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不本意ながら花の女子校生です

#8 あらためまして

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 お弁当も食べ終わり、のんびりタイムです。
そこで改めて明音さんを観察してみる。背はそれほど高くなくて、ボクと麻琴の中間くらい。髪型はツーサイドアップといってツインテよりも結び目が奥だってお母さんが言っていた……と思う。ツインテは真横だけどツーサイドアップは違うみたいな判断でいいのかな? 違ったら教えて!! ……って私は誰に聞こうとしたんだろう……。ちなみにボクは、いろいろ試した末にポニテにした。ゴム一個で済むし可愛いし。でもなぁ……ツインテいいよね……。でもツインテにしたら麻琴に、やっぱりツンデレはツインテ似合うよなって言われそうだからやめておこう。
明音さんは可愛さもある。小動物系で護りたくなる可愛さだね。あどけないという印象も受ける。

「明音さん、支倉っていう名字も珍しいよね?」

  明音みんとという一発じゃ読めない名前もだが名字も珍しい。

「なんかねぇ~北の方にそんな地名があるらしいよぉ」

  ……この娘、ユルいな……地震とかきたらアウトな娘だね。感じた印象に狂いはなかったのよ。

「気になるんだけどさ、さん付けは……会って初日だから仕方ないけど……何であたしだけ名字で呼ばれてる? ねぇ、ユウちゃん?」

  話に乱入したのは初美さん。初美さんは……だって。

「ナンパみたいな登場だったし、好きに呼んでって……」

  ボクは初美さんを初美さんと呼ぶけど、初美さんにはユウちゃんって呼んでもらっています。あまり悠希と呼ばれるのが好きではないというキャラ付けですね。

「そうだけど……むむ」
「ま、初美さんって呼ばれて名字だと気付かれる人なんて男の人くらいなんじゃないかな?」

  麻琴が正論を言った。麻琴は良くも悪くも素直だ。そこが天然ジゴロである所以だろうか。

  そうして喋っていると昼休みの終わりのチャイムが鳴った。それぞれが席に戻る。とはいえ、四人して一直線だけどね。明音さんを先頭に四人が続く。暫らくすると担任の村瀬先生がプリントの束を抱えて戻ってきた。
どうやら、午後の時間を利用して自己紹介をするようだ。それと並行して掲示物だとか係り決めも行うらしい。三十人程のクラスなので一人一分でも三十分以上かかる。学期初めは忙しい。

「じゃあ、一番から。井口」

  先生のやる気のない声から自己紹介がスタートした。この先生、大丈夫なのだろうか。勤務態度ないし健康状態とか。村瀬先生を眺めながら首をかしげていると、麻琴が振り返って口を開いた。

「悠希、何て言えばいいかな?」
「え、ボクだってこういうのは苦手なんだけど……」
「そうだったね。まぁ、もう少し考えてみるよ」

  昔から自己紹介は苦手だった。好きなことで家事を挙げると笑われたからである……いや、今ならもういいのかな。諸々考えているうちに、自己紹介は明音さんの番まで進んでいた。


「出席番号21番、支倉明音です。出身校は田島南です。吹奏楽やってました。えっとぉ……そう! 明るい音って書いてミントと読みます。アカネさんと読み間違えられることが多いのでぇ困ったら名字で呼んでくださいね。名字の読み方をド忘れしてしまったらクラちゃんって呼んでください。たぶん振り向きますから。それじゃあ、これからよろしくですぅ」

  明音さんはあのユルい口調を直そうとしてはいるんだね。直ってないけど……。あと、吹奏楽部だったんだぁ。実質運動部だって聞くけど、大丈夫だったのかなぁ。


「はい、出席番号22番の初美綾です。呼ばれ方は……もう気にしません。出身校は田島南中で明音とは親友です。スポーツは実際にプレイするのも観戦するのも大好きです。中学では長身を活かしてバスケやってました。高校では新しい競技に挑戦してみたいです。けっこう気さくな人柄だと思うのでガンガン話し掛けてオッケーですよ!そんじゃ、ヨロ~」

  軽いな……ノリが。呼ばれ方は気にしないんだ……。責任の所在は……ボクか……な? にしても、バスケットボールやってたんだ……ふぅん。ボクの少年時代―あながち間違った表現ではないと思う―はインドア派だったからなぁ……。今もだけど……。


  さあ次は懸念材料の……。

「出席番号23番、雛田麻琴です!! 中学時代はヒナッチって呼ばれるのが多かったので、呼んでくれる方を募集しちゃいます。体の七割をノリとテンションで構成されている人間だって言われたことがありますが、それって水分足りてないよね? ノリとテンションって水に溶けるのかな? なんて、どうでもいいことを言っちゃいましたが、好きな食べ物は唐揚げで、好きなものは可愛いものです。特に、姫宮悠希は格別でっ、もうあたしは嫁だと――――いてっ……以下略して、よろしく!!」

  最後に人差し指と中指の二本を、こめかみの辺りから手首のスナップで決めるジャニーズみたいなモーションを繰り出す麻琴に、アンタなんなんだよって言いたくなった。

  さて、ボクのことを公然と嫁だとほざく麻琴に制裁をくだして立ち上がる。順場回ってきちゃった……まずは、

「勘違いしないでねっ!! ボクと麻琴は単なる幼馴染みで、別段深い関係なんかじゃなくてって、そもそも女子同士だしそんなんあり得ないんだから!!――――なによ麻琴!?」
「落ち着こう? 冷静に、悠希らしくないよ?」

  しまった……。またツンデレ現象が……。気が動転していたかも……でもさ、

「いや麻琴のせいで!! ……あぁ、もう! ―――ふぅ、あらためまして出席番号24番、姫宮悠希です。重ねて申し上げますが、麻琴とは幼馴染みなだけです。土橋一中の出身です。特技は家事全般で料理は趣味でもあります。これから一年、よろしくお願いします」

  終わった……。私の高校デビュー終わった……。意外と響く拍手と生暖かい視線に、残りの数人の自己紹介の時間を突っ伏して過ごすのだった……。だって、

「ボクっ娘だ!」
「ツンデレだ!」
「キャラ濃い!」
「胸が大きい!」

  といった声が聞えてくるんだもの。というか最後、それセクハラだからね。いくら女の子の発言でも。



  最後に、ボクはツンデレじゃありませんから!!
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