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#1 溜息をついても美少女(わたし)
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冬の旧校舎は曇り空も相まって薄暗く、そして寒い。
そんな旧校舎の一室でわたしは部活の集まりに参加していた。
「では今年の活動も今日で終了だね。今年は部としては冬コミには出ないけど、個人で参戦するなら体調管理に気をつけて、あと危ないカメコからは逃げるようにね。以上! いい年末年始を過ごしてね!!」
今年一年の活動を会長の吾妻愛結先輩が総括し解散となった。正直、参加しなくたって問題はなかったけど、他に用事もないから顔を出してみた。
ここは星花女子学園漫画研究会、メンバーが個々人で描いた漫画を発表したりコスプレを披露したりする集まり。だけれど、今年からすっかり腑抜けてしまった。
理由はシンプル。絶対的なエースだったエヴァンジェリン・ノースフィールド先輩が卒業してしまったからだ。美人で優しくて画力もあって、そして何より周りの人を動かすカリスマ性があった。漫研には描くジャンルで別れる百合派と薔薇派という派閥があるが、エヴァ先輩が会長の時は、薔薇派だろうがエヴァ先輩を好いていた。
そんな先輩が引退し、薔薇派のトップが会長になり一年がたった。今年の文化祭で出した本は少なくとも中三のわたしが入部して以来、初めて売り尽くせなかった。文化祭が終わって百合派の領袖である愛結先輩が会長になったけど……派閥どころか会全体の活気がない。
「はぁあ……」
「桃花ちゃんどうしたの? 溜息なんて。可愛いお顔が台無しだよ?」
窓に向かって溜息をつくわたしに、帰り際の愛結先輩が声をかける。
「愛結先輩、わたしの可愛さは溜息をついても揺るがないです。むしろ憂いを帯びて磨きがかかりますよ?」
だってわたしは美少女だから。
「あはは。君は相変わらずだね。で、どうしたの?」
「エヴァ先輩が卒業してもうじき一年になっちゃうんだと思いまして。先輩がいなくなってから、コスプレする人も減っちゃって。もっとわたしをチヤホヤしてほしいのに」
エヴァ先輩のコスプレは衣装が自作とは思えないほど高クォリティーで、セクシーかつキュート。そいて何よりイギリス生まれの本場の金髪が数多くのヒロインを表現していたのだ。
わたしの作る衣装もいっぱいほめてくれたし、小物づくりのアイデアもいっぱい出してくれた。エヴァ先輩がいるときにコスプレをしていたメンバーは、ほとんど衣装をエヴァ先輩に頼っていて、結果として先輩がいなくなったらコスプレをしなくなり、会から離れる人も出た。……しょうがないけど、少し悔しい。
「太陽みたいな人だったよね、エヴァちゃん先輩は。桃花ちゃん、チヤホヤしてくれる人もいいけど、真剣に愛してくれる人を見つけるのも、いいんじゃないかな」
この学校では当たり前のように女の子同士が恋愛をしている。愛結先輩にも彼女がいる。詳しくは知らないけれど。
「わたし、自分より可愛い人とじゃなきゃ付き合いたくないです」
「それはハードル高いねぇ。いい人、見つかるといいね」
先輩はそう言って、今度こそ部屋を出て行った。わたしをもっと可愛くしてくれる人、それはきっとわたしより可愛い人。
「さぁて、寮に戻ろうかな」
この学校には寮が四棟あって、わたしが住んでいるのは中等部の桜花寮といって二人部屋の寮だ。
「ただいまーって、いないか」
ルームメイトの浅倉紗那も彼女持ち。大方彼女の部屋でよろしくやっているのだろう。紗那の彼女のルームメイトが、居場所がないのか談話室の主となっていることは周知の事実だ。
まぁ、一人の方がコスプレ衣装の作成にも集中できていいんだけどさ。
そんな旧校舎の一室でわたしは部活の集まりに参加していた。
「では今年の活動も今日で終了だね。今年は部としては冬コミには出ないけど、個人で参戦するなら体調管理に気をつけて、あと危ないカメコからは逃げるようにね。以上! いい年末年始を過ごしてね!!」
今年一年の活動を会長の吾妻愛結先輩が総括し解散となった。正直、参加しなくたって問題はなかったけど、他に用事もないから顔を出してみた。
ここは星花女子学園漫画研究会、メンバーが個々人で描いた漫画を発表したりコスプレを披露したりする集まり。だけれど、今年からすっかり腑抜けてしまった。
理由はシンプル。絶対的なエースだったエヴァンジェリン・ノースフィールド先輩が卒業してしまったからだ。美人で優しくて画力もあって、そして何より周りの人を動かすカリスマ性があった。漫研には描くジャンルで別れる百合派と薔薇派という派閥があるが、エヴァ先輩が会長の時は、薔薇派だろうがエヴァ先輩を好いていた。
そんな先輩が引退し、薔薇派のトップが会長になり一年がたった。今年の文化祭で出した本は少なくとも中三のわたしが入部して以来、初めて売り尽くせなかった。文化祭が終わって百合派の領袖である愛結先輩が会長になったけど……派閥どころか会全体の活気がない。
「はぁあ……」
「桃花ちゃんどうしたの? 溜息なんて。可愛いお顔が台無しだよ?」
窓に向かって溜息をつくわたしに、帰り際の愛結先輩が声をかける。
「愛結先輩、わたしの可愛さは溜息をついても揺るがないです。むしろ憂いを帯びて磨きがかかりますよ?」
だってわたしは美少女だから。
「あはは。君は相変わらずだね。で、どうしたの?」
「エヴァ先輩が卒業してもうじき一年になっちゃうんだと思いまして。先輩がいなくなってから、コスプレする人も減っちゃって。もっとわたしをチヤホヤしてほしいのに」
エヴァ先輩のコスプレは衣装が自作とは思えないほど高クォリティーで、セクシーかつキュート。そいて何よりイギリス生まれの本場の金髪が数多くのヒロインを表現していたのだ。
わたしの作る衣装もいっぱいほめてくれたし、小物づくりのアイデアもいっぱい出してくれた。エヴァ先輩がいるときにコスプレをしていたメンバーは、ほとんど衣装をエヴァ先輩に頼っていて、結果として先輩がいなくなったらコスプレをしなくなり、会から離れる人も出た。……しょうがないけど、少し悔しい。
「太陽みたいな人だったよね、エヴァちゃん先輩は。桃花ちゃん、チヤホヤしてくれる人もいいけど、真剣に愛してくれる人を見つけるのも、いいんじゃないかな」
この学校では当たり前のように女の子同士が恋愛をしている。愛結先輩にも彼女がいる。詳しくは知らないけれど。
「わたし、自分より可愛い人とじゃなきゃ付き合いたくないです」
「それはハードル高いねぇ。いい人、見つかるといいね」
先輩はそう言って、今度こそ部屋を出て行った。わたしをもっと可愛くしてくれる人、それはきっとわたしより可愛い人。
「さぁて、寮に戻ろうかな」
この学校には寮が四棟あって、わたしが住んでいるのは中等部の桜花寮といって二人部屋の寮だ。
「ただいまーって、いないか」
ルームメイトの浅倉紗那も彼女持ち。大方彼女の部屋でよろしくやっているのだろう。紗那の彼女のルームメイトが、居場所がないのか談話室の主となっていることは周知の事実だ。
まぁ、一人の方がコスプレ衣装の作成にも集中できていいんだけどさ。
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