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5話

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 見えてきたのは異世界あるあるな石積みの壁に囲まれた街だった。中世のヨーロッパ風というか、そんな感じ。

「うわぁ、すごいね」
「うん、これぞ異世界って感じ!」

 テンションが上がってきた私たちは門での審査待ちをしていた。列は長いけど周囲の話を聞いていると異世界の基本的な知識が手に入る。今から入る街の名前はインティスというらしい。サザンガルドという国では五指に入る商業都市らしい。

「次、身分証を提示してくれ」

 ようやく私たちの番だ。私たちはギルドカードを提示する。

「そっちの嬢ちゃんもか。ちょっと待ってな」

 そう言って門番さんはギルドカードを受け取り、水晶玉みたいなものにかざしていた。

「問題ないな。通ってよし」

 本物かどうかを確認するためのマジカルなパソコンみたいなものなのだろう。なにがどう問題ないのか知るすべはないけれど、まぁ気にしたら負けということにしておこう。

「ありがとうございます!」

 こうして私たちはインティスへと入ることが出来た。
 街に入った私たちはまず宿を探すことにした。日が落ちかけているし、街を探検したいという気持ちはあるが、それには拠点が必要だと思ったからだ。和花ちゃんも反対はしていなかったのでそのまま宿屋に向かったんだけど……ここでも問題が起きていた。それは……物価が分からないということだ。
 あまり安宿に泊まるのは環境的にもプライバシーとかセキュリティとか不安だが、高い宿に泊まってはお金はすぐ尽きる。ほどよいところをどうやって探そうか。

「ギルドで聞いてみるのはどうだろう?」
「なるほど! それはいいね」

 となるとギルドの場所は……あそこかな。いかにも冒険者がたむろしている場所がある。

「じゃあ行こっか」
「うん!」

 ギルドは荒くれみたいな冒険者たちが集まっているわりには落ち着いた雰囲気だった。酒場みたいなところもあるけれど、そんなに騒がしくない。カウンターで仕事をしている女性に、女性二人で泊まれる宿について情報を聞き出すことにした。

「すみません」
「はい、なんでしょうか?」

 受付にいる女性に話しかけると営業スマイルで対応してくれる。こういうところってなぜか緊張する。

「えっと、二人で泊まれる宿を探しているんですが……」
「あぁ……。申し訳ないのですが、ギルドが特定の宿屋を贔屓にするわけにもいかず、ご紹介というのが難しいのです」

 返ってきた答えは予想外のものだった。確かにギルドが宿を紹介したら、冒険者が特定の宿に集まってしまうし、紹介する見返りに金銭を……なんてなったら汚職の温床になってしまう。とはいえ、宿を決められないのも困る。野宿なんて嫌だからね。

「うーん、困ったわね。どうしようか」

 和花ちゃんが受付嬢に聞こえないように小声で話しかけてくる。正直言って私はそんなにお金を持っているわけではないのだ。えいっと飛び込んだ宿が高級だったらどうしよう。

「じゃあ、相場だけ教えてもらっていい?」
「えっと……一人一泊銅貨五枚くらいです。朝と夜の食事付きです」

 銅貨は十枚で銀貨一枚で、銀貨十枚で金貨一枚に相当するってことなので、銅貨でいうところの二百枚を持っているわけだ。宿代だけで二十日分はある。それだけあれば、この世界の情報も集められるだろう。

「じゃあ、取り敢えず参考にさせてもらいますね」

 それだけ言って私たちはギルドを出た。宿を見つけないとなぁ。
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