8 / 61
アンソロジー
お仕事の時間ですね Side:智恵&莉那 立成16年11月
しおりを挟む
生徒会長に就任して数ヶ月。書類仕事にもある程度慣れてきた。星花女子では大きな事件なんかもないし。
「会長、サッカー部が部の存続を求めてレポートを提出してきたのですが……」
「それならもう読んだわ。サッカーで健康、美脚ってやつでしょ? 流石にあのざっくりとしたレポートを認可するわけにも行かないから、代案としてバブルサッカーってあるでしょう? あれの発祥や安全性、それらを調べたり体験したりしてレポートにしたらどうって送ってあるわ」
「仕事が早いですね。流石です」
星花は部活数が多く、一部は維持できずに看板を下ろす部もある。活動実態の把握は生徒会としても急務だ。そんなことを思いつつ、今日もまた生徒会メンバーと一緒に書類を見てはんこを押していると、コンコンコンとノックがされ、入室を促すと現れたのは黒マントをはためかせた小柄な女の子ともう一人。
「警邏中に不貞の輩を見付けたとの報告あり。かの者らは朽ち葉色の結界を展開し、紅蓮の悪魔を召喚せんとしている模様」
「……えっと、何やら校内でキャンプをしている生徒がいるようでして」
生徒会室にやってきたのは風紀委員長と副委員長だった。風紀委員長、櫻井莉那とはそこそこ長い付き合いで、副委員長がいなくとも彼女特有の言葉回しは理解できる。とはいえ……。
「校内でテント張ってたき火ね。この時期は空気が乾燥してるから危ないわ。……山岳部ってことはないわよね?」
「かの部は今や山とその周囲の領域について研究する集い。今回の一件とは関係あるまい」
「あ、あの。行っている場所が寮に近いようでして……」
「なるほど。生徒会や風紀委員会で処理すべきか寮母や寮長経由ですべきか、というところですね。もっとも、参加者が全員寮生か分からない以上、我々が注意すべきでしょう。莉那、お願いできますか?」
「ふっ、もちろん。このユースティティアの名にかけて」
二人が生徒会室をあとにするのを見送ってからふと思案する。本当に危なかったらきっと邑さんが止めているだろう。薪を割る邑さん、似合いそうだなぁ。
「会長?」
「え、沢野さん、な、何かしら?」
「あ、はい。1月に行われるこのイベントの運営についてなんですけど――――」
今は仕事に集中しなきゃ。
「会長、サッカー部が部の存続を求めてレポートを提出してきたのですが……」
「それならもう読んだわ。サッカーで健康、美脚ってやつでしょ? 流石にあのざっくりとしたレポートを認可するわけにも行かないから、代案としてバブルサッカーってあるでしょう? あれの発祥や安全性、それらを調べたり体験したりしてレポートにしたらどうって送ってあるわ」
「仕事が早いですね。流石です」
星花は部活数が多く、一部は維持できずに看板を下ろす部もある。活動実態の把握は生徒会としても急務だ。そんなことを思いつつ、今日もまた生徒会メンバーと一緒に書類を見てはんこを押していると、コンコンコンとノックがされ、入室を促すと現れたのは黒マントをはためかせた小柄な女の子ともう一人。
「警邏中に不貞の輩を見付けたとの報告あり。かの者らは朽ち葉色の結界を展開し、紅蓮の悪魔を召喚せんとしている模様」
「……えっと、何やら校内でキャンプをしている生徒がいるようでして」
生徒会室にやってきたのは風紀委員長と副委員長だった。風紀委員長、櫻井莉那とはそこそこ長い付き合いで、副委員長がいなくとも彼女特有の言葉回しは理解できる。とはいえ……。
「校内でテント張ってたき火ね。この時期は空気が乾燥してるから危ないわ。……山岳部ってことはないわよね?」
「かの部は今や山とその周囲の領域について研究する集い。今回の一件とは関係あるまい」
「あ、あの。行っている場所が寮に近いようでして……」
「なるほど。生徒会や風紀委員会で処理すべきか寮母や寮長経由ですべきか、というところですね。もっとも、参加者が全員寮生か分からない以上、我々が注意すべきでしょう。莉那、お願いできますか?」
「ふっ、もちろん。このユースティティアの名にかけて」
二人が生徒会室をあとにするのを見送ってからふと思案する。本当に危なかったらきっと邑さんが止めているだろう。薪を割る邑さん、似合いそうだなぁ。
「会長?」
「え、沢野さん、な、何かしら?」
「あ、はい。1月に行われるこのイベントの運営についてなんですけど――――」
今は仕事に集中しなきゃ。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~
楠富 つかさ
恋愛
中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。
佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。
「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」
放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。
――けれど、佑奈は思う。
「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」
特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。
放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

AV研は今日もハレンチ
楠富 つかさ
キャラ文芸
あなたが好きなAVはAudioVisual? それともAdultVideo?
AV研はオーディオヴィジュアル研究会の略称で、音楽や動画などメディア媒体の歴史を研究する集まり……というのは建前で、実はとんでもないものを研究していて――
薄暗い過去をちょっとショッキングなピンクで塗りつぶしていくネジの足りない群像劇、ここに開演!!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

さくらと遥香(ショートストーリー)
youmery
恋愛
「さくらと遥香」46時間TV編で両想いになり、周りには内緒で付き合い始めたさくちゃんとかっきー。
その後のメインストーリーとはあまり関係してこない、単発で読めるショートストーリー集です。
※さくちゃん目線です。
※さくちゃんとかっきーは周りに内緒で付き合っています。メンバーにも事務所にも秘密にしています。
※メインストーリーの長編「さくらと遥香」を未読でも楽しめますが、46時間TV編だけでも読んでからお読みいただくことをおすすめします。
※ショートストーリーはpixivでもほぼ同内容で公開中です。

【ママ友百合】ラテアートにハートをのせて
千鶴田ルト
恋愛
専業主婦の優菜は、娘の幼稚園の親子イベントで娘の友達と一緒にいた千春と出会う。
ちょっと変わったママ友不倫百合ほのぼのガールズラブ物語です。
ハッピーエンドになると思うのでご安心ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる