4 / 8
4話
しおりを挟む
森を抜けると草原が広がっていた。
『じゃあ、ちょっと試運転してみようかな。リスタ、あの敵が見える?』
「うん、見えるよ」
『じゃあ、私を持って構えて』
メイの指示に従い私は盾を構える。草原の向こうから大きな体躯の猪型の魔物がこちらに猛スピードで走ってくる。体長は2メートルくらいだろうか。そんな魔物が私を目がけて走ってくる様は圧巻だ。しかし、私は恐怖を微塵も感じていない。メイと心を通わせたことで、私も強くなったのだろうか……きっとそうだ。
『リスタ! 来るよ!!』
メイの言葉と同時に猪型魔物が、私の目の前にまで迫る。だが盾から生み出される不可視のバリアで猪の突進が押しとめられる。さらにこのまま……。
『リスタ、魔法いくよ!』
「うん、赤き焔よ火球となりて疾く奔れ――ファイアボール!!」
盾の宝玉から放たれた火球が猪の顔面に直撃する。その一撃で、魔物は絶命した。
『おー! すごいすごい!』
メイがテンションを上げて私の周囲を飛び回る。どうやら契約者がいれば多少は自分で動けるらしい。ふわふわと浮遊する盾というのは、伝説の防具といえどちょっとだけ気味悪い。
ふとメイから視線を外すように空を見上げると、太陽が真上にあったのでこの猪をお昼にしようと思った時、目の前がグニャリと歪んだ気がした。いや……歪んでいるのは世界か? それとも私なのか……?
『リスタ!!』
「っ……」
一瞬ふらついてしまったけど、すぐに体勢と呼吸を落ち着かせる。初めて魔法を行使したことで少し魔力酔いみたいな症状を起こしちゃったのかな。取り敢えず、猪の解体をしなくっちゃ。食事をすれば改善するだろうから。
『大丈夫? ちょっと魔力を流し過ぎたかな?』
詳しい仕組みはよく分からないけれど、どうやらメイ単独で魔法を使うよりも、契約者を通じて魔法を使った方が威力が高いらしい。その過程で私の身体をメイの魔力が流れるわけなんだけど、それで魔力酔いっぽいことが起きたようだ。
「ファイアボール一発でワイルドボアが倒れるって、確かに威力がおかしいよね」
『けっこう黒焦げだけど大丈夫?』
……あまり大丈夫ではないかもしれない。ワイルドボアの素材と言えば牙と毛皮と肉がメインなのだが、肉はどうしても傷みがちだから扱いやすいのは牙と毛皮、今回はファイアボールによって毛皮は焦げているし牙も折れてしまっている。
「お腹側の毛皮はまだ大丈夫そうだから、そっちをメインに剝がそうか」
そう言って私はワイルドボアの背中にナイフを突き立てる。毛皮を剥がし、焦げた部分は切り捨てる。メイに水を出してもらって血を洗い流し、近くの低木にひっかけておく。そうやって乾かしている間に肉を切り取って、枝でつくった串に刺して火にかける。この時の火もメイに出してもらった。
『ごめん……焦げたね』
どうやら久々に契約したメイは魔法の調整のカンが取り戻せていないらしい。焦げた部分を削って食べれば、ほどほどの焼き加減で美味しく食べることができた。
『で、リスタはこれからどうするの?』
確かに。メイと友達になるという目標を意外とすんなり達成してしまった。……これから、どうしようかなぁ。じっくり考えていけばいいさ。
『じゃあ、ちょっと試運転してみようかな。リスタ、あの敵が見える?』
「うん、見えるよ」
『じゃあ、私を持って構えて』
メイの指示に従い私は盾を構える。草原の向こうから大きな体躯の猪型の魔物がこちらに猛スピードで走ってくる。体長は2メートルくらいだろうか。そんな魔物が私を目がけて走ってくる様は圧巻だ。しかし、私は恐怖を微塵も感じていない。メイと心を通わせたことで、私も強くなったのだろうか……きっとそうだ。
『リスタ! 来るよ!!』
メイの言葉と同時に猪型魔物が、私の目の前にまで迫る。だが盾から生み出される不可視のバリアで猪の突進が押しとめられる。さらにこのまま……。
『リスタ、魔法いくよ!』
「うん、赤き焔よ火球となりて疾く奔れ――ファイアボール!!」
盾の宝玉から放たれた火球が猪の顔面に直撃する。その一撃で、魔物は絶命した。
『おー! すごいすごい!』
メイがテンションを上げて私の周囲を飛び回る。どうやら契約者がいれば多少は自分で動けるらしい。ふわふわと浮遊する盾というのは、伝説の防具といえどちょっとだけ気味悪い。
ふとメイから視線を外すように空を見上げると、太陽が真上にあったのでこの猪をお昼にしようと思った時、目の前がグニャリと歪んだ気がした。いや……歪んでいるのは世界か? それとも私なのか……?
『リスタ!!』
「っ……」
一瞬ふらついてしまったけど、すぐに体勢と呼吸を落ち着かせる。初めて魔法を行使したことで少し魔力酔いみたいな症状を起こしちゃったのかな。取り敢えず、猪の解体をしなくっちゃ。食事をすれば改善するだろうから。
『大丈夫? ちょっと魔力を流し過ぎたかな?』
詳しい仕組みはよく分からないけれど、どうやらメイ単独で魔法を使うよりも、契約者を通じて魔法を使った方が威力が高いらしい。その過程で私の身体をメイの魔力が流れるわけなんだけど、それで魔力酔いっぽいことが起きたようだ。
「ファイアボール一発でワイルドボアが倒れるって、確かに威力がおかしいよね」
『けっこう黒焦げだけど大丈夫?』
……あまり大丈夫ではないかもしれない。ワイルドボアの素材と言えば牙と毛皮と肉がメインなのだが、肉はどうしても傷みがちだから扱いやすいのは牙と毛皮、今回はファイアボールによって毛皮は焦げているし牙も折れてしまっている。
「お腹側の毛皮はまだ大丈夫そうだから、そっちをメインに剝がそうか」
そう言って私はワイルドボアの背中にナイフを突き立てる。毛皮を剥がし、焦げた部分は切り捨てる。メイに水を出してもらって血を洗い流し、近くの低木にひっかけておく。そうやって乾かしている間に肉を切り取って、枝でつくった串に刺して火にかける。この時の火もメイに出してもらった。
『ごめん……焦げたね』
どうやら久々に契約したメイは魔法の調整のカンが取り戻せていないらしい。焦げた部分を削って食べれば、ほどほどの焼き加減で美味しく食べることができた。
『で、リスタはこれからどうするの?』
確かに。メイと友達になるという目標を意外とすんなり達成してしまった。……これから、どうしようかなぁ。じっくり考えていけばいいさ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる