とは思うものの、何だかちょっぴり恥ずかしいのも事実だ。

「取り敢えず送ったから、シャワー浴びようよ。ね?」

 寿奈が元いた部屋から持ってきたシャンプーやボディーソープのボトルを取り出しながら、私に言う。部屋の形状が一緒だったこともあり、勝手知ったる状態だ。

「……一緒に浴びる必要はないんじゃ?」
「あの広いお風呂、一人は寂しいよ?」

 ……そこまで言うほど広くはないんじゃ、いや、自分の物差しで考えちゃいけないか。そうは言っても入浴は一人の方がリラックスできるというか、逆に言えば寿奈と入ったらドギマギしてしまいそうな……なんていう私の葛藤を余所に、

「恥ずかしがることないじゃん。キスした仲なんだしさ」

 そう言って寿奈に引っ張られるように脱衣所へ連れられる私。脱衣所まで来たのだからと思って服を脱ぐのだが、寿奈の下着姿に驚いてしまった。

「え、ブラ真っ赤!? ちょ、ちょっと大人すぎない??」

 ブラジャーのデザインもなんか凝ってるように見える。大きな胸を大きな布で支えているから、デザインも大きめではっきり分かる。

「魔導高校へ進学するって母に言った時、母は怪我とか事故で突然服を切られてAEDやったり心臓マッサージされたりする可能性があるから、下着は見られて恥ずかしくないものを選べって。あと、ブラは半年に一回ヨレヨレになってないか、サイズは合っているか確認しろって言ってた」

 そんな話をしながら、寿奈はもう全て脱ぎきってしまった。……なんだか、自分ばっかり恥じらうのもかえって恥ずかしさを増す気がして、私もさっさと脱ぐことにした。

「綾乃ちゃん、すらっとしてて憧れちゃうけどなあ」
「寿奈、それ他の子には絶対言わない方が良いよ」

 多分だけど、少なくともうちのクラスには寿奈以上に恵まれたボディの女子生徒はいないだろうから。ただでさえ序列が低いと軽んじられかねない学校なのだ。無関係な要素で敵を作る必要はない。そんな話をしても寿奈は首を傾げるだけだった。……可愛い。
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