2 / 6
#2 〇〇〇〇ビデオ研究会
しおりを挟む
この学園は文武両道を標榜しているわけではない。とはいえ、運動部のバリエーションが多い。そしてそれは文化部もだ。部活動紹介が終わり、私は旧校舎をうろうろとしていた。旧校舎には文化部の部室が多数ある。
厳密にいうと正式な部活動ではない集まりも多々あるらしい。少人数で好きな何かを語り合える仲間ってとても楽しそうだと思って、旧校舎へやってきた私は不意にある看板をみつけた。
『AV研究会』
これはひょっとしたらオーディオビジュアルの研究会なのでは? もしかしたらレコードを聴く機械を持っている人もいるかもしれない。そんな期待に胸を膨らませてドアを開けたら――――
「ようこそ、アダルトビデオ研究会へ!」
「そっち!?」
アニマルの方がいいなと一瞬飛躍した思考を、頭を振って追い出す。室内には五人いた。私を出迎えてくれたハンディタイプのビデオカメラを持った人と、イヤホンをシェアしながらノートパソコンの画面を注視する二人、そして何故かブラウスのボタン全開にしながら手をつないでいる二人。まったくもって意味がわからない。
「とりあえず座って」
「ほら、これでも飲みな」
「ケーキもあるよ。手作りの」
ブラウス全開コンビの、ちょっとスポーティなグレーのブラをした先輩が野菜ジュースを出してくれた。もう一人のめちゃくちゃグラマラスで白いブラをした先輩がパウンドケーキを出してくれた。
「い、いただきます……」
回れ右して帰りたかったがそうもいかず、出されたケーキを切って口に運ぶ。
「おいしい?」
私の顔を覗き込むようにかがむ白ブラ先輩。肌まで白いし、ケーキにおとらず甘い香りがする。
「おいしいです」
私の返事に嬉しそうに微笑む白ブラ先輩。そんな私を見ながら何故か得意げにうなずくビデオカメラ先輩。
「新入りの緊張がほぐれてきたから、我々の自己紹介といこうか。あ、君の自己紹介は後でカメラ回しながらやるから。んじゃ、あたしが当代の会長、高三の青木燎明だ。名前がいかついからアオ先輩とか読んでもらえると助かる。好きなAVのジャンルは寝取りとスワッピングだ」
言っていることの半分くらいしか理解できない。自己紹介でカメラを回すことも寝取りとかスワッピングとか、その辺の意味も分からない。
「次、翼な。ちゃんと好きなジャンルを言うんだぞ」
「マジかよ……。高一の黒崎翼だ。好きなジャンルはまぁ……その、純愛、かな」
「可愛いだろ、あたしの彼女だ」
恥じらうグレーブラ先輩改め黒崎さん(背も高くてカッコいい感じから勝手に先輩だと思い込んでいた)と、黒崎さんの頭をなでるビデオカメラ先輩改め青木先輩。
「そんな可愛い彼女を私に抱かせてるんだから、アオ先輩ってば筋金入りの変態ですよね。私は高等部二年四組の白石久遠よ。好きなAVのジャンルはレズビアンものよ。仲良くしてね」
白ブラ先輩は白石先輩というらしい。白石先輩と黒崎さんが付き合ってるんじゃなくて、黒崎さん先輩と青木先輩が付き合っている……その辺りもよくわからない。
「ほら、君らも自己紹介したまえ」
そう言って青木先輩が相変わらず別の机に向かって、パソコンの画面を見ている二人に自己紹介を促す。
「ん、五十嵐みどり。ちゅーに。どーがのへんしゅーたんとー……好きなジャンルはしろーともの」
「みどりちゃんイヤホン外しなよ、もう。すみません、私は中等部三年の前田ももかです。漫研との掛け持ちで、シナリオ担当、みたいな感じです。その……えっちな、アニメが好きです……」
「あたしと、ももか付き合ってるから、色目使ったらぁ、刺すから」
ぼそぼそとした喋り方で大変危険なことを言い放つみどりちゃんと、そんな彼女をなだめるももかちゃん。ももかちゃんはまともそうだけど……みどりちゃんの影響で近づきがたい感じがする。
にしてもこんな不健全そうな集まりに中学生までいるなんて……。
「他にもメンバーはいるんだが、今日はこんなもんだな。うーし、そんじゃ君の自己紹介を聞かせてもらおうか。名前と出身とぉ。経験人数からだな」
「あ、いや……ほかにも周りたいので今日はか、帰りますね。その、ジュースとケーキありがとうございました!!」
長居は危険と思い、私は大慌てで旧校舎の一室から飛び出すのであった。なんていうか、詳しくはないけどあのまま自己紹介をしていたら、きっと脱がされる展開になりそうだったから……。
厳密にいうと正式な部活動ではない集まりも多々あるらしい。少人数で好きな何かを語り合える仲間ってとても楽しそうだと思って、旧校舎へやってきた私は不意にある看板をみつけた。
『AV研究会』
これはひょっとしたらオーディオビジュアルの研究会なのでは? もしかしたらレコードを聴く機械を持っている人もいるかもしれない。そんな期待に胸を膨らませてドアを開けたら――――
「ようこそ、アダルトビデオ研究会へ!」
「そっち!?」
アニマルの方がいいなと一瞬飛躍した思考を、頭を振って追い出す。室内には五人いた。私を出迎えてくれたハンディタイプのビデオカメラを持った人と、イヤホンをシェアしながらノートパソコンの画面を注視する二人、そして何故かブラウスのボタン全開にしながら手をつないでいる二人。まったくもって意味がわからない。
「とりあえず座って」
「ほら、これでも飲みな」
「ケーキもあるよ。手作りの」
ブラウス全開コンビの、ちょっとスポーティなグレーのブラをした先輩が野菜ジュースを出してくれた。もう一人のめちゃくちゃグラマラスで白いブラをした先輩がパウンドケーキを出してくれた。
「い、いただきます……」
回れ右して帰りたかったがそうもいかず、出されたケーキを切って口に運ぶ。
「おいしい?」
私の顔を覗き込むようにかがむ白ブラ先輩。肌まで白いし、ケーキにおとらず甘い香りがする。
「おいしいです」
私の返事に嬉しそうに微笑む白ブラ先輩。そんな私を見ながら何故か得意げにうなずくビデオカメラ先輩。
「新入りの緊張がほぐれてきたから、我々の自己紹介といこうか。あ、君の自己紹介は後でカメラ回しながらやるから。んじゃ、あたしが当代の会長、高三の青木燎明だ。名前がいかついからアオ先輩とか読んでもらえると助かる。好きなAVのジャンルは寝取りとスワッピングだ」
言っていることの半分くらいしか理解できない。自己紹介でカメラを回すことも寝取りとかスワッピングとか、その辺の意味も分からない。
「次、翼な。ちゃんと好きなジャンルを言うんだぞ」
「マジかよ……。高一の黒崎翼だ。好きなジャンルはまぁ……その、純愛、かな」
「可愛いだろ、あたしの彼女だ」
恥じらうグレーブラ先輩改め黒崎さん(背も高くてカッコいい感じから勝手に先輩だと思い込んでいた)と、黒崎さんの頭をなでるビデオカメラ先輩改め青木先輩。
「そんな可愛い彼女を私に抱かせてるんだから、アオ先輩ってば筋金入りの変態ですよね。私は高等部二年四組の白石久遠よ。好きなAVのジャンルはレズビアンものよ。仲良くしてね」
白ブラ先輩は白石先輩というらしい。白石先輩と黒崎さんが付き合ってるんじゃなくて、黒崎さん先輩と青木先輩が付き合っている……その辺りもよくわからない。
「ほら、君らも自己紹介したまえ」
そう言って青木先輩が相変わらず別の机に向かって、パソコンの画面を見ている二人に自己紹介を促す。
「ん、五十嵐みどり。ちゅーに。どーがのへんしゅーたんとー……好きなジャンルはしろーともの」
「みどりちゃんイヤホン外しなよ、もう。すみません、私は中等部三年の前田ももかです。漫研との掛け持ちで、シナリオ担当、みたいな感じです。その……えっちな、アニメが好きです……」
「あたしと、ももか付き合ってるから、色目使ったらぁ、刺すから」
ぼそぼそとした喋り方で大変危険なことを言い放つみどりちゃんと、そんな彼女をなだめるももかちゃん。ももかちゃんはまともそうだけど……みどりちゃんの影響で近づきがたい感じがする。
にしてもこんな不健全そうな集まりに中学生までいるなんて……。
「他にもメンバーはいるんだが、今日はこんなもんだな。うーし、そんじゃ君の自己紹介を聞かせてもらおうか。名前と出身とぉ。経験人数からだな」
「あ、いや……ほかにも周りたいので今日はか、帰りますね。その、ジュースとケーキありがとうございました!!」
長居は危険と思い、私は大慌てで旧校舎の一室から飛び出すのであった。なんていうか、詳しくはないけどあのまま自己紹介をしていたら、きっと脱がされる展開になりそうだったから……。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
感情の交差点 ~憧れ惹かれ学ぶ少女たち~
楠富 つかさ
キャラ文芸
公立中学校で成績最下位になってしまった主人公、二階堂きさらは母に促され学習塾の夏期講習を受けることになった。そこで出逢ったのは中高一貫のお嬢様学校に通い、塾でトップの成績を誇る一木愛夢。彼女に憧れ、惹かれ……学ぶ楽しさを知るきさらは、愛夢の通う星花女子学園の高等部を受験することを決意。これは二人の少女の感情が交差する物語。
実る果実に百合を添えて
楠富 つかさ
恋愛
私、佐野いちごが入学した女子校には生徒が思い思いのメンバーを集めてお茶会をする文化があって、私が誘われた”果実会”はフルーツに縁のある名前の人が集まっている。
そんな果実会にはあるジンクスがあって……それは”いちご”の名前を持つ生徒と付き合えば幸せになれる!? 待って、私、女の子と付き合うの!?
私を買ってるクラスの陰キャが推しのコンカフェ嬢だった話
楠富 つかさ
青春
アイドルが好きなギャル瀬上万結(せがみ まゆ)はアイドルをモチーフとしたコンセプトカフェにドハマりしていしまい金欠に陥っていた。そんな夏休み明け、ギャル友からクラスメイトの三枝朱里(さえぐさ あかり)がまとまったお金をATMで下ろしている様をみたというのでたかることにしたのだが実は朱里には秘密があって――。
二面性のある女子高生同士の秘密の関係、結びつけるのはお金の力?
※この物語はフィクションであり実在の人物・地名・団体・法令とは一切何ら全くもって関係が本当にございません。
火花散る剣戟の少女達
楠富 つかさ
ファンタジー
異世界から侵略してくる魔獣たちと戦う少女たち、彼女らは今日も剣と異能で戦いに挑む。
魔獣を討伐する軍人を養成する学校に通う少女の恋と戦いのお話です。
この作品はノベルアップ+さんにも掲載しています。
私を振ったあの子をレズ風俗で指名してみた。
楠富 つかさ
恋愛
女子大生、長谷部希は同級生の中原愛海に振られ、そのショックをサークルの先輩に打ち明けると、その先輩からレズ風俗に行くことを勧められる。
希は先輩に言われるがまま愛海の特徴を伝えると、先輩はこの嬢がいいのではと見せてきたその画面にいのは……中原愛海その人だった。
同級生二人がキャストとゲストとして過ごす時間……。
感情とおっぱいは大きい方が好みです ~爆乳のあの娘に特大の愛を~
楠富 つかさ
青春
落語研究会に所属する私、武藤和珠音は寮のルームメイトに片想い中。ルームメイトはおっぱいが大きい。優しくてボディタッチにも寛容……だからこそ分からなくなる。付き合っていない私たちは、どこまで触れ合っていんだろう、と。私は思っているよ、一線超えたいって。まだ君は気づいていないみたいだけど。
世界観共有日常系百合小説、星花女子プロジェクト11弾スタート!
※表紙はAIイラストです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる