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大食いガールズ
大食いガールズ(たこ焼き編) Side:みのり&雪乃&紀香 立成18年8月
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八月中旬のお盆は、星花女子学園の学生も実家に帰省して我が家が経営する月見屋食堂も閑散と――――する道理もなく、大盛況であった。そもそも夏休みに帰省する学生がいるんだからお盆が特別に閑散とするわけがなく、むしろ混雑するくらいだ。これは星花女子の生徒が帰省するのではなく、逆に生徒に会いに家族が空の宮市にやってくるのもちょっとした理由の一つだ。
そんなこんなでお盆も千客万来で営業していたのだが、流石にお盆明けにちょっとしたお休みをもらわないとこっちも身が持たない。そもそも仕入先だって休んでいるのだから、お店だって多少閉めたってバチはあたらない。そんな八月十八日のこと。
「さぁて皆さんお集りですね」
本日の月見屋食堂は臨時休業というより貸し切りの方が正確か。常連の星花女子学園生によるタコパを開催するのです。
きっかけは常連オブ常連の先輩である白峰雪乃先輩の一言だった。
「あぁもう、八月八日のたこ焼き食べ損ねちゃった。すっごいお買い得だったんだよ。なのに忙しくってさぁ」
さすがに高等部三年のこの時期ともなれば忙しくって当たり前。そんな先輩のために、十日過ぎてしまったけどたこ焼きの日を味わってもらおうと、我が家のホットプレートでたこ焼きを焼くことにしたのだ。流石に一台だけだと足りないので、たこ焼き器ごと持ってきてもらった人もいる。そのうちの一人が、こちらも常連である下村紀香先輩の彼女さん、黒犬静ちゃんだ。
静ちゃんとは最初に比べれば格段とコミュニケーションが取れるようになったものの、なおも無口でおとなしい印象。食事量もいたっておとなしいが、今回はたこ焼き器持参でちょっとだけ気合が入っているように感じる。
他にも響ちゃんやひかりちゃん、そしてまこねぇが持ってきてくれたおかげで同時に八十個ほどのたこ焼きが作れる段取りができた。まぁ、私の今日のメインは雪乃先輩と紀香先輩が食べるたこ焼きを焼き続けることなのだが。これはホストとしてのある意味で矜持だ。
「大量の生地がこちらに」
以前アメリカ発の超大型倉庫型スーパーで購入したボトルで売っているホットケーキミックス、これをたこ焼きに応用して、大量のたこ焼き生地を用意している。
「さて、タコ以外にもあれこれ用意してますけどご注文は?」
「当然タコで。取り敢えず二十個」
「あたしはタコ十と……ベーコンで十もらおうかな」
「はいよー!!」
私の目の前には十六個焼けるたこ焼き器が二台、三十二個ずつ焼ける。生地をプレートに流し込む。事前に油をてっかてかに塗りこめてある鉄板で、じゅうじゅうと生地が音を奏でる。
手際よく具材を入れていく。この二人が来るのだからと、タコは丸一匹分用意してある。他にベーコン、ウインナー、かにかま、コーン、ほたて、エビ、イカ、さらにはスナック菓子など具材になりそうなものは一通りそろえたし、葱や明太マヨ、食べるラー油などトッピングになりそうなものもあれこれそろえた。
「さぁ、おあがりください!!」
これは後に毎年開催されることになる月見屋食堂常連による夏の宴――タコフェスの記念すべき第一回である。
この日、雪乃先輩が食べたたこ焼きの数、100を超えてからは誰も正確な数は分からず、推定132個としてタコフェスの歴史に刻まれるのであった。
そんなこんなでお盆も千客万来で営業していたのだが、流石にお盆明けにちょっとしたお休みをもらわないとこっちも身が持たない。そもそも仕入先だって休んでいるのだから、お店だって多少閉めたってバチはあたらない。そんな八月十八日のこと。
「さぁて皆さんお集りですね」
本日の月見屋食堂は臨時休業というより貸し切りの方が正確か。常連の星花女子学園生によるタコパを開催するのです。
きっかけは常連オブ常連の先輩である白峰雪乃先輩の一言だった。
「あぁもう、八月八日のたこ焼き食べ損ねちゃった。すっごいお買い得だったんだよ。なのに忙しくってさぁ」
さすがに高等部三年のこの時期ともなれば忙しくって当たり前。そんな先輩のために、十日過ぎてしまったけどたこ焼きの日を味わってもらおうと、我が家のホットプレートでたこ焼きを焼くことにしたのだ。流石に一台だけだと足りないので、たこ焼き器ごと持ってきてもらった人もいる。そのうちの一人が、こちらも常連である下村紀香先輩の彼女さん、黒犬静ちゃんだ。
静ちゃんとは最初に比べれば格段とコミュニケーションが取れるようになったものの、なおも無口でおとなしい印象。食事量もいたっておとなしいが、今回はたこ焼き器持参でちょっとだけ気合が入っているように感じる。
他にも響ちゃんやひかりちゃん、そしてまこねぇが持ってきてくれたおかげで同時に八十個ほどのたこ焼きが作れる段取りができた。まぁ、私の今日のメインは雪乃先輩と紀香先輩が食べるたこ焼きを焼き続けることなのだが。これはホストとしてのある意味で矜持だ。
「大量の生地がこちらに」
以前アメリカ発の超大型倉庫型スーパーで購入したボトルで売っているホットケーキミックス、これをたこ焼きに応用して、大量のたこ焼き生地を用意している。
「さて、タコ以外にもあれこれ用意してますけどご注文は?」
「当然タコで。取り敢えず二十個」
「あたしはタコ十と……ベーコンで十もらおうかな」
「はいよー!!」
私の目の前には十六個焼けるたこ焼き器が二台、三十二個ずつ焼ける。生地をプレートに流し込む。事前に油をてっかてかに塗りこめてある鉄板で、じゅうじゅうと生地が音を奏でる。
手際よく具材を入れていく。この二人が来るのだからと、タコは丸一匹分用意してある。他にベーコン、ウインナー、かにかま、コーン、ほたて、エビ、イカ、さらにはスナック菓子など具材になりそうなものは一通りそろえたし、葱や明太マヨ、食べるラー油などトッピングになりそうなものもあれこれそろえた。
「さぁ、おあがりください!!」
これは後に毎年開催されることになる月見屋食堂常連による夏の宴――タコフェスの記念すべき第一回である。
この日、雪乃先輩が食べたたこ焼きの数、100を超えてからは誰も正確な数は分からず、推定132個としてタコフェスの歴史に刻まれるのであった。
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