異世界カントリーライフ ~妖精たちと季節を楽しむ日々~

楠富 つかさ

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見知らぬ家へ

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 気がつくと、周りに小さなきらきらした光が揺らめいているのが見えた。ふわふわと宙を漂っているその光は、まるで妖精の羽ばたきのように見える。目を凝らしてよく見ると、小さな翼を持った妖精たちが、こちらを興味深そうに覗き込んでいた。

「……うそ、妖精?」

 呟いたとたん、妖精たちはにこにこと微笑みながら、私の周りをふわふわと飛び始めた。その可愛らしい姿に、私は夢か現実かわからなくなってしまったけれど、頬をつねるとちゃんと痛い。どうやら夢ではなさそうだ。
 ふと、自分が寝そべっている場所に気がついた。柔らかな草の上で、見上げると木々の間から温かな日差しが差し込んでいる。ここは……森? いつもの自宅ではない。

「ここ、どこ……?」

 おそるおそる起き上がると、妖精たちは「ようこそ!」とでも言うように小さな手を振っている。なんとも愛らしい光景に、私は緊張しながらも思わず微笑んでしまう。目をこらして見ると、妖精たちは小さなフルーツや花びらのようなものを持ってきてくれているらしく、その一つひとつが、宝石みたいに美しく輝いていた。

「ありがとう……」

 礼を言うと、妖精たちはさらに嬉しそうにくるくると舞いながら空を飛び回った。どうやら歓迎されているらしい。ふわふわとした不思議な気持ちが湧き上がり、心のどこかが少しずつほぐれていくのを感じる。

 周りの景色を見回すと、木の温もりを感じる小さな家が目に入った。なんだか懐かしささえ感じるようなその家に、私は足を向けてみることにした。

「もしかして、ここが私の新しい家……?」

 妖精たちに導かれるまま、私はゆっくりと家のドアを押し開けた。
 木のドアを押すと、ぎぃ、と少し頼りなげな音がして中に入る。そこには、手作り感のある小さな家具や、色とりどりの花が飾られていて、まるでおとぎ話のような雰囲気が広がっていた。テーブルの上には陶器のカップとポットが置かれていて、さっきまで誰かがここでお茶を楽しんでいたかのような温かみを感じる。

 小さな窓から差し込む陽の光が、床に模様を描くように広がっているのをぼんやり眺めていると、肩にふわっと軽い感触がした。見下ろすと、一匹の妖精が肩にちょこんと座っていて、にっこり笑って手を振っている。

「私をここに連れてきてくれたのって、もしかして君たちなの?」

 そう尋ねると、妖精は小さな手で「うんうん」と頷いた。ほかの妖精たちも楽しげに頷きながら、部屋中をふわふわ飛び回っている。私は自然と緊張がほどけ、穏やかな気持ちになっていった。
 この家には、ほんのりとした甘い香りが漂っていて、心が安らぐような気がする。周りを見渡すと、棚にはハーブや小さな瓶に詰められた調味料が並び、部屋の片隅には薪が積まれている。少し古びてはいるけれど、とても居心地のよさそうな空間だ。

「まるで、私のために用意されてたみたいだなぁ……」

 妖精たちはその言葉に答えるかのように、頷いたり、ポットの周りを飛び回ったりして、どうやら「ここでくつろいでいいよ」と言ってくれているようだ。ふと、小さな棚の隅に手書きのメモが置いてあるのを見つけた。

「新しい住人さんへ――ゆったりとした時間を過ごし、自然の恵みに感謝しながら、この世界で楽しく暮らしてくださいね」

 何もかもが唐突で、わけがわからないはずなのに、そのメモの一言を読んだだけで心にじんわりとした温かさが広がった。この家で、私もスローライフを送ることができるのかもしれない。忙しさに追われる日常から解放されたようで、ほっと肩の力が抜ける。

「よし、まずはお茶を入れて、ひと息ついてみようかな」

 ポットのふたを開けると、そこには香り高い茶葉が入っていて、どうやら準備万端らしい。私は少しずつポットにお湯を注ぎながら、妖精たちに囲まれての新しい暮らしに、心のどこかで胸が高鳴っているのを感じた。
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