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第5話 金色乙女との邂逅
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「さてさて、原稿書かないと」
インタビューの内容をまとめて記事にするのが新聞部のお仕事。原稿を書くためのパソコンは旧校舎にある新聞部の部室に設置されている。寮から行く距離があるのだが、恵玲奈にとってはその距離も、脳内で文章をまとめるのにちょうどよかった。
「おや、あの金髪……」
旧校舎を目指して歩く恵玲奈の視界に、太陽のようにまぶしい金色の髪が入ってきた、
自然な金色と素晴らしいスタイル、そして制服にトートバッグを肩にかけているだけで絵になる存在感、その持ち主とは高等部一年のエヴァンジェリン・ノースフィールドであった。漫研に所属するエヴァに対し、恵玲奈は六月ごろに新聞部としてインタビューしたことがある。
「Yeah Elena, it's been a long time ago! I missed you. Here, let's hug you?」
そのインタビューの差異に、百合談義という共通の趣味から一気に意気投合して、こうして会う度に情熱的なハグをする仲になっていた。
キスをせがまれることも多々あるものの、恵玲奈はなにかと理由をつけて遠慮している。加えて、恵玲奈という洋風な名前のせいか英語で声をかけられることがある。
「英語で声かけられても全部は理解出来ないって言ったでしょ? ハグは分かったけど」
流石にネイティブのナチュラルなクイーンズイングリッシュを英検すら取ったことない一般的な高校生が理解するのは難しい。恵玲奈は文系で、英語の成績も決して悪くはないのだが、実用として英語に触れることがそう多くはないのだ。
「そうでしたわ。エレナ相手だとついつい」
「あと、私こう見えて先輩なんだよねぇ」
長身で出るところも出ているイギリス美人のエヴァに比べて、恵玲奈は日本の標準体型からさらに一回りいろいろと小さい。日本人特有の童顔もあって、端から見て恵玲奈が年上とはなかなか分かりにくいだろう。
「それもそうでしたわね。日本人は先輩に対して礼儀正しくしなければって恋葉も言ってましたわ」
恋葉――藤宮恋葉はエヴァのルームメイト。恵玲奈と直接の面識はないが、同じく高等部の桜花寮で過ごしているので、ひょっとしたら見たことあるかもしれないくらいの認識である。部活にも所属していないようで、恵玲奈はエヴァとの会話でなんとなくの人となりは聞かされている。
「そういえば、エヴァちゃんに聞きたいことがあったんだった。漫研で作ったアンソロが生徒会の検閲で不可くらったって本当?」
新聞部ならびに恵玲奈としては、臨海及び林間学校のごたごたでちょっと裏を取るのが遅れているネタなのだが、生徒会が漫研の作品を星花祭で頒布するなと命じたらしい。その辺をせっかくだし当人から聞いてみよう。
「oh その件ですか。はい、事実ですわ。渾身の出来だったのですが……」
「そっかあ。残念だったね。エヴァちゃんの描く絵は私も好きだから。……まぁ内容はともかく、ね」
頒布停止でしょんぼりとした様子のエヴァも、恵玲奈に絵を褒められて顔色をぱっと明るくする。
「でも大丈夫です。生徒会の人たち全員が読んで下さったということは、多くの人に読んでもらうという目標は達成できたということですから!」
彼女の金髪と同じくらいの煌めきが溢れる笑顔に、恵玲奈もつい相好を崩す。
「困っているとすれば在庫ですわね。エレナ……先輩も一冊どうぞ」
一冊手渡された冊子の表紙はむつみ合う二人の女の子。
「うーん……前回のは確かノーパンだったからパンツを二人ともちゃんと穿いているだけ成長はしているのかな……? ただ陰影なのか色の濃淡なのか、その……クロッチにあたる部分だけ濃く塗られてるのは……ねぇ。まぁ、とにかくありがとね」
「いえいえい。そういえば先輩って桜花寮でしたかしら?」
「まさかルームメイトにも渡せと」
「はい、そういうことです。よろしくお願いしますね、セ・ン・パ・イ♡」
「まぁ後輩の頼みを断るというのも野暮だし、せっかくなのだからこれも受け取ってあげよう」
恵玲奈は受け取った同人誌の表紙同士を合わせてトートバッグにしまう。なお裏表紙はデフォルメしたキャラクターが描かれており、いたって健全な感じであった。
「そう言えばお金は? いいの?」
二冊とも同人誌をトートバッグに納めた恵玲奈は財布を探すのだが、てこずっている。
「お金は結構ですわ。では、そろそろ部屋に戻りますわ。ごきげんよう」
そう言って立ち去るエヴァを見送る恵玲奈。その金色の髪から香る良い匂いにクラクラしそうになる。あれだけ魅力的かつ積極的なエヴァと毎日過ごして、ルームメイトの子は大丈夫だろうかと心配する恵玲奈。
「そんなことより財布、財布ぅ……あ! 須川さんの部屋か!!」
取材時にペンケースと間違えて出してしまったことを恵玲奈は思い出した。
「こりゃ思ってた以上に早い再会になっちゃったや」
そんなことを口にしつつ、恵玲奈は再び寮へ向かうのだった。
インタビューの内容をまとめて記事にするのが新聞部のお仕事。原稿を書くためのパソコンは旧校舎にある新聞部の部室に設置されている。寮から行く距離があるのだが、恵玲奈にとってはその距離も、脳内で文章をまとめるのにちょうどよかった。
「おや、あの金髪……」
旧校舎を目指して歩く恵玲奈の視界に、太陽のようにまぶしい金色の髪が入ってきた、
自然な金色と素晴らしいスタイル、そして制服にトートバッグを肩にかけているだけで絵になる存在感、その持ち主とは高等部一年のエヴァンジェリン・ノースフィールドであった。漫研に所属するエヴァに対し、恵玲奈は六月ごろに新聞部としてインタビューしたことがある。
「Yeah Elena, it's been a long time ago! I missed you. Here, let's hug you?」
そのインタビューの差異に、百合談義という共通の趣味から一気に意気投合して、こうして会う度に情熱的なハグをする仲になっていた。
キスをせがまれることも多々あるものの、恵玲奈はなにかと理由をつけて遠慮している。加えて、恵玲奈という洋風な名前のせいか英語で声をかけられることがある。
「英語で声かけられても全部は理解出来ないって言ったでしょ? ハグは分かったけど」
流石にネイティブのナチュラルなクイーンズイングリッシュを英検すら取ったことない一般的な高校生が理解するのは難しい。恵玲奈は文系で、英語の成績も決して悪くはないのだが、実用として英語に触れることがそう多くはないのだ。
「そうでしたわ。エレナ相手だとついつい」
「あと、私こう見えて先輩なんだよねぇ」
長身で出るところも出ているイギリス美人のエヴァに比べて、恵玲奈は日本の標準体型からさらに一回りいろいろと小さい。日本人特有の童顔もあって、端から見て恵玲奈が年上とはなかなか分かりにくいだろう。
「それもそうでしたわね。日本人は先輩に対して礼儀正しくしなければって恋葉も言ってましたわ」
恋葉――藤宮恋葉はエヴァのルームメイト。恵玲奈と直接の面識はないが、同じく高等部の桜花寮で過ごしているので、ひょっとしたら見たことあるかもしれないくらいの認識である。部活にも所属していないようで、恵玲奈はエヴァとの会話でなんとなくの人となりは聞かされている。
「そういえば、エヴァちゃんに聞きたいことがあったんだった。漫研で作ったアンソロが生徒会の検閲で不可くらったって本当?」
新聞部ならびに恵玲奈としては、臨海及び林間学校のごたごたでちょっと裏を取るのが遅れているネタなのだが、生徒会が漫研の作品を星花祭で頒布するなと命じたらしい。その辺をせっかくだし当人から聞いてみよう。
「oh その件ですか。はい、事実ですわ。渾身の出来だったのですが……」
「そっかあ。残念だったね。エヴァちゃんの描く絵は私も好きだから。……まぁ内容はともかく、ね」
頒布停止でしょんぼりとした様子のエヴァも、恵玲奈に絵を褒められて顔色をぱっと明るくする。
「でも大丈夫です。生徒会の人たち全員が読んで下さったということは、多くの人に読んでもらうという目標は達成できたということですから!」
彼女の金髪と同じくらいの煌めきが溢れる笑顔に、恵玲奈もつい相好を崩す。
「困っているとすれば在庫ですわね。エレナ……先輩も一冊どうぞ」
一冊手渡された冊子の表紙はむつみ合う二人の女の子。
「うーん……前回のは確かノーパンだったからパンツを二人ともちゃんと穿いているだけ成長はしているのかな……? ただ陰影なのか色の濃淡なのか、その……クロッチにあたる部分だけ濃く塗られてるのは……ねぇ。まぁ、とにかくありがとね」
「いえいえい。そういえば先輩って桜花寮でしたかしら?」
「まさかルームメイトにも渡せと」
「はい、そういうことです。よろしくお願いしますね、セ・ン・パ・イ♡」
「まぁ後輩の頼みを断るというのも野暮だし、せっかくなのだからこれも受け取ってあげよう」
恵玲奈は受け取った同人誌の表紙同士を合わせてトートバッグにしまう。なお裏表紙はデフォルメしたキャラクターが描かれており、いたって健全な感じであった。
「そう言えばお金は? いいの?」
二冊とも同人誌をトートバッグに納めた恵玲奈は財布を探すのだが、てこずっている。
「お金は結構ですわ。では、そろそろ部屋に戻りますわ。ごきげんよう」
そう言って立ち去るエヴァを見送る恵玲奈。その金色の髪から香る良い匂いにクラクラしそうになる。あれだけ魅力的かつ積極的なエヴァと毎日過ごして、ルームメイトの子は大丈夫だろうかと心配する恵玲奈。
「そんなことより財布、財布ぅ……あ! 須川さんの部屋か!!」
取材時にペンケースと間違えて出してしまったことを恵玲奈は思い出した。
「こりゃ思ってた以上に早い再会になっちゃったや」
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