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#001 序幕

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 最初はただの異世界転生ものだって思ってた。チート性能の剣を渡されて、可愛い姫と旅をして最終的には魔王を討つ……その後は姫と子をもうけて俺が国王だって、そう思ってた。気候も安定していて、言語も理解できる。飯だって美味い。雑魚の魔物は一撃で仕留めてきた。ある一件の後は剣の修行も真面目にやってきた。なのに……いや、だからこそか。

「ぐはっ……次の、魔王は、貴様、だ……ふは、ふはははは」

 魔王は斃れた。最後の一撃は俺のものではなかったが、仲間が……俺の仲間が魔王を倒したんだ。強大な魔力に魅入られ、己が肉体すら魔力に委ね、その命が尽きれば存在全てが霧散する、そんな魔物を統べる王……魔王が、死んだ。世界はこれで、平和になるのか? そしたら……俺は、俺たちは……どうすればいいんだ?


「――――!!」

 目を覚ますと暗闇の中で温かな光をともす熾火が目に映った。それから見えたのは、信頼できる仲間たちの姿。美しい姫君、誇り高き令嬢、実直な青年騎士、心優しい女性騎士、豪毅な女剣士、無垢な元暗殺者。各々が仮眠を取る中、姫に声をかけられた。

「ソウヤ。どうしました? ……よくない未来が見えたのですか?」
「いや、心配しないでくれ。アリーシャこそ、眠れないのか?」

 魔王領の中枢まで来てもその美しさは損なわれなかった。麗しの、最愛の姫君は憂いを帯びた双眸をこちらへ向ける。黄金色の瞳が炎をうけて夕陽のような色を灯す。

「不安なんです。魔王とは何者なのか……それから、本当に倒せるのか」
「心配すんなって。俺がついてる。絶対に守ってみせるから、先のことを考えていようぜ。なぁアリーシャ、魔王を討って国に帰ったら何したい?」

 俺の肩に身を委ねるアリーシャ。そんな彼女が愛おしくて、ぎゅっと抱き寄せる。彼女の体温を感じると、さっきまで見ていたはずの何かすら、どうでもよくなってくる。

「そうですね、まずは凱旋パレードでしょうか。私たちの帰還を国中の民が喜んでくれるはずです。それから――ふふ、今言うのは恥ずかしいですね」

 俺たち七人でここまで来たんだ。魔王はもうすぐそこ、この結界がなければとうに感知されているだろう。万全の調子で魔王を討つ。そのためにも、もう一眠りするか。

「今は休もう。いよいよ、明日なんだから」
「えぇ。ありがとう……ソウヤ」
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