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サイドストーリー みんあや編
第1話 今日も君を気にしてる
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「今日でこの制服も着納めなんだねぇ」
市立田島南中学校の離任式が終わり校門を出る。わたしたち三年生が学校に来る正真正銘最後の日だ。三年生を担当した先生たちも転勤が多くて、寂しくなっちゃうなぁ。
「アタシはこの制服着るの、恥ずかしかったけどね」
「どうしてぇ?」
わたしの目の前にいるのは初美綾ちゃん。わたし―支倉明音―の幼馴染みで大親友。すらっとした四肢と少し高めの背が相まって、スポーツ少女という印象を受ける女の子。真昼の太陽を浴びながら後ろ歩きする彼女が、ちょっと輝いて見える。
「だってさ、三年生になってからは袖の長さが足りなくてさぁ、めっちゃ恥ずかしかったんだよ」
冬のセーラー服の黒と白がボーダーになった袖口から除くのは健康的な肌色の手首。確かに、寸足らずな感じはしているかも。
「だから、高校の制服は少し大きめに作ってもらったんだよ」
えー。わたしなんてほとんどサイズ変わらないのにぃ。
「綾ちゃん、まだ伸びるの? 中学入った時は5センチくらいしか差がなかったのになぁ」
どんどんと視線が遠くなっていく感じが少しだけ寂しかったなぁ。今じゃ頼もしいって感じもするけどねぇ。
「明音は変わらないよな」
「むぅ……女の子らしくなったと思うんだけどなぁ」
中学生になってから着けるようになったブラジャーはもう、二サイズ大きくしちゃった。わたしだって子供じゃないわけで、綾ちゃんの腕にぎゅっと押し付けるように抱きつく。
「なんだよ、明音は可愛いよ。昔からそう。いつも明音は可愛いよ」
少しだけ頬が熱くなる。綾ちゃんの竹を割ったような性格は、男女問わず親しみやすい。そんな綾ちゃんに可愛いって言われたら……もぅ。好きだって、言えたらいいのに。
「ねぇ綾ちゃん?」
恥ずかしくなって、腕をゆるめて横並びになる。
「ん?」
中学からの最後の下校道で、わたしと綾ちゃんは並んで歩いている。歩幅を合わせてくれる綾ちゃんに感謝しつつも、少しイジワルを言ってみる。
「ちゃんと高校の課題はやってる? わたし、もう見せてあげないって前に言ったよねぇ?」
高校入試が目前となっていた三年生の冬休みに、課題をほぼ全部写した綾ちゃんにわたしが言った。「もう課題見せてあげない」という言葉。綾ちゃんは覚えているかなぁ?
「え……あれ、本気だったの? あ、教えてはくれるよね?」
ふふ、覚えてはいてくれたんだぁ。
「じゃあ、その時は厳しくするからねぇ。頑張るんだよぉ?」
「むむ、明音先生は本当に厳しいからな……」
ころころと表情を変える様子が面白くて、綾ちゃんを見ているのは本当に飽きない。学校から二十分ほど歩いた辺りにある丁字路で綾ちゃんとはお別れ。わたしは一軒家暮らしで、綾ちゃんはマンション暮らしだ。
「またね」
「おうよ。あ、マジで課題は教えてくれよな」
わたしは敢えてにっこりと微笑むだけで何も言わなかった。
市立田島南中学校の離任式が終わり校門を出る。わたしたち三年生が学校に来る正真正銘最後の日だ。三年生を担当した先生たちも転勤が多くて、寂しくなっちゃうなぁ。
「アタシはこの制服着るの、恥ずかしかったけどね」
「どうしてぇ?」
わたしの目の前にいるのは初美綾ちゃん。わたし―支倉明音―の幼馴染みで大親友。すらっとした四肢と少し高めの背が相まって、スポーツ少女という印象を受ける女の子。真昼の太陽を浴びながら後ろ歩きする彼女が、ちょっと輝いて見える。
「だってさ、三年生になってからは袖の長さが足りなくてさぁ、めっちゃ恥ずかしかったんだよ」
冬のセーラー服の黒と白がボーダーになった袖口から除くのは健康的な肌色の手首。確かに、寸足らずな感じはしているかも。
「だから、高校の制服は少し大きめに作ってもらったんだよ」
えー。わたしなんてほとんどサイズ変わらないのにぃ。
「綾ちゃん、まだ伸びるの? 中学入った時は5センチくらいしか差がなかったのになぁ」
どんどんと視線が遠くなっていく感じが少しだけ寂しかったなぁ。今じゃ頼もしいって感じもするけどねぇ。
「明音は変わらないよな」
「むぅ……女の子らしくなったと思うんだけどなぁ」
中学生になってから着けるようになったブラジャーはもう、二サイズ大きくしちゃった。わたしだって子供じゃないわけで、綾ちゃんの腕にぎゅっと押し付けるように抱きつく。
「なんだよ、明音は可愛いよ。昔からそう。いつも明音は可愛いよ」
少しだけ頬が熱くなる。綾ちゃんの竹を割ったような性格は、男女問わず親しみやすい。そんな綾ちゃんに可愛いって言われたら……もぅ。好きだって、言えたらいいのに。
「ねぇ綾ちゃん?」
恥ずかしくなって、腕をゆるめて横並びになる。
「ん?」
中学からの最後の下校道で、わたしと綾ちゃんは並んで歩いている。歩幅を合わせてくれる綾ちゃんに感謝しつつも、少しイジワルを言ってみる。
「ちゃんと高校の課題はやってる? わたし、もう見せてあげないって前に言ったよねぇ?」
高校入試が目前となっていた三年生の冬休みに、課題をほぼ全部写した綾ちゃんにわたしが言った。「もう課題見せてあげない」という言葉。綾ちゃんは覚えているかなぁ?
「え……あれ、本気だったの? あ、教えてはくれるよね?」
ふふ、覚えてはいてくれたんだぁ。
「じゃあ、その時は厳しくするからねぇ。頑張るんだよぉ?」
「むむ、明音先生は本当に厳しいからな……」
ころころと表情を変える様子が面白くて、綾ちゃんを見ているのは本当に飽きない。学校から二十分ほど歩いた辺りにある丁字路で綾ちゃんとはお別れ。わたしは一軒家暮らしで、綾ちゃんはマンション暮らしだ。
「またね」
「おうよ。あ、マジで課題は教えてくれよな」
わたしは敢えてにっこりと微笑むだけで何も言わなかった。
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