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二学期といえば文化祭だよね
#44 新学期事件(1)
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二学期初日、麻琴と一緒に登校すると……、
「や、百合カップル! 久しぶり」
昇降口でもなかちゃんに声をかけられた。彼女こそ、高須先輩の従妹なのだ。まあ、それを知ったのは最近のことだが。というか、呼びかけられ方に大いに誤解があるのだけれど。
「今更ながら、鍵宮の靴箱って便利だよね」
もなかちゃんはボクらの困惑っぷりを気にすることなく、靴を履き替えながらそう言った。確かに、鍵宮の靴箱はロッカータイプで、二枚の板を使って三足置くことも、板を外せばブーツを置くこともできて便利なのだ。ボクの場合は三段にして、上履きのスリッパと体育用の運動靴、登校用の革靴をそれぞれ入れている。そんな靴箱を開けると……ん? 何か落ちてきたぞ?
「え、ら……ラブレター!?」
麻琴の食い付き速いな……。え!? ラブレターなの……。貰ったの初めてだ……。って、そりゃそうか。
「あたしに何の断りもなく……誰から!」
麻琴がボクの周りで忙しなくステップを踏む。落ち着いて欲しい。
「ユウちゃん、ヒナっち、久しぶりやん。あ、もなかちゃんもいる!」
初美さんが登校してきた。さらに、
「なに、この状況。ヒナっち、カバディでもしてるの?」
そう続けた。ま、そう見えないこともないかも。いや、見えないでしょ。
「いや、聞いてよ綾っち」
珍しく麻琴が説明をして、取り敢えず教室に向かうことになった。教室に向かうと明音さんが飛び出してきた。そういえばこの二人、別々に登校してるんだっけ。ちょっと忘れてたや。
「おはよぉ~」
相変わらずのユルさにホッとする。で、初美さんが靴箱での一件を話すと、
「開けてみようよぉ」
意外な程に食い付いた。なんというか、明音さんは私服の趣味から分かるけど、非常に乙女なのだ。仕方なく今朝の手紙を開けてみることにした。
『姫宮悠希さま
貴女の姿を見かけると、どうしてか胸が苦しくなります。その美しき髪に、唇に、完璧な貴女は一輪の百合のように美しい。私はそんな貴女に恋い焦がれてしまったのです。このようなことを、手紙でしか伝えられない私の臆病さをお許しください。そして願わくは、お返事をいただけたらという所存であります。
実村碧海』
「結構熱烈だよね。それに、誠実な印象かな。ま、あたしの悠希を渡しはしないけど」
読み終えた麻琴はそう締めくくった。その直後、麻琴が素っ頓狂な声をあげた。
「よくよく見たらこの手紙、前の生徒会長からじゃん!」
「え!? ……ほんとだ」
麻琴から手紙をひったくって差出人を確認する。確かに、実村前会長の名前が達筆で記されていた。
「実村先輩か……ふぅむ。美人さんではあったが悠希は渡さない!」
まさか先輩から手紙をもらうなんて。ボク、どこで目立っていたんだろう。困惑するボクをよそに、麻琴は麻琴でなんだか息巻いていた。
「まぁ、そんなことはどうでもいいさ。さっさと断ってきちゃおうぜ」
麻琴が勢い勇んで教室から出ようとするのだが、
「ちょっと待って。取り敢えず始業式があるから!」
そんな感じで学級委員のもなかちゃんに連れられて体育館への移動を始めるのだった。とはいえ、実際に断るのはボクなわけでけっこう緊張感に襲われているのだった。
「や、百合カップル! 久しぶり」
昇降口でもなかちゃんに声をかけられた。彼女こそ、高須先輩の従妹なのだ。まあ、それを知ったのは最近のことだが。というか、呼びかけられ方に大いに誤解があるのだけれど。
「今更ながら、鍵宮の靴箱って便利だよね」
もなかちゃんはボクらの困惑っぷりを気にすることなく、靴を履き替えながらそう言った。確かに、鍵宮の靴箱はロッカータイプで、二枚の板を使って三足置くことも、板を外せばブーツを置くこともできて便利なのだ。ボクの場合は三段にして、上履きのスリッパと体育用の運動靴、登校用の革靴をそれぞれ入れている。そんな靴箱を開けると……ん? 何か落ちてきたぞ?
「え、ら……ラブレター!?」
麻琴の食い付き速いな……。え!? ラブレターなの……。貰ったの初めてだ……。って、そりゃそうか。
「あたしに何の断りもなく……誰から!」
麻琴がボクの周りで忙しなくステップを踏む。落ち着いて欲しい。
「ユウちゃん、ヒナっち、久しぶりやん。あ、もなかちゃんもいる!」
初美さんが登校してきた。さらに、
「なに、この状況。ヒナっち、カバディでもしてるの?」
そう続けた。ま、そう見えないこともないかも。いや、見えないでしょ。
「いや、聞いてよ綾っち」
珍しく麻琴が説明をして、取り敢えず教室に向かうことになった。教室に向かうと明音さんが飛び出してきた。そういえばこの二人、別々に登校してるんだっけ。ちょっと忘れてたや。
「おはよぉ~」
相変わらずのユルさにホッとする。で、初美さんが靴箱での一件を話すと、
「開けてみようよぉ」
意外な程に食い付いた。なんというか、明音さんは私服の趣味から分かるけど、非常に乙女なのだ。仕方なく今朝の手紙を開けてみることにした。
『姫宮悠希さま
貴女の姿を見かけると、どうしてか胸が苦しくなります。その美しき髪に、唇に、完璧な貴女は一輪の百合のように美しい。私はそんな貴女に恋い焦がれてしまったのです。このようなことを、手紙でしか伝えられない私の臆病さをお許しください。そして願わくは、お返事をいただけたらという所存であります。
実村碧海』
「結構熱烈だよね。それに、誠実な印象かな。ま、あたしの悠希を渡しはしないけど」
読み終えた麻琴はそう締めくくった。その直後、麻琴が素っ頓狂な声をあげた。
「よくよく見たらこの手紙、前の生徒会長からじゃん!」
「え!? ……ほんとだ」
麻琴から手紙をひったくって差出人を確認する。確かに、実村前会長の名前が達筆で記されていた。
「実村先輩か……ふぅむ。美人さんではあったが悠希は渡さない!」
まさか先輩から手紙をもらうなんて。ボク、どこで目立っていたんだろう。困惑するボクをよそに、麻琴は麻琴でなんだか息巻いていた。
「まぁ、そんなことはどうでもいいさ。さっさと断ってきちゃおうぜ」
麻琴が勢い勇んで教室から出ようとするのだが、
「ちょっと待って。取り敢えず始業式があるから!」
そんな感じで学級委員のもなかちゃんに連れられて体育館への移動を始めるのだった。とはいえ、実際に断るのはボクなわけでけっこう緊張感に襲われているのだった。
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