異世界カントリーライフ ~妖精たちと季節を楽しむ日々~

楠富 つかさ

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「さて、ここにはたくさんの野菜が育っているけど……」

 トマトの真っ赤な実、ナスの深い紫色、そしてきゅうりの爽やかな緑。これだけ色とりどりの野菜が揃っているということは、今は夏なのかなぁとふと疑問に思った。かぼちゃも小さいけど実がなってたし。

「夏なら、こういう野菜がたくさん育つ時期だよね。あれは、トウモロコシみたいなやつかな。あっちは、麦? 麦って夏だっけ」

 私は周りを見渡しながら、季節の感覚を思い起こす。たしか、現実の世界では夏真っ盛りだった気がする。もしかしたら、ここでも同じように、夏が訪れているのかもしれない。そう考えてみると何もかもが新鮮で、日差しも強く、これぞ夏という雰囲気が漂っている。

「でも、この世界でも季節が同じようにめぐるとは限らないよね。夏から春になったり、なんて。まぁ、その時はその時で異世界らしいと思って楽しめばいいか。それにしても、ここはやっぱり不思議だなぁ。時間の流れがゆっくりに感じる。まるで、竜宮城みたい」

 目の前に広がる美しい風景を見ながら、少しだけ不安な気持ちも混ざってくる。時間が流れる感覚が失われているのは、ここにいる間に特別なことが起きている証拠なのかもしれない。そういえば時計もないし。

「それでも、今はこんな素敵な場所でのんびりできているんだから、贅沢だよね」

 私は深呼吸し、周りの空気を味わった。畑の新鮮な香りと青空の清々しさが、心を落ち着けてくれる。これからの毎日がどんなふうに続いていくのか、少しずつわくわくしてきた。

「夏の間に、いろんなことを楽しんで、料理もたくさん作ってみよう!」

 妖精さんたちも私のそばで、元気に飛び跳ねながら賛同しているようだった。彼らの存在が、私の心をさらに豊かにしてくれる。こうして、新しい季節の訪れを感じながら、私は畑での時間を大切にすることにした。

「わくわくする気持ちと、ゆったりとした気分が交錯するなぁ。でも、やっぱり暇だと感じることもある」

 こうして自然に囲まれているのは気持ちいいけれど、何も目的がないまま過ごすのは、どこかもったいない気がする。

「そういえば、これまで働きすぎたせいで、こういう時間がないと物足りなさを感じるようになってしまったのかも」

 ふと、過去の忙しさが思い返される。仕事に追われ、常に時間に縛られていた日々。目の前のタスクをこなすことに夢中になりすぎて、ゆったりとした時間の大切さを忘れていたようだ。

「もちろん、何もしない時間も大事だけれど、やっぱり自分にとっての目的がないと、心が落ち着かないっていうか……」

 それでも、ここにはたくさんの可能性がある。新鮮な野菜を使った料理を作ったり、妖精たちと一緒に楽しい時間を過ごしたりすることも、ひとつの目的になりそうだ。

「今は、自分のペースで楽しんでみてもいいのかもしれないけど、そろそろ何か目標を決めて、動き出さないと!」

 私は心の中で小さく決意した。料理を楽しむだけではなく、この新しい世界でどんなことができるのか、どんな経験を積んでいくのか、もっと具体的に考えてみよう。

「例えば、妖精たちと一緒にカフェを開くとか、野菜を使ったレシピを考えてみるとか!」

 想像が膨らむ中で、自然と笑顔がこぼれる。これぞ異世界でスローライフをする醍醐味って感じで、よく漫画でも読んでいた。
 目的を持って動くことが、再び心を充実させてくれるのだ。これからの生活は、もっと楽しいものになる予感がして、ワクワクがまた広がっていく。まぁ、まだ私以外の人に出会ったことがないから、カフェとか気が早いんだけどさ。

「よし、まずは妖精たちと一緒に、おいしい料理を作るためのメニューを考えてみようかな! というか朝ごはんにしよう!」

 気持ちが高まり、私は畑の中で妖精たちと共に、新たな日々の計画を立て始めることにした。今度こそ、自分の時間を大切にしながら、目的を持って楽しい生活を築いていくつもりだ。
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