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第八話 三人でお夕飯を
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「お、お待たせしました」
悩みに悩んだ末なのか、中等部の制服姿で現れた紅葉ちゃん。
「お姉様、かおりのことご存知だったのですね」
「くれはちゃんこそ、かなみちゃんと友達だったんだね」
わたしは二人に、それぞれとどういう出会いをしたのかを話した。そういえば、二人と出会ったのは同じ日だったなぁ。三人でお出かけしたら、楽しいだろうなぁ
「あの、お姉様……その、今日は、泊まって行きませんか? 明日は日曜ですし、どうでしょう?」
「いいね! かなみちゃんともっと一緒にいたい!」
目をきらきらさせた二人を相手に、断ることなんて出来なかった。
「仕度だけしてくるから、待っててね」
急いで高等部の菊花寮にある自室へ戻り、パジャマやその他着替え、シャンプーとかリンスとかのお風呂セット、化粧水、あとは……財布とか普段から持ち歩いている物は取り敢えず持つ。
「カバンにはこれくらいでいいかな……あとは枕かな」
これはカバンには入らないから抱えていく感じになる。明らかにお泊まり行きますっていうスタイルだけど、星花は女子校なので寮の別室へお泊まりに行くくらいならお咎めはない。無論、無断外泊は始末書ものだけどね。たとえ実家でも帰るときは書類が必要だ。
「タオルも持ったし……いいかな」
自室の扉を施錠し、再び中等部桜花寮へ向かう。寮の玄関を抜けると中学生に驚いたような顔で見られてしまった……。まぁ、仕方ないよね。
「お待たせ」
わたしが二人の部屋に戻ってくると、二人はなんだかそわそわしていた。荷物を置くと、かおりちゃんがわたしに尋ねてきた。
「かなみちゃんは、お料理できる人?」
「まぁ、それなりに。家庭料理くらいなら、出来るよ」
「実は……お姉様の手料理を食べたくて」
なるほど。
「何が食べたいの?」
「ハンバーグ!!」
ハンバーグなら作れるかな。
「分かった。じゃあ、材料買いに行こうか」
近くのスーパーで材料を買う途中、紅葉ちゃんとかおりちゃんの間にちょっとした事件が起きてしまった。
「ハンバーグには大根おろしで決まりです」
「ちがうの! デミグラスなの!」
まぁ、よくあるハンバーグ論争だよね。わたしもどちらかと言えばデミグラス派なんだけど……。ここは敢えて。
「二人とも騒がないの。今日はわたしのオリジナルで味付けするからね」
そのための調味料は寮のキッチンにあることをさっき確認してある。ちなみに、お米を研いで炊飯器にセットも既に完了している。タイマーもかけたし、ハンバーグが完成する頃には炊きあがるだろう。
「お姉様のオリジナルなら……大丈夫です」
「うん! かなみちゃんなら大丈夫!」
……なんだろう、この圧倒的な信頼感。ちょっとむずがゆいというか、面映ゆいというか。
「じゃあ材料も揃ったし、買って帰ろうね」
「ごちそうさま!!」
「美味しかったです!」
「お粗末様。二人とも手伝ってくれてありがとうね」
寮の共用キッチンに併設されたダイニングテーブルでお夕飯を食べ終えた。良い匂いに誘われて何人かがキッチンへやって来たけど、遠巻きに眺める程度だった。やっぱり高校生がいるのが違和感なのかな。
「すっごいジューシーだったよ!」
「お麩を使うと凄いですね」
お味噌汁の具がある程度揃っていたので活用させてもらった。他にも、
「ソースが凄く美味しかったです。カレー粉が後から香って、思ってたより食べ終わるのが早かったくらいです」
顆粒のカレー粉が常備されていたので、ケチャップにウスターソース、中濃ソースを混ぜたソースに少し加えた。
「お姉様の手料理、毎日でも食べたいくらいです」
「うんうん! わたしも!」
かおりちゃんは無邪気な感じで微笑ましいけど、紅葉ちゃんが言うとプロポーズみたいでなんだか照れる。
「さて、片付けまでが料理だからね。洗い物しちゃおうか」
悩みに悩んだ末なのか、中等部の制服姿で現れた紅葉ちゃん。
「お姉様、かおりのことご存知だったのですね」
「くれはちゃんこそ、かなみちゃんと友達だったんだね」
わたしは二人に、それぞれとどういう出会いをしたのかを話した。そういえば、二人と出会ったのは同じ日だったなぁ。三人でお出かけしたら、楽しいだろうなぁ
「あの、お姉様……その、今日は、泊まって行きませんか? 明日は日曜ですし、どうでしょう?」
「いいね! かなみちゃんともっと一緒にいたい!」
目をきらきらさせた二人を相手に、断ることなんて出来なかった。
「仕度だけしてくるから、待っててね」
急いで高等部の菊花寮にある自室へ戻り、パジャマやその他着替え、シャンプーとかリンスとかのお風呂セット、化粧水、あとは……財布とか普段から持ち歩いている物は取り敢えず持つ。
「カバンにはこれくらいでいいかな……あとは枕かな」
これはカバンには入らないから抱えていく感じになる。明らかにお泊まり行きますっていうスタイルだけど、星花は女子校なので寮の別室へお泊まりに行くくらいならお咎めはない。無論、無断外泊は始末書ものだけどね。たとえ実家でも帰るときは書類が必要だ。
「タオルも持ったし……いいかな」
自室の扉を施錠し、再び中等部桜花寮へ向かう。寮の玄関を抜けると中学生に驚いたような顔で見られてしまった……。まぁ、仕方ないよね。
「お待たせ」
わたしが二人の部屋に戻ってくると、二人はなんだかそわそわしていた。荷物を置くと、かおりちゃんがわたしに尋ねてきた。
「かなみちゃんは、お料理できる人?」
「まぁ、それなりに。家庭料理くらいなら、出来るよ」
「実は……お姉様の手料理を食べたくて」
なるほど。
「何が食べたいの?」
「ハンバーグ!!」
ハンバーグなら作れるかな。
「分かった。じゃあ、材料買いに行こうか」
近くのスーパーで材料を買う途中、紅葉ちゃんとかおりちゃんの間にちょっとした事件が起きてしまった。
「ハンバーグには大根おろしで決まりです」
「ちがうの! デミグラスなの!」
まぁ、よくあるハンバーグ論争だよね。わたしもどちらかと言えばデミグラス派なんだけど……。ここは敢えて。
「二人とも騒がないの。今日はわたしのオリジナルで味付けするからね」
そのための調味料は寮のキッチンにあることをさっき確認してある。ちなみに、お米を研いで炊飯器にセットも既に完了している。タイマーもかけたし、ハンバーグが完成する頃には炊きあがるだろう。
「お姉様のオリジナルなら……大丈夫です」
「うん! かなみちゃんなら大丈夫!」
……なんだろう、この圧倒的な信頼感。ちょっとむずがゆいというか、面映ゆいというか。
「じゃあ材料も揃ったし、買って帰ろうね」
「ごちそうさま!!」
「美味しかったです!」
「お粗末様。二人とも手伝ってくれてありがとうね」
寮の共用キッチンに併設されたダイニングテーブルでお夕飯を食べ終えた。良い匂いに誘われて何人かがキッチンへやって来たけど、遠巻きに眺める程度だった。やっぱり高校生がいるのが違和感なのかな。
「すっごいジューシーだったよ!」
「お麩を使うと凄いですね」
お味噌汁の具がある程度揃っていたので活用させてもらった。他にも、
「ソースが凄く美味しかったです。カレー粉が後から香って、思ってたより食べ終わるのが早かったくらいです」
顆粒のカレー粉が常備されていたので、ケチャップにウスターソース、中濃ソースを混ぜたソースに少し加えた。
「お姉様の手料理、毎日でも食べたいくらいです」
「うんうん! わたしも!」
かおりちゃんは無邪気な感じで微笑ましいけど、紅葉ちゃんが言うとプロポーズみたいでなんだか照れる。
「さて、片付けまでが料理だからね。洗い物しちゃおうか」
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