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近付く夏と二人の距離

#25 くもり空かえり道

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 ゴールデンウィークと中間テストが終わり、結果も戻ってきて一喜一憂していると五月も残すは一週間だ。ボクはおおよその教科で高い点数を取れ、コネで放り込まれた学校で不安だったが、学年順位も高い位置をキープすることができた。明音さんも一桁順位を何科目かで取っていて、普段どんな風に勉強しているのか聞いてみたが、授業をしっかり聞くのが一番だと返されてしまった。……授業中そこまで集中しているようには見えないのにね。一方の麻琴と初美さんは下から数えた方が早いような順位で、次の金曜の放課後に追試を行うようだ。麻琴には何度も勉強するよう言ってあるのになあ。

    そんな火曜日、家庭科部は活動をしない曜日なので七限が終わると帰り支度を始める。今週は掃除もなくてラッキーだ。すると、普段は部活に直行する麻琴が横から―テスト後に行った席替えにより麻琴はボクの真横にきた―話しかけてきた。

「今日は顧問が出張だから、部活がないんだ。だからさ、一緒に帰ろっか」

 そう言って既にボクのカバンを持って帰る気満々だ。心なしか散歩を待って尻尾を振る犬を連想した。

「じゃ、そうしようか」
「イェーイ♪」

 二人で並んで教室を出て廊下を進む。麻琴と並んでいると、ボク一人の時より向かってくる視線が多いような気がする。……どうしてだろう?

「あたし達……いいカップルに見えるのかもよ?」

 
―――ドンッ―――


    ……転んだ。あまりの衝撃に足をもつれさせてしまったのだ。痛い……。

「だ、大丈夫か?」
「麻琴が突拍子もないことを言うから!!」

 最近のボクは……変だ。麻琴に対して妙に気を張ってるというか……。意識しているせいなのかな。麻琴の好意は確かに嬉しい。ボクだって麻琴のことは嫌いじゃない。ただ、今の自分が麻琴と付き合うのは客観的に見てどうなのか、それが気になってしまうのだ。それからもう一つ思うことがある。なんでボクが女の子になったのに麻琴は男の子になってくれないんだ……と。思ったところで意味はないと知っているのに……。

    立ち上がろうとすると麻琴が自然と手を差し伸べてくれた。立ち上がってスカートに付いた埃を払う。麻琴に一応お礼を言って下駄箱へ向かう。とはいえ、一年生の教室から下駄箱まではそう遠くない。すぐに昇降口が見えてきた。その奥にはどんよりと鈍色の空が広がっていた。

「曇ってるね……もうじき梅雨入りだっけ」

 六月から夏服に衣更えだが、今週は移行期間という訳でボクや初美さんは既に夏服にしてある。麻琴が未だにブレザーを着ているのは違和感がするが……。それよりも今は……、

「麻琴が傘は要らないって言うから……家までもつの?」

 この曇天の中、ボク達は傘を持っていない……。今朝は夏希もお弁当の日だったせいで朝が慌ただしくって天気予報をきちっと見ていないのだ。一抹どころじゃない不安を引っ提げて湿った風をうけながら帰る……。
 
「降ってきたね……急ごうか」
 
    最初はポツポツ、すぐにザーザーと……通り雨ならいいけど。アスファルトをうちつける雨脚は強くて、走ると足下で水が跳ねる。ローファーのお手入れは大変だし靴下に泥汚れはつくし、でも何より困るのはブラウスが透けること!! もう!! ぜったい麻琴ってばこれを承知でブレザー着てるんだ! ていうか、走るの、つらい……。つらい……。
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