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二年生になりました♪
#74 アイマイレンアイカンケイ
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由花菜ちゃんと別れグラウンドへ向かった。麻琴は部活を終えて既に制服に着替えていた。あまり陸上部の人たちのことを知らないから、麻琴以外で見知った顔は川藤さんくらいだ。
「麻琴!」
「悠希が迎えに着てくれるなんて珍しい。嬉しいよ」
はにかむ麻琴に胸が高鳴る。恥ずかしくて背を向けてしまう。
「一緒に帰りたかったから」
「先輩、この人は?」
明るそうな陸上部の一年生が麻琴に尋ねる。麻琴がどう答えるのか、ちょっと身構えてしまった。
「幼馴染の姫宮悠希。あたしの彼女」
さも当たり前のように言った麻琴に、一年生たちが黄色い声を浴びせる。ますます恥ずかしくなって、ボクは麻琴の手を引いて正門へと向かった。麻琴が部員たちに声をかける。
「さよなら~」
「「お疲れっしたー!」」
正門を抜けてからは横に並んで帰り始める。手は、繋いだまま。
「あ、あのさ……ボク、麻琴と付き合いたい。ちゃんと恋人になりたい」
「え?」
……え? 何だか予想外の反応をされてしまった。何をそんなぽかんとした顔をしているの?
「あたしらって、付き合ってなかったの?」
「え?」
ボクら……付き合ってたの? いつから?
「いつからって? それは……大晦日、元日とか? 元日にほら、お互いに気持ちを伝え合ったわけで……じゃなきゃさっきだって彼女だなんて言わないよ?」
思い出せばそうだ。なんだ……あれで良かったんだ。迷って、諭されて、また迷って。そして諭されて。実村先輩や由花菜ちゃんの言葉がリフレインする。ボクの独り相撲だったみたい。なにやってるんだろうボクは。でも……。
「付き合ってるとしたら麻琴はいつも通りすぎない? ていうか、付き合う前だってボクのこと嫁とか言ってたじゃん」
「それはそれ、これはこれ。というかさ、あたしと悠希の間に特別なものが必要?」
あぁ……すぐ本心でそういうこと言う。そういうところが好きなんだけどさ。
「ちょっとくらい態度に示してくれてもいいんじゃない? 記念日とか祝いたいし、なんていうか……その、全然キスとかしてくれないし」
本当にこれでいいのかな? でも形式張ってもボクららしくないっていうか……でも、去年家族と話したこともあるわけで。そっか、あの時は麻琴へ想いがすごく沸き上がったんだっけ。そう考えたらもうとっくに半年以上経ってる訳か。
「今はまだ秘密にしないとね」
ボクがぽつり呟くと、麻琴は不思議そうに首を傾げた。ひょっとして……忘れているのかな? いや、それは流石にありえないよね。でも麻琴のことだからなぁ。
「十年後はどうしよっか?」
「一緒に住む話? ……あ、そっか」
どうやら思い出してくれたようだ。思い出したっていうことは忘れていたわけか……。
「じゃあ、いつも通りのままでいいのか」
麻琴の言葉に驚いてしまう。どういうことかと尋ねたら、付き合っていると言えば付き合っているし、付き合っていないと言えば付き合っていないこの距離感が、ボクらに似合っているということらしい。なんだかお母さんたちを騙しているようで気後れするけど……付き合っているという自覚のなかったボクには何も言えないや。
「悠希は考えすぎなんだよ」
「そうかも。でもね、麻琴だってボクのことよく考えてくれているでしょう? 分かるよ」
ボクと暮らすことを考えてくれていること、受験のため懸命に勉強していること、文理別々に進む不安のこと、麻琴は心からボクのことを考えて行動に移してくれる。
「そう言われると照れちゃうなぁ」
目下の二大悩み事の一つが解消され、ボクの心は弾むように軽くなった。だからかな。甘えたくなってしまったのだ。
「ねぇ麻琴。キスしていい?」
ボクらの夕影が重なった。
「麻琴!」
「悠希が迎えに着てくれるなんて珍しい。嬉しいよ」
はにかむ麻琴に胸が高鳴る。恥ずかしくて背を向けてしまう。
「一緒に帰りたかったから」
「先輩、この人は?」
明るそうな陸上部の一年生が麻琴に尋ねる。麻琴がどう答えるのか、ちょっと身構えてしまった。
「幼馴染の姫宮悠希。あたしの彼女」
さも当たり前のように言った麻琴に、一年生たちが黄色い声を浴びせる。ますます恥ずかしくなって、ボクは麻琴の手を引いて正門へと向かった。麻琴が部員たちに声をかける。
「さよなら~」
「「お疲れっしたー!」」
正門を抜けてからは横に並んで帰り始める。手は、繋いだまま。
「あ、あのさ……ボク、麻琴と付き合いたい。ちゃんと恋人になりたい」
「え?」
……え? 何だか予想外の反応をされてしまった。何をそんなぽかんとした顔をしているの?
「あたしらって、付き合ってなかったの?」
「え?」
ボクら……付き合ってたの? いつから?
「いつからって? それは……大晦日、元日とか? 元日にほら、お互いに気持ちを伝え合ったわけで……じゃなきゃさっきだって彼女だなんて言わないよ?」
思い出せばそうだ。なんだ……あれで良かったんだ。迷って、諭されて、また迷って。そして諭されて。実村先輩や由花菜ちゃんの言葉がリフレインする。ボクの独り相撲だったみたい。なにやってるんだろうボクは。でも……。
「付き合ってるとしたら麻琴はいつも通りすぎない? ていうか、付き合う前だってボクのこと嫁とか言ってたじゃん」
「それはそれ、これはこれ。というかさ、あたしと悠希の間に特別なものが必要?」
あぁ……すぐ本心でそういうこと言う。そういうところが好きなんだけどさ。
「ちょっとくらい態度に示してくれてもいいんじゃない? 記念日とか祝いたいし、なんていうか……その、全然キスとかしてくれないし」
本当にこれでいいのかな? でも形式張ってもボクららしくないっていうか……でも、去年家族と話したこともあるわけで。そっか、あの時は麻琴へ想いがすごく沸き上がったんだっけ。そう考えたらもうとっくに半年以上経ってる訳か。
「今はまだ秘密にしないとね」
ボクがぽつり呟くと、麻琴は不思議そうに首を傾げた。ひょっとして……忘れているのかな? いや、それは流石にありえないよね。でも麻琴のことだからなぁ。
「十年後はどうしよっか?」
「一緒に住む話? ……あ、そっか」
どうやら思い出してくれたようだ。思い出したっていうことは忘れていたわけか……。
「じゃあ、いつも通りのままでいいのか」
麻琴の言葉に驚いてしまう。どういうことかと尋ねたら、付き合っていると言えば付き合っているし、付き合っていないと言えば付き合っていないこの距離感が、ボクらに似合っているということらしい。なんだかお母さんたちを騙しているようで気後れするけど……付き合っているという自覚のなかったボクには何も言えないや。
「悠希は考えすぎなんだよ」
「そうかも。でもね、麻琴だってボクのことよく考えてくれているでしょう? 分かるよ」
ボクと暮らすことを考えてくれていること、受験のため懸命に勉強していること、文理別々に進む不安のこと、麻琴は心からボクのことを考えて行動に移してくれる。
「そう言われると照れちゃうなぁ」
目下の二大悩み事の一つが解消され、ボクの心は弾むように軽くなった。だからかな。甘えたくなってしまったのだ。
「ねぇ麻琴。キスしていい?」
ボクらの夕影が重なった。
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