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第四章 冥王決定戦篇

冥王決定戦 決勝トーナメント 準決勝

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冥王決定戦、準決勝の相手は一振りの刀を持った少女であった。

「幸村ひかり。貴方は?」
「……倉科、舞斗だ」

凜とした声質でありながら、圧力を持った声。自分の名を紡ぐ唇がかすかに震えたことを実感せずにはいられなかった。

『これまでの全試合、全て一刀で終わらせている幸村選手、多彩な技を持つクライト選手にどう戦う!? 冥王決定戦、準決勝第一試合……始め!!』

それは本当に一瞬だった。

『クライト選手、幸村選手の初撃を受け止めた!!』

超人的な身体動作であったが、動きが剣道のそれであったため、なんとか受け止められた。特に加護のない普通の剣であればどれほどの業物でも折れていただろう。それだけ重い一撃であった。

「一撃で倒せない相手は貴方が初めて。さすが準決勝」

軽やかに跳び距離を開ける幸村。蒼い月の光を跳ね返す刀身は厚く、拵えも無骨な業物の刀を持っている。かなり重量のある刀を持っているであろう彼女の腕は細く、全体的に華奢な体格だ。濃紺の冬服セーラーを着ていて、長い黒髪を白いリボンで結い上げている。年の頃も近いだろう。

「準決勝に進むような猛者だというのに、俺はお前のことを全然知らなかった。試合が一瞬だったせいで見られなかったということか」
「そうね。みんな弱かった。悪魔も、ドラゴンも……みんな、弱かった。でも、貴方は違う。それをもっと教えて?」

無表情な少女だと思っていたが、そうでもないみたいだ。隠しきれない歓喜と……狂気を秘めた双眸だ。

「……ふっ」

構えを解いたかに見えた次の瞬間、彼女は既に俺の左下で刀を振り上げようとしていた。咄嗟にクロディアンを左方向へ振るうが、それと同時に幸村はもう一歩踏み込んできた。

「ぐはっ――――」

二試合連続で背中に一撃喰らうって……信じられねえな。

「こいつが無かったら死んでたな……」

ブライトスターを杖代わりにして、なんとか立ち上がる。

「ほぉ、今のでも死にませんか。頑丈ですね」
「やかましい! アクセルフォース!」

身体強化の術を施し、双剣を構える。相手の強みは速度とその速度に基づく重い一撃。だったら、

「双連光牙斬!!」

水平方向の回転を伴う双剣の連撃。二刀どちらもぎりぎりで躱す幸村。そしてバックステップ。狙い通りだ!

「光波襲連!!」

剣先に溜めた魔力を衝撃波として叩き出す技、双剣の両方から放たれた攻撃を幸村は回避できない。なにせバックステップしたがために空中にいるのだから。着地した瞬間、光の衝撃波が命中。普通ならそう考える。……普通なら。

「せい!!」

幸村の一刀で衝撃波はかき消されてしまった。空中で振るわれた刀の軌跡によって、まるで線を引いたように衝撃波が進めなくなった。再び、俺と幸村の間に間合いが生じる。

「強いのね、倉科君。いいわ、それでこそ殺す価値があるってものよ」
「ふん、そう易々とは死ねないね。こちとら一度くたばった身だからな」
「そうね。それはお互い様だわ。さて……おしゃべりは、ここまでよっ!」

刹那、銀色の光が閃く。反射的にリジェクトウォールを前面に展開するが、まるで豆腐を斬るように一瞬で両断されていた。

「おいおい、あれでなかなか汎用性も高いし、ここぞという時に俺を守ってくれた防壁を一刀で切り崩すとは……とんでもない刀だな」
「覇者の刀。所有者の障害を絶対に斬る刀よ」
「だが一つ、お前には弱点がある。短期決戦で勝負が決まらないと、ひどく弱体化する点だ」

そう告げる俺は、幸村の背後にいた。

「魔力掌握、コンフュージョン・ソニック!!」

前回の戦闘で、幻影によって背後を取られるという失態を犯した俺は、自分自身も幻影の術を習得することにした。幸い、ヘルミナから教えを請うことに成功し、ぶっつけ本番ではあるが効果的に発動できた。

「う……動けない……」

さらに今回発動した術は、札を相手に貼り付けることでしか効果を発揮できないが、極めて強力なもの。振動波によって脳を揺さぶり平衡感覚を奪うことで動きを封じ、人間か極めて知能の高い魔物にしか使えないが、使える相手に対しては効果覿面。込める魔力を調節すれば生かすも殺すも術者次第となる。

「さて、幸村ひかり。君には冥界軍に参加してもらいたいのだが、どうだろうか?」
『おぉお!? ここでクライト選手、幸村選手をスカウトか!?』
「ふふ、拒否権なんてないのでしょう? お引き受けします。ただし、いつ私に殺されても知りませんよ?」
「あぁ、やれるものならやってみろ」
「えぇ、そうさせてもらいます。……リザイン」
『冥王決定戦、決勝に進出するのは――――クライト・ディアライト!』
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