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サイドストーリー みんあや編
第2話 登校初日
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それから一週間くらいが経って、わたしと綾ちゃんは星鍵学園高校の入学式にやってきた。この学校は進学率こそそれほど高くはないけど、制服が可愛くって、校舎も新しい人気の女子校だ。家からはちょっと遠いけど、自転車で通える距離だし、なにより綾ちゃんがいる。いやぁ、綾ちゃんよく合格してくれたなぁ。
意外と風格のある校門を抜け、テニスコート沿いの窓に貼られたクラス分けの紙を遠目から見て名前を探す………のだが、前に人が多くて見えない。
「綾ちゃぁん、見える?」
「見えるよ。お、同じ四組だよ。やったね!」
「うん!」
二人揃って四組の教室に入り席に着く。最前列だぁ……。でも、綾ちゃんがすぐ後ろにいてくれるのは嬉しい。
「ちょっとお手洗い行ってくるね」
「あいよ」
六組側にあるトイレへと向かう。校舎が新しいだけあって、トイレの綺麗さも中学とは比べ物にならない。この辺りは見学した去年の文化祭や入試本番の時に知ったけど、改めてそのすごさを感じる。用を済ませて四組に戻ろうとしていると、五組になったという友達と話し込んでしまい、戻ったのは先生が訪れる直前だった。
「間に合ったぁ」
「トイレ混んでた?」
席に着いてから安心していると、後ろから小声で綾ちゃんに話しかけられた。
「うぅん。花梨ちゃんと少し話してた」
「そっか。あ、先生来た」
入ってきた先生は男性で、自己紹介で三十歳と言っていたけど、ちょっと気だるげな印象だ。副担任の石川先生はもっと若くて、すごく親しみが湧く雰囲気の女性だ。先生たちの自己紹介が終わると、残りの午前は身体検査に費やされた。学校のあちこちを移動しながら検査を受け、時刻はすっかりお昼になっていた。そのお昼の時間、わたしは一人の女の子に圧倒されてしまった。
彼女の名前は姫宮悠希。ニックネームはユウちゃんで、そう呼んでいいって言ってくれた。綺麗な黒髪をポニーテールに結っていて、顔立ちはすごく整っている女の子。可愛いのに、どこか大人びた雰囲気を持っていて、よく幼いって言われるわたしには羨ましい。それに、真新しい制服を押し上げる膨らみはすごく大きい。そんなユウちゃんと一緒の中学校だったという雛田麻琴ちゃんは、綾ちゃんに少し似た感じのスポーツ少女。ヒナッチがニックネーム。中学では陸上部だったそうで、高校でも続けるらしい。そんなヒナッチがユウちゃんのお弁当に入っている唐揚げをつまみ食いして、味を褒める。すると、ユウちゃんは照れたような怒り方をした。ユウちゃんは……もしかして。一瞬だけそんな思いが脳裏をよぎったけど、深くは考えないことにした。そんな感じでお弁当も食べ終わり、のんびりタイムです。ユウちゃんにじっくりと見られたような感覚の後、一つの質問を投げかけられた。
「明音さん、支倉っていう名字も珍しいよね?」
この辺りでは確かに珍しい苗字だから、その由来を説明してあげることにした。
「なんかねぇ~北の方にそんな地名があるらしいよぉ」
そんな会話をしていると、お茶を飲み終えた綾ちゃんが口を開いた。
「気になるんだけどさ、さん付けは……会って初日だから仕方ないけど……何であたしだけ名字で呼ばれてる? ねぇ、ユウちゃん?」
少しだけ考える素振りを見せたユウちゃんは、少し気恥ずかしそうに言った。
「ナンパみたいな登場だったし、好きに呼んでって……」
ナンパみたいな登場をしたのは、わたしがトイレに行ったり、そのまま友達と話してしまったりして教室にいなかった時間の出来事なんだろう。もう、綾ちゃんったら……。
「そうだけど……むむ」
「ま、初美さんって呼ばれて名字だと気付かれる人なんて男の人くらいなんじゃないかな?」
なんとなく不満そうだった綾ちゃんも、ヒナッチの発言でしぶしぶって感じだけど納得したっぽい。その後はクラス全員の自己紹介があって、登校初日はのんびりと過ぎていった。
意外と風格のある校門を抜け、テニスコート沿いの窓に貼られたクラス分けの紙を遠目から見て名前を探す………のだが、前に人が多くて見えない。
「綾ちゃぁん、見える?」
「見えるよ。お、同じ四組だよ。やったね!」
「うん!」
二人揃って四組の教室に入り席に着く。最前列だぁ……。でも、綾ちゃんがすぐ後ろにいてくれるのは嬉しい。
「ちょっとお手洗い行ってくるね」
「あいよ」
六組側にあるトイレへと向かう。校舎が新しいだけあって、トイレの綺麗さも中学とは比べ物にならない。この辺りは見学した去年の文化祭や入試本番の時に知ったけど、改めてそのすごさを感じる。用を済ませて四組に戻ろうとしていると、五組になったという友達と話し込んでしまい、戻ったのは先生が訪れる直前だった。
「間に合ったぁ」
「トイレ混んでた?」
席に着いてから安心していると、後ろから小声で綾ちゃんに話しかけられた。
「うぅん。花梨ちゃんと少し話してた」
「そっか。あ、先生来た」
入ってきた先生は男性で、自己紹介で三十歳と言っていたけど、ちょっと気だるげな印象だ。副担任の石川先生はもっと若くて、すごく親しみが湧く雰囲気の女性だ。先生たちの自己紹介が終わると、残りの午前は身体検査に費やされた。学校のあちこちを移動しながら検査を受け、時刻はすっかりお昼になっていた。そのお昼の時間、わたしは一人の女の子に圧倒されてしまった。
彼女の名前は姫宮悠希。ニックネームはユウちゃんで、そう呼んでいいって言ってくれた。綺麗な黒髪をポニーテールに結っていて、顔立ちはすごく整っている女の子。可愛いのに、どこか大人びた雰囲気を持っていて、よく幼いって言われるわたしには羨ましい。それに、真新しい制服を押し上げる膨らみはすごく大きい。そんなユウちゃんと一緒の中学校だったという雛田麻琴ちゃんは、綾ちゃんに少し似た感じのスポーツ少女。ヒナッチがニックネーム。中学では陸上部だったそうで、高校でも続けるらしい。そんなヒナッチがユウちゃんのお弁当に入っている唐揚げをつまみ食いして、味を褒める。すると、ユウちゃんは照れたような怒り方をした。ユウちゃんは……もしかして。一瞬だけそんな思いが脳裏をよぎったけど、深くは考えないことにした。そんな感じでお弁当も食べ終わり、のんびりタイムです。ユウちゃんにじっくりと見られたような感覚の後、一つの質問を投げかけられた。
「明音さん、支倉っていう名字も珍しいよね?」
この辺りでは確かに珍しい苗字だから、その由来を説明してあげることにした。
「なんかねぇ~北の方にそんな地名があるらしいよぉ」
そんな会話をしていると、お茶を飲み終えた綾ちゃんが口を開いた。
「気になるんだけどさ、さん付けは……会って初日だから仕方ないけど……何であたしだけ名字で呼ばれてる? ねぇ、ユウちゃん?」
少しだけ考える素振りを見せたユウちゃんは、少し気恥ずかしそうに言った。
「ナンパみたいな登場だったし、好きに呼んでって……」
ナンパみたいな登場をしたのは、わたしがトイレに行ったり、そのまま友達と話してしまったりして教室にいなかった時間の出来事なんだろう。もう、綾ちゃんったら……。
「そうだけど……むむ」
「ま、初美さんって呼ばれて名字だと気付かれる人なんて男の人くらいなんじゃないかな?」
なんとなく不満そうだった綾ちゃんも、ヒナッチの発言でしぶしぶって感じだけど納得したっぽい。その後はクラス全員の自己紹介があって、登校初日はのんびりと過ぎていった。
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