6 / 12
水回りをチェック
しおりを挟む
ぼんやりと思いを巡らせ、それが一巡したころ、暇であるという現実が私につきつけられた。
「いや、現代人が忙しすぎるだけなんだ。これくらい時間に余裕があっても――というか、時間という制約に縛られずに生きたっていいのではないか」
時計もないし、今が何時なのかはわからない。空は少し暗くなりつつあるが、家の中は妖精さんが放つ光に優しく包まれている。仕事や家事に追われることない今の私は何をするでもなく、のんびりとした時間を楽しんでいた。そんな状況に心が少し軽くなっていくのを感じる。
「そうだ、まだお風呂やトイレの場所を確認していなかったや。さっきはお部屋を見ただけでなんか満足しちゃったんだよなぁ」
さっきはこのリビングを出て右側に行って寝室っぽい部屋を確認したので、今度は左側を見てみることにする。そっとドアを開けると、薄暗い廊下が広がっていた。妖精さんたちが私を追い越して行って光を灯してくれる。ちょこちょこと小さな羽音を立てている。彼らの存在が心強く、なんだか嬉しくなってくる。
廊下を進むと、まず目に入ったのは小さなドア。そっと開けると、脱衣所みたいなちょっとしたスペースがあって、さらに奥にはお風呂が広がっていた。石造りの壁と木製の浴槽はまるで温泉のような雰囲気だ。
「わぁ、これならゆっくりお風呂に入れそう!」
目を輝かせてその光景を眺めると、妖精たちも嬉しそうに飛び跳ねている。彼らが何かを問いかけるような雰囲気を出すから、ひょっとしてと思い、お湯を張るようお願いすると、ふわふわと羽ばたいて赤い石と青い石に向かってくれた。なんだか感謝の気持ちがこみ上げてくる。
「じゃあ、お湯が溜まる前にトイレを見てくるね」
心躍る気持ちで、脱衣所の反対側にある扉を開ける。思った通り、そこには洗面所とトイレが並んでいた。白い壁に囲まれた清潔感のある空間で、奥には小さな窓があり、換気もばっちりできそうだ。想像以上に快適そうなトイレにほっとした。
「これなら安心して使えそうだね」
便器を見たせいか不意にもよおしてしまい、早速トイレを使用することに。……妖精さんに見られているのが少し落ち着かないけど、彼らがいないと水で流せないからね。慣れていくしかない。
そんなことを考えながら洗面台の前に立ち、手を洗うことにした。ここにもやっぱり魔法の石がついていて、妖精さんたちが軽く触れるだけで水が勢いよく流れ出る。手を洗い、水気を多少落としてから最初の探索で見つけたタオルっぽい布で手を拭く。首からタオルを提げているのはだらしないかもしれないけれど、まぁいいとする。
「そっか、バスタオルくらいのサイズのものがないか見に行かなくっちゃ」
ついでに着替えも探しておかないと。夕べから着ている赤いパジャマはお気に入りだけれど、ずっとこれを着ているわけにもいかない。
ふとバスタオルは脱衣所にあるのではないかと思い至りすぐに発見。着替えは少しサイズが大きいものの、ゆったり着るにはちょうどいいと思い直して妥協した。
「さぁて、お風呂お風呂っと」
「いや、現代人が忙しすぎるだけなんだ。これくらい時間に余裕があっても――というか、時間という制約に縛られずに生きたっていいのではないか」
時計もないし、今が何時なのかはわからない。空は少し暗くなりつつあるが、家の中は妖精さんが放つ光に優しく包まれている。仕事や家事に追われることない今の私は何をするでもなく、のんびりとした時間を楽しんでいた。そんな状況に心が少し軽くなっていくのを感じる。
「そうだ、まだお風呂やトイレの場所を確認していなかったや。さっきはお部屋を見ただけでなんか満足しちゃったんだよなぁ」
さっきはこのリビングを出て右側に行って寝室っぽい部屋を確認したので、今度は左側を見てみることにする。そっとドアを開けると、薄暗い廊下が広がっていた。妖精さんたちが私を追い越して行って光を灯してくれる。ちょこちょこと小さな羽音を立てている。彼らの存在が心強く、なんだか嬉しくなってくる。
廊下を進むと、まず目に入ったのは小さなドア。そっと開けると、脱衣所みたいなちょっとしたスペースがあって、さらに奥にはお風呂が広がっていた。石造りの壁と木製の浴槽はまるで温泉のような雰囲気だ。
「わぁ、これならゆっくりお風呂に入れそう!」
目を輝かせてその光景を眺めると、妖精たちも嬉しそうに飛び跳ねている。彼らが何かを問いかけるような雰囲気を出すから、ひょっとしてと思い、お湯を張るようお願いすると、ふわふわと羽ばたいて赤い石と青い石に向かってくれた。なんだか感謝の気持ちがこみ上げてくる。
「じゃあ、お湯が溜まる前にトイレを見てくるね」
心躍る気持ちで、脱衣所の反対側にある扉を開ける。思った通り、そこには洗面所とトイレが並んでいた。白い壁に囲まれた清潔感のある空間で、奥には小さな窓があり、換気もばっちりできそうだ。想像以上に快適そうなトイレにほっとした。
「これなら安心して使えそうだね」
便器を見たせいか不意にもよおしてしまい、早速トイレを使用することに。……妖精さんに見られているのが少し落ち着かないけど、彼らがいないと水で流せないからね。慣れていくしかない。
そんなことを考えながら洗面台の前に立ち、手を洗うことにした。ここにもやっぱり魔法の石がついていて、妖精さんたちが軽く触れるだけで水が勢いよく流れ出る。手を洗い、水気を多少落としてから最初の探索で見つけたタオルっぽい布で手を拭く。首からタオルを提げているのはだらしないかもしれないけれど、まぁいいとする。
「そっか、バスタオルくらいのサイズのものがないか見に行かなくっちゃ」
ついでに着替えも探しておかないと。夕べから着ている赤いパジャマはお気に入りだけれど、ずっとこれを着ているわけにもいかない。
ふとバスタオルは脱衣所にあるのではないかと思い至りすぐに発見。着替えは少しサイズが大きいものの、ゆったり着るにはちょうどいいと思い直して妥協した。
「さぁて、お風呂お風呂っと」
2
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします
雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました!
(書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です)
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~
土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。
しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。
そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。
両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。
女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

異世界でフローライフを 〜誤って召喚されたんだけど!〜
はくまい
ファンタジー
ひょんなことから異世界へと転生した少女、江西奏は、全く知らない場所で目が覚めた。
目の前には小さなお家と、周囲には森が広がっている。
家の中には一通の手紙。そこにはこの世界を救ってほしいということが書かれていた。
この世界は十人の魔女によって支配されていて、奏は最後に召喚されたのだが、宛先に奏の名前ではなく、別の人の名前が書かれていて……。
「人違いじゃないかー!」
……奏の叫びももう神には届かない。
家の外、柵の向こう側では聞いたこともないような獣の叫ぶ声も響く世界。
戻る手だてもないまま、奏はこの家の中で使えそうなものを探していく。
植物に愛された奏の異世界新生活が、始まろうとしていた。
ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ
雑木林
ファンタジー
現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。
第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。
この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。
そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。
畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。
斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。

【完結】僕は今、異世界の無人島で生活しています。
コル
ファンタジー
大学生の藤代 良太。
彼は大学に行こうと家から出た瞬間、謎の光に包まれ、女神が居る場所へと転移していた。
そして、その女神から異世界を救ってほしいと頼まれる。
異世界物が好きな良太は二つ返事で承諾し、異世界へと転送された。
ところが、女神に転送された場所はなんと異世界の無人島だった。
その事実に絶望した良太だったが、異世界の無人島を生き抜く為に日ごろからネットで見ているサバイバル系の動画の内容を思い出しながら生活を開始する。
果たして良太は、この異世界の無人島を無事に過ごし脱出する事が出来るのか!?
※この作品は「小説家になろう」さん、「カクヨム」さん、「ノベルアップ+」さん、「ノベリズム」さんとのマルチ投稿です。
あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~
深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公
じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい
…この世界でも生きていける術は用意している
責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう
という訳で異世界暮らし始めちゃいます?
※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです
※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています
料理屋「○」~異世界に飛ばされたけど美味しい物を食べる事に妥協できませんでした~
斬原和菓子
ファンタジー
ここは異世界の中都市にある料理屋。日々の疲れを癒すべく店に来るお客様は様々な問題に悩まされている
酒と食事に癒される人々をさらに幸せにするべく奮闘するマスターの異世界食事情冒険譚
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる