真紅の想いを重ねて

楠富 つかさ

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よはのつきかな

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 年が明けすでに今日は一月四日。昨日と一昨日は寮の談話室で駅伝を見て過ごし、今日はなんとなく冬休みの宿題を見直している。紗彩ちゃんは明日、寮に戻ってくるようだ。多分、私が一人で考えをまとめられる時間を用意しようと、気を遣ってくれたんだと思う。
 学校は金曜日から再開だけど、すぐに成人の日を含んだ三連休が待っている。その連休で、近くの商店街のお祭りである丁未祭が行われる。

「ロゼ先輩と……お祭り」

 なんなら初詣も一緒に行きたくて、神社にはまだ行っていない。先輩のことばかり考えて、本を読んでも手がつかず、完全に恋なんだなぁって自覚が遅ればせながら沸いている。
 ロゼ先輩は誰に対しても平等に優しいから、特定の誰かが先輩の隣にいるっていう様子は想像できない。そこに私が入り込もうなんてもっと想像できない。けれど、いつまでも悩んでいられない。

「出てくれるかな……」

 その日の夜、意を決して私はロゼ先輩に電話をかけた。2コールくらいがすごく長く感じられたけれど、先輩は電話に出てくれた。

「あ、こんばんは……ロゼ先輩、もう寮ですか?」
「こんばんは紅凪ちゃん、ちょうど今日のお昼に帰ってきたところだよ」

 久しぶりに聞く先輩の声に、胸がぽかぽかする。先輩と一緒にいたら、冬の寒さだってへっちゃらに思えてしまいそうだ。

「あの、今度のお祭り……一緒に行きませんか?」
「うん、いいよ。じゃあ部のみんなにも――」
「違うんです。先輩と二人で行きたいんです」

 お祭りに行きたいって言ったら、きっと他の人も誘う……そんな予想はとうについていた。だから、先輩の言葉をさえぎって、二人きりがいいと伝える。電話だからだろうか、不思議と勇気がわくというか、きっと目の前にいたら恥ずかしくて言えなくなってしまいそうなことが、今ならはっきりと言える。

「先輩が好き。先輩の特別になりたい……だから、お祭りは二人きりで行きたいんです」

 言ってしまった。身体中がかっと熱くなって、通話を繋ぎながらベランダに出る。冬の空には月が煌々と輝いていて、その冷たい輝きと冬の外気が火照った私を冷ましてくれる。なのに、熱い想いは堰を切ったようにあふれてきてしまう。

「先輩の明るいところ、優しいところ、いつだって真剣なところ、時折見せる守りたくなるような儚さも全部、全部が大好きです。先輩の隣にいられる私になりたくて……先輩の夢を、私も一緒に見たいんです」

 わずかな沈黙が、耳が痛くなるほど長く感じられた。

「気持ちは嬉しい。だから、考えさせてほしい。……お祭りの日に返事するから、二人で、行こうね」
「……はい。ありがとうございます」

 すぐに振られることはなかった……けれど、お祭りは思い出作りで……その場で……嫌な考えを振り払うように電話を切った。
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