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アンソロジー
昏き焱 Side:御所園咲瑠 立成17年??月
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何人もの少女達がベッドの上で息を絶え絶えにしながら倒れ伏していた。その原因は中央でまた一人、少女を昇天させた一人のレディ。一糸まとわぬ豊満なボディ、ゆるくウェーブした長い髪、この部屋の主である御所園咲瑠であった。
「お嬢様、今日は……少し、荒っぽいですね……」
そんなお嬢様も素敵ですが、と口にしたのは咲瑠の専属メイドで今夜最初に夜伽を交した月村名子だった。そんな彼女をディープキスで黙らせ、自慢の指捌きで再び快楽の海に沈める。今夜ばかりは何人貪ろうと満足できそうになかった。
それには訳があるのだが、ここでは御所園という一族について語るところから始めよう。
御所園家は御所園コンツェルンという企業のトップにある家系であり、その事業は主に不動産に関するものであり空の宮市ではスターパレスショッピングモールの誘致にも一枚噛んでいる企業だ。
また、咲瑠の母は天寿の株式を保有する株主であり、天寿ブランドのファッションを愛好するコアなカスタマーでもあった。そんな事情もあり、本日突如行われた株主総会に母と共に参加していたのだ。
そして、そこで行われたある一人の告発……そしてその顛末が、咲瑠の心を荒ませた。
咲瑠はホンモノの恋を知らないまま、性を知る年齢にまで育ってしまった。どれだけ肉欲を晴らし、少女達を貪っても心は満たされなかった。六歳の時に許嫁を紹介され、高校卒業後はしばらく花嫁修業をした後に嫁ぐことが確定している。
それまでは好きに振る舞って良いと言われてきたからこそ、この酒池肉林の様を咎められることなく過ごしてきた。咲瑠がタチに拘るのは、万に一つでも処女膜を喪うことを危惧しているからだ。瞬発的な運動で破れてしまうことがあるのは彼女も承知の上だが、許嫁に何か言われた時に動転する心配がないよう気を使っているわけだ。
「なのに……あの女……」
平菱イアナの存在は社交界でも知っていた。いい女だとは思ったけど、抱こうという気にはならなかった。大手食品メーカーの御曹司と婚約が決まっている令嬢だったというのが主だった理由だ。ことを荒立てることはお互いの家、御所園にも平菱にもそれぞれの婚約先にもメリットがない。
だというのに、その平菱イアナが株主総会で放った言葉、そしてそれに対するある老社長の発言それらが全て自分の人生の在り方について強く考え直させる。それが咲瑠にとっては耐えがたかった。
仮に結婚し子をなそうが、自分は女遊びをやめるつもりは毛頭ない。メイドを食うこともあれば、街に出てふと気になった女に金をちらつかせて関係をもつこともあるだろう。娘が産れれば、きっと女同士の関係があるということを匂わせるだろう。
「それで……本当にいいのか……?」
自分のこれまでの生き方に主体性があっただろうか。また一人、女の子を快楽の海に沈めながら自問する。よくよく思い出せば、メイドの名子以外の少女達は咲瑠に直接抱いてくれと嘆願してきた女子だった。
抱く少女すら自分で決めていない。それがまた咲瑠のアイデンティティを揺るがす。
金と人望が多少あっても、今後への展望がない。そのことが御所園咲瑠を悩ませる。
自由でありながら不自由な令嬢の心に燻る炎は、熱く……熱く、周囲の少女らの身を焦がす。
「私は私の道を生きる。誰にもとやかく言われる筋合いはないし、気に留める必要性もない」
そもそも自分は許嫁と関係が拗れているわけでもないし、御所園家と折り合いが悪いわけでもない。両親もきょうだいも優しく、平菱家とはケースが違いすぎる。
再び少女らの唇を貪り、蜜を求める。脳が擦り切れるような絶頂を迎えるまで、幾度となく少女らの艶やかな声が響いたが、広い御所園家で他の部屋にいる者に聞こえることはなかった。
「お嬢様、今日は……少し、荒っぽいですね……」
そんなお嬢様も素敵ですが、と口にしたのは咲瑠の専属メイドで今夜最初に夜伽を交した月村名子だった。そんな彼女をディープキスで黙らせ、自慢の指捌きで再び快楽の海に沈める。今夜ばかりは何人貪ろうと満足できそうになかった。
それには訳があるのだが、ここでは御所園という一族について語るところから始めよう。
御所園家は御所園コンツェルンという企業のトップにある家系であり、その事業は主に不動産に関するものであり空の宮市ではスターパレスショッピングモールの誘致にも一枚噛んでいる企業だ。
また、咲瑠の母は天寿の株式を保有する株主であり、天寿ブランドのファッションを愛好するコアなカスタマーでもあった。そんな事情もあり、本日突如行われた株主総会に母と共に参加していたのだ。
そして、そこで行われたある一人の告発……そしてその顛末が、咲瑠の心を荒ませた。
咲瑠はホンモノの恋を知らないまま、性を知る年齢にまで育ってしまった。どれだけ肉欲を晴らし、少女達を貪っても心は満たされなかった。六歳の時に許嫁を紹介され、高校卒業後はしばらく花嫁修業をした後に嫁ぐことが確定している。
それまでは好きに振る舞って良いと言われてきたからこそ、この酒池肉林の様を咎められることなく過ごしてきた。咲瑠がタチに拘るのは、万に一つでも処女膜を喪うことを危惧しているからだ。瞬発的な運動で破れてしまうことがあるのは彼女も承知の上だが、許嫁に何か言われた時に動転する心配がないよう気を使っているわけだ。
「なのに……あの女……」
平菱イアナの存在は社交界でも知っていた。いい女だとは思ったけど、抱こうという気にはならなかった。大手食品メーカーの御曹司と婚約が決まっている令嬢だったというのが主だった理由だ。ことを荒立てることはお互いの家、御所園にも平菱にもそれぞれの婚約先にもメリットがない。
だというのに、その平菱イアナが株主総会で放った言葉、そしてそれに対するある老社長の発言それらが全て自分の人生の在り方について強く考え直させる。それが咲瑠にとっては耐えがたかった。
仮に結婚し子をなそうが、自分は女遊びをやめるつもりは毛頭ない。メイドを食うこともあれば、街に出てふと気になった女に金をちらつかせて関係をもつこともあるだろう。娘が産れれば、きっと女同士の関係があるということを匂わせるだろう。
「それで……本当にいいのか……?」
自分のこれまでの生き方に主体性があっただろうか。また一人、女の子を快楽の海に沈めながら自問する。よくよく思い出せば、メイドの名子以外の少女達は咲瑠に直接抱いてくれと嘆願してきた女子だった。
抱く少女すら自分で決めていない。それがまた咲瑠のアイデンティティを揺るがす。
金と人望が多少あっても、今後への展望がない。そのことが御所園咲瑠を悩ませる。
自由でありながら不自由な令嬢の心に燻る炎は、熱く……熱く、周囲の少女らの身を焦がす。
「私は私の道を生きる。誰にもとやかく言われる筋合いはないし、気に留める必要性もない」
そもそも自分は許嫁と関係が拗れているわけでもないし、御所園家と折り合いが悪いわけでもない。両親もきょうだいも優しく、平菱家とはケースが違いすぎる。
再び少女らの唇を貪り、蜜を求める。脳が擦り切れるような絶頂を迎えるまで、幾度となく少女らの艶やかな声が響いたが、広い御所園家で他の部屋にいる者に聞こえることはなかった。
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