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部活はハーレムじゃありません!!
#76 休日デートで意外な出会い
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六月ももう終わろうかという最終土曜日、ボクは麻琴とショッピングモールにお買い物にやってきた。陸上部の活動は雨でお休みということらしい。最近の麻琴はボクのことを第一に考えて動いているっぽいから、本当は体育館でトレーニングとか、そういった活動があるんじゃないかとすごく気にしたんだけど、それは明日らしいので、今日は麻琴を信じて荷物持ちに連れてきてしまった。
まぁ、麻琴も麻琴で欲しいものがあるらしい。……で、それがこれってわけね。
「このシリーズ、それこそ中学生の頃にやったけど、ちょっと苦手なんだよねぇ」
「大丈夫だって、あれからもう三年も経ってるんだよ。操作性というか、まあ爽快感がすっごくなってるんだって」
麻琴が見せてきているのはゲームソフト。アクションゲームで、主人公は狩人になって大型の怪獣みたいなモンスターを討伐して、肉とか皮とか牙とか、素材を手に入れるゲームだ。シリーズの二作品目くらいを中学生の頃にプレイした(その時はクラスメイトの男子に誘われて、ボクから麻琴を誘った。結局、麻琴の方がはまったらしい)が、その五作品目がゴールデンウイークくらいに発売されて、麻琴は春の大会の成績が良かったから、これを買ってもらう約束を親としていたらしい。
「私が悠希に遊んでほしいから、買ってプレゼントするの」
「え、いいよ。だった自分で買う」
「いいの。私がそうしたいんだから、その……彼女として」
はにかむ麻琴にきゅんとしてしまったので、おとなしく麻琴に買ってもらうことにした。
このゲームの配信は見てないけど、最近推しのヴァーチャル動画配信者、ネノちゃんもこれをプレイしているし、ひょっとしたら夏希も遊ぶかもしれないし、ちょっとやってみようかな。
「で? 悠希も家電で何か買いたいものがあるんでしょう?」
ゲームソフトを買う時って、我が家はもっぱら通販で済ませてしまうのだけど、麻琴は昔からおもちゃ屋さんとか家電量販店で買うことが多いらしい。ポイントとの兼ね合いらしい。というわけで、ここからはボクが欲しい調理家電のコーナーを見ることにした。
ブレンダーとか炭酸水メーカーとか欲しいものはあるんだけど、最近はお菓子を作る機会が増えつつあるのでハンドミキサーを新調しようと思っている。大型家電は通販の方が便利だけど、手持ちするアイテムについては実際に店舗で大きさとか重さを体験してから買いたいと思っている。
そんな話を麻琴にしながら、ゲーム機器が置いてあるコーナーからオーディオのコーナーを経由して調理家電のコーナーを目指すと、見覚えのある長身が目についた。
「あれ、静真さん?」
「あ、姫宮先輩。おはようござ……うぅん、こんにちは?」
部活の時は夕方なのに何故かおはようございますで調理室に入ってくるから、流石に今はお昼過ぎだし校外なので、こんにちはでいいと思う。
「こんにちは、なんだか本格的なヘッドセットだね」
静真さんがしげしげとみていたのはヘッドセット。ヘッドフォンにマイクもついた、なんかのオペレーターさんがしてそうな本格的なものだ。
「悠希、この人は?」
「あれ? 会ったことなかったっけ? 料理部の後輩、宗森静真さんだよ。静真さん、こっちは幼馴染の雛田麻琴」
「初めまして雛田先輩。一年二組の宗森です。姫宮先輩には料理のこと本当に一から教わっていて、すごくお世話になってます」
静真さんが長身をくっと折り曲げて麻琴に挨拶する。麻琴は礼儀正しく挨拶されてちょっと緊張したのか、へこへこと頭を下げる。
「えっと、こちらこそ悠希がお世話になってまして」
「……麻琴」
なんかかっこわるかったので、お尻を軽くたたいて落ち着かせる。
「静真さん、そういうの好きなの?」
「はい。そろそろ新調しようかと思ったんですけど、ちょっとこれは高いのでやめようかなと」
静真さんが振り向いてヘッドセットをディスプレイに戻す時、当然彼女はボクらに背中を向けるのだが彼女の背負っているリュックに気になるものがついていた。
「静真さんこれ、ネノちゃんの缶バッジだよね? え、こんなグッズいつの間に……? ていうか、こっちのストラップも、うわぁ。可愛い。見覚えなーい。個人で配信してる人のグッズってそんなに出る? 缶バッジの立ち絵は見覚えあるけど……ストラップは見覚えないや。こんな立ち絵あったっけ。ファンメイド?」
「……先輩、いっきに喋られても。というか、ネノご存じなんですか?」
「うん。春頃からちょうど見てて、それこそ登録者数が二桁の頃から見てるよ」
なんのきっかけか忘れたけど、オススメ動画に表示されていたので見始めた。そのころ登録者数はもう少しで百人って感じだったが、ちなみに今は二千人前後を増減しているはず。狩人のゲームを配信した頃から着実に伸びだしたっぽい。古参アピールしておかねば。
「あ、あの……先輩、今度またお話しするお時間いただいてもいいですか? できれば来週の土曜に私の家で、なんて」
「え? うーん。でも大丈夫? テストシーズン始まるけど。部活も水曜でいったん休止だし」
「そうですよね……お忙しい時期にお時間割いていただくのも申し訳なくて。あの、じゃあ夏休みの初日とか!」
静真さんの家で、ということで困惑していた麻琴も、流石に夏休みという単語には聞き逃せないとばかりに反応した。
「ちょいちょい、私というものがありながらそりゃちっと聞き逃せないね」
「え……?」
静真さんがぽかんとした表情を浮かべるが、まぁ当然と言えば当然……かな? ボクと麻琴が付き合っているっていう認識がなければ、このリアクションの意味は分かるまい。
「まぁ真剣は話でしょうから、聞くわ。じゃあ、またその時に。行くよ麻琴」
「お、おうん……悠希になにかしたらただじゃおかないから!」
「麻琴っ!!」
静真さんからわりと衝撃的な話をされるのは、もうちょっと後の話。
まぁ、麻琴も麻琴で欲しいものがあるらしい。……で、それがこれってわけね。
「このシリーズ、それこそ中学生の頃にやったけど、ちょっと苦手なんだよねぇ」
「大丈夫だって、あれからもう三年も経ってるんだよ。操作性というか、まあ爽快感がすっごくなってるんだって」
麻琴が見せてきているのはゲームソフト。アクションゲームで、主人公は狩人になって大型の怪獣みたいなモンスターを討伐して、肉とか皮とか牙とか、素材を手に入れるゲームだ。シリーズの二作品目くらいを中学生の頃にプレイした(その時はクラスメイトの男子に誘われて、ボクから麻琴を誘った。結局、麻琴の方がはまったらしい)が、その五作品目がゴールデンウイークくらいに発売されて、麻琴は春の大会の成績が良かったから、これを買ってもらう約束を親としていたらしい。
「私が悠希に遊んでほしいから、買ってプレゼントするの」
「え、いいよ。だった自分で買う」
「いいの。私がそうしたいんだから、その……彼女として」
はにかむ麻琴にきゅんとしてしまったので、おとなしく麻琴に買ってもらうことにした。
このゲームの配信は見てないけど、最近推しのヴァーチャル動画配信者、ネノちゃんもこれをプレイしているし、ひょっとしたら夏希も遊ぶかもしれないし、ちょっとやってみようかな。
「で? 悠希も家電で何か買いたいものがあるんでしょう?」
ゲームソフトを買う時って、我が家はもっぱら通販で済ませてしまうのだけど、麻琴は昔からおもちゃ屋さんとか家電量販店で買うことが多いらしい。ポイントとの兼ね合いらしい。というわけで、ここからはボクが欲しい調理家電のコーナーを見ることにした。
ブレンダーとか炭酸水メーカーとか欲しいものはあるんだけど、最近はお菓子を作る機会が増えつつあるのでハンドミキサーを新調しようと思っている。大型家電は通販の方が便利だけど、手持ちするアイテムについては実際に店舗で大きさとか重さを体験してから買いたいと思っている。
そんな話を麻琴にしながら、ゲーム機器が置いてあるコーナーからオーディオのコーナーを経由して調理家電のコーナーを目指すと、見覚えのある長身が目についた。
「あれ、静真さん?」
「あ、姫宮先輩。おはようござ……うぅん、こんにちは?」
部活の時は夕方なのに何故かおはようございますで調理室に入ってくるから、流石に今はお昼過ぎだし校外なので、こんにちはでいいと思う。
「こんにちは、なんだか本格的なヘッドセットだね」
静真さんがしげしげとみていたのはヘッドセット。ヘッドフォンにマイクもついた、なんかのオペレーターさんがしてそうな本格的なものだ。
「悠希、この人は?」
「あれ? 会ったことなかったっけ? 料理部の後輩、宗森静真さんだよ。静真さん、こっちは幼馴染の雛田麻琴」
「初めまして雛田先輩。一年二組の宗森です。姫宮先輩には料理のこと本当に一から教わっていて、すごくお世話になってます」
静真さんが長身をくっと折り曲げて麻琴に挨拶する。麻琴は礼儀正しく挨拶されてちょっと緊張したのか、へこへこと頭を下げる。
「えっと、こちらこそ悠希がお世話になってまして」
「……麻琴」
なんかかっこわるかったので、お尻を軽くたたいて落ち着かせる。
「静真さん、そういうの好きなの?」
「はい。そろそろ新調しようかと思ったんですけど、ちょっとこれは高いのでやめようかなと」
静真さんが振り向いてヘッドセットをディスプレイに戻す時、当然彼女はボクらに背中を向けるのだが彼女の背負っているリュックに気になるものがついていた。
「静真さんこれ、ネノちゃんの缶バッジだよね? え、こんなグッズいつの間に……? ていうか、こっちのストラップも、うわぁ。可愛い。見覚えなーい。個人で配信してる人のグッズってそんなに出る? 缶バッジの立ち絵は見覚えあるけど……ストラップは見覚えないや。こんな立ち絵あったっけ。ファンメイド?」
「……先輩、いっきに喋られても。というか、ネノご存じなんですか?」
「うん。春頃からちょうど見てて、それこそ登録者数が二桁の頃から見てるよ」
なんのきっかけか忘れたけど、オススメ動画に表示されていたので見始めた。そのころ登録者数はもう少しで百人って感じだったが、ちなみに今は二千人前後を増減しているはず。狩人のゲームを配信した頃から着実に伸びだしたっぽい。古参アピールしておかねば。
「あ、あの……先輩、今度またお話しするお時間いただいてもいいですか? できれば来週の土曜に私の家で、なんて」
「え? うーん。でも大丈夫? テストシーズン始まるけど。部活も水曜でいったん休止だし」
「そうですよね……お忙しい時期にお時間割いていただくのも申し訳なくて。あの、じゃあ夏休みの初日とか!」
静真さんの家で、ということで困惑していた麻琴も、流石に夏休みという単語には聞き逃せないとばかりに反応した。
「ちょいちょい、私というものがありながらそりゃちっと聞き逃せないね」
「え……?」
静真さんがぽかんとした表情を浮かべるが、まぁ当然と言えば当然……かな? ボクと麻琴が付き合っているっていう認識がなければ、このリアクションの意味は分かるまい。
「まぁ真剣は話でしょうから、聞くわ。じゃあ、またその時に。行くよ麻琴」
「お、おうん……悠希になにかしたらただじゃおかないから!」
「麻琴っ!!」
静真さんからわりと衝撃的な話をされるのは、もうちょっと後の話。
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