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これがオレと心の水泳の受難

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 いくら梅雨とはいえども、晴れる日だってあるさ……。

「う……。うぅ……。鈴規、晴れちゃったじゃん…」

 朝から元気の欠片もない心を無理やりに登校させてやっと着いた学校……。

「心ちゃんの元気がないのですが……どうしたのでしょう?」

 川岸さんに朝礼後に訊かれたのだが……。

「どうにもこうにも水泳がイヤなんだ」

 川岸さんは納得した様子で、

「前回は十分くらいしたら雨が降ってきましたから、まともに泳ぐのは今日が初なのですよ」

 あ~確かに。男子は気にせず泳がされたけど……。オレも運動制限がなけりゃ……。




 さて、今日の体育は四限でもう水泳の支度は揃っている。



 男女合同の水泳に男子はいつもザワつく……。

「村山さんの水着姿がようやく……」

 男子のお目当ては心の水着姿……。気持ちは分からなくもない……。しかし……。

「どうした、鈴規?」

 ん? 和樹か…

「女子達の青春の一コマを共に鑑賞しようではないか?」

 とても紳士を騙る男の台詞とは思えん……。ニヤニヤしやがって。しかも、彼女がいる身として、その発言は本当にどうなのやら?


 ちなみに、今は自由泳の時間……。運動制限的に今泳ぐのは良くないらしい……。そのせいでオレはプールサイドから波打つ水面を眺めているのだが……。ついつい心配で視線は心の方へ向く。あくまでも心配だからであって……。他意はない……、ないからな……。で、その心はというと……、

 懸命に泳ごうとしていた……。でも、少しずつ沈んでゆく……。あれ? 浮かない……。マズイ!! 溺れた!

「ちょっ……」

 和樹が何かしら言おうとしていたが気にせず心のもとへ向かう。


 プールサイドに引き揚げた心に意識はあまりないようだ……。

「誰か! 先生を!!」

 って先生、別の生徒を診てるし……。なんでよりにもよって、あちこちで足を攣らせる馬鹿がいるんだよ!? ってことは、オレが心に人工呼吸?
 するのか? していいのか? あ゛ぁぁ!! 考えている時間が惜しい……割り切るんだ、俺!!

「今、助けるからな!」







「起きたか?」

 場所は変わって保健室……。薬品特有の匂いが鼻につく……。で、時間としては昼休み。

「どうだ? 体調は?」

 まだ少し顔色が悪そうだが……。

「まずまず、かな。でも……」

 何故か言い淀んだ心。

「ん? でもどうした?」

 グゥ~~~
 ん? この音って……ははっ。

「お腹が空いたぁ」

 そりゃそうだろうな……。

「それなら、お前の分の弁当も持って来たからここで食べるか」

 一気に元気になった心との弁当……。学校で二人でメシだなんてなかなかないな。

「二人だけでお弁当って珍しいね」

 心も同じことを考えていたようだ。

「助けてくれてありがとう」

 ちょっと俯いた心にお礼を言われた……。こんなん前にもあった気がする。

「私って鈴規に助けてもらってばかりだね……」






 あぁ、そうか。あの時か……。
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