俺がどうやって彼女を選んだのか

楠富 つかさ

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これがオレと七夕の祭

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 心の誕生日から三週間近くが経ったのだが、"アレ"以来オレと海空の間に一定の距離感を感じる……。委員会は相変わらず仕事がないし……。

「よっ、いよいよ今週末だな」

 声をかけて来たのは和樹だったのだが、あんまり聞いていなかったからか何がいよいよなのか全く分からん……。

「聞いてんのか?明後日は七夕祭りだろ?」

 あぁ、七夕祭りか……。

「誰と行く気なんだよ?」

 誰と……か、つーか行くのが前提かよ……。
 その日の帰り。

「なぁ、心? 七夕祭り、一緒に行くか?」

 話題が尽きた時にふっと口をついた台詞に心はかなり驚いた様子だった。

「えっ!? 行くよもちろ……あ」

 ん? どうしたんだ?

「がーん……。明後日って私、塾なんだ……。しかも模試」

 うわー日曜に塾か……しかも模試とか……。ファイト!

「大変だな、頑張れ」

 うなだれていた心がこっちを向いて苦笑い

「あーだったら海空と行きな。最近、距離感あるし」

 そうだな……そうさせてもらうよ。

「海空には私から伝えておくから」

 心の気配りは見習わないとってつくづく思わされたな。



 さて、日付は七月七日になった。時計は午後五時を指している。

「じゃ、あたし先に出かけるから!」

 どうやら、悠那は香林の同級生とお祭りに行くらしい。

「人混みに気ぃ付けろよ!」
「分かってるって!」


 百合咲市の七夕祭りは海沿いの大通りを封鎖して大々的に催される。また、大通りに近い丘にある六星神社では縁日も催されるため近所の住民はこのお祭りに親しみを込めて六星さんと呼ぶ。
 で、オレと海空の待ち合わせ場所がその六星神社だった。

「かなり早かったか」

 五時に悠那を送り出した後にある程度、家事を済ませ家を出たのだが…時計は五時半を少し過ぎただけだ。
 んぐ? メールだ。海空からだ……。

『今、着いたよ。鈴規くん早いね♪ さて、ウチがどこにいるか分かるかな?』

 えっ!? 待ち合わせまでまだ十五分もあるのに……。んーどこだ? ………なーんてね。下駄の音でバレバレだし。

「後ろにいるだろ? 海空」

 オレが振り返るとそこには……。

「たはー、来るのも早くて見付けるのも早いなんて」

 浴衣姿の海空がいた。濃紺の落ち着いた色の浴衣に、普段はポニテの髪をお団子に結った海空は……すごく大人っぽくって。

「どう、かな? 変じゃない?」

 とっても綺麗だった。ありきたりかもしれないが、そんな感想しか出てこなかった。
 ちっぽけなボキャブラリーで飾るよりも、素直に言葉にする方がいいよな。

「とっても似合ってるよ。なんか……こう、色っぽい」

 すると海空は顔を赤らめながら、

「ふふ、色っぽいってなんかやらしいぞ♪ じゃ、行こう」

 笑顔を浮かべて階段へ向かった。今までの違和感なんて感じさせない笑顔にオレも海空に歩み寄っていた。
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